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透析液組成のまとめ《Na・K・Ca・Mg・Cl・重炭酸・酢酸・Glu》

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水処理装置・透析液
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はじめに

透析液にはA剤とB剤があります。

A剤には「Na」「K」「Ca」「Mg」「Cl」「酢酸(クエン酸)」「Glu」が入っています。

一方B剤は「重炭酸」です。

これらの組成はどういった目的と役割があり、濃度はいくつなのか説明していきます。

  • 「透析液の組成まとめ」を透析学習塾で動画で学習することができますよ
透析液の組成一覧をpdfに保存できる

透析液組成一覧

透析液組成一覧

この表は持ってるとすごく便利ですよ。

コチラでpdfダウンロードできますよ。「透析液組成一覧のスライド」のリンクをタップしてください。

透析液の組成は以下のような構成になっています。

  • A剤
    • Na
    • K
    • Ca
    • Mg
    • Cl
    • 酢酸(カーボスターはクエン酸)
    • Glu
  • B剤
    • HCO3-(重炭酸)

これらの組成はどういった目的と役割があり、濃度はいくつなのか説明していきます。

Na

  • 透析液のNa:140(mEq/L)
  • 透析患者のNa基準値:136~145(mEq/L)

Naは血漿浸透圧に影響するので、血液中とほぼ同じ濃度となっています。

Naは体内の体液量や循環動態を反映し、血圧の維持に関与します。

  • 透析液Na濃度が高いと → 体重増加・高血圧・浮腫
  • 透析液Na濃度が低いと → 低血圧・頭痛

透析液Na濃度が高いと(血中Na濃度が高くなる)、血漿浸透圧が維持されプラズマリフィリングを促進します。

これにより、透析中の血圧低下を起きにくくするといった利点があります。

しかし、透析後の血中Na濃度も高くなります。

その結果、透析後の喉の渇きがあらわれ、飲水量増加につながるといった欠点もあります。

これによって、体重増加や高血圧、浮腫があらわれます。

昔(最近まで?)は血圧維持のために高Na透析(濃度150くらい)はありました。

しかし先述したように口渇感 → 飲水量増加 → 体重増加となるので、もうされなくなりました。

40年くらい前はNa135くらいの低い濃度だったみたいですね。

また濃度が低すぎると、血漿浸透圧が下がるので、透析中の血圧低下が起きやすくなります。

それによって細胞内液に水分がかえってしまうので不均衡症候群にもなりやすくなります。

【透析中の血圧低下はコチラの記事を参考にしてください】

K

  • 透析液のK:2.0、2.3(mEq/L)
  • 透析患者のK基準値:3.5~5.5(mEq/L)

透析患者さんはKが尿中に排泄されないので、血中に溜まってしまいます。

なので透析液濃度は2.0にして、血中K濃度基準値よりも低めに設定します。

そうすることで血中Kを除去します。

血中K値は高くても低くても、不整脈を起こしやすくなるので注意です。

血清カリウム値4.0~5.4(mEq/L)で総死亡とCVD発症リスクが低下する

という論文もあります。

慢性腎臓病の栄養管理日大医誌 78 (4): 237–241 (2019)

ちなみに、2020年に販売しているキンダリー5号はKが2.3です。

なので今販売されているKは2.0と2.3の2つです。

Ca

  • 透析液のCa:2.5~3.0(mEq/L)
  • 透析患者のCa基準値:8.4~10.0(mg/dl)=2.1~2.5(mEq/L)

透析患者さんでは活性型ビタミンDが作られなかったり、Pの上昇によって血中Caは低くなる低Ca血症の状態にあります。

透析患者さんは基本Ca値が低いです。

なので透析液のCa濃度は血液中よりも高くして、血液中に補充されます。

  • 透析液Ca濃度が高いと → 異所性石灰化
  • 透析液Ca濃度が低いと → 二次性副甲状腺機能亢進症・下肢つり

Ca濃度が高いものを使用すると、高Ca血症になり、異所性石灰化を助長します。

異所性石灰化とはCaとPがくっついて石灰化し、それが血管や関節に沈着する病気のことです。


この異所性石灰化は手術でも除去するのが困難で生命予後を悪化させます。

一方で、Ca濃度の低いものを使用すると低Ca血症になり、二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)を助長させます。

SHPTになると、骨がスカスカになり骨粗鬆症がどんどん進んでいきます。

そのためすぐ骨折しやすくなり、ADLが急激に落ちて認知症のリスクも上がってしまいます。

またカルシウムが低いと透析中の下肢つりも起こしやすくなります。

【下肢つりとCaの関係性はコチラの記事参考にしてください】

本来はCa濃度は患者によって個々によって調節するのがベストです。

最近CKD-MBDの観点からCaは非常に注目されています。

しかし今の日本の現状では患者個々の調節は難しいです。

なぜかというと、ほとんどの施設がセントラル方式を採用しているので、同じ組成の透析液しかコンソールに流れません。

個人機での透析であれば患者個々によっての調節が可能です。

【Caと骨代謝はコチラを参考にしてください】

Ca濃度の調節

Ca濃度の調節には(透析剤のCa値の選定)、その施設の患者の特徴によって変わってきます。

例を以下に示します。

  • ビタミンD製剤を積極的に使用している施設 → 透析液濃度の低い2.5(mEq/L)のものを使用
  • Ca受容体作動薬の影響で、Ca濃度が低い患者さんが多い場合 → 透析液濃度の高い3.0(mEq/L)のものを使用

※ Ca受容体作動薬:PTHを下げる薬(レグパラ、オルケディア、パーサビブ、ウパシタ)

これはあくまで例ですが…

このように、施設や患者の特徴によって透析剤を選定する必要があります。

また、昔と今では透析剤の選択や考え方も変わってきてる、ということを知っておかなければなりません。

  • 昔:血液中にCaを補うために、透析液のCa濃度は高めに設定
  • 今:透析患者のCa濃度によって調節する

なぜこういうように変わってきたかというと、

昔は(活性型ビタミンDが販売される前)活性型ビタミンDがまだ普及していませんでした。

なので、患者のCa値は低かったんです。

つまり、血液中にCaを補うために透析液のCa濃度は高めのものを使用していました(キンダリー1号とかCa3.5だもんね….)

そこから、Ca活性型ビタミンD製剤の使用で血液中のCa濃度が正常~高値になってきました。

ということは、患者さんのCa値が薬剤でコントロールできるようになったので、高いCaの透析剤は必要なくなりました。

そして今ではCa受容体作動薬の出現もあり(Ca受容体作動薬はPTHを下げる薬剤ですが、Caも同時に下げる)、透析患者のCa濃度によって調節するということになりました。

なので現在販売されている(2023/2月時点)透析剤のCa濃度は「2.5」「2.6」「2.75」「3.0」の4パターンです。

透析剤ではこのCa値の選定が非常に重要となってきます。

なので、自施設の透析剤のCa濃度がいくらかは知っておいた方が良いですね。

Mg

  • 透析液のMg:1.0~1.25(mEq/L)
  • 透析患者のMg基準値:1.8~2.4(mg/dl)=1.5~2.0(mEq/L)

Mgは血液中に溜まってしまうので、透析液のMg濃度は血中よりも低くして血中から排除するようになります。

昔は1.5(mEq/L)の透析液を使用していましたが、高Mg血症になるという観点から1.0が主流になりました。

現在は「1.0」「1.2」「1.25」の3つで、1.0がほとんどを占めています。

最近ではCKD-MBDの分野にMgも関わってきています

低Mg血症では二次性副甲状腺機能亢進症(石灰化進行)を悪化させることが明らかになっています(1年くらい前?の透析医学会雑誌にも掲載されていました)

またそれ以外にも神経系や、心機能に悪影響が出ます。

これは豆知識みたいな感じにはなるのですが、リン吸着剤の中にもMgが含まれています。

Mg含有量は、カルタン>リオナ、ピートル>ホスレノール の順みたいです

Cl

  • 透析液のCl:110(mEq/L)
  • 透析患者のCl基準値:98~108(mEq/L)

透析液の方が若干血中よりも濃度が高くなっています。

ClはNaと同じ血中の浸透圧物質としてかかわっています。

透析患者では水分増加でClが若干低めになりますので、透析液濃度は若干高めで設定されています。

HCO3-(重炭酸)

  • 透析液のHCO3-:25~35(mEq/L)
  • 透析患者のHCO3-基準値:20~25(mEq/L)

透析患者さんは体液が酸性(代謝性アシドーシス)に傾いているので、pHを上げるために重炭酸が含まれています。

血中の重炭酸は低いので、透析液濃度を高くして血中に補充する形となります。

透析患者さんは腎機能不全から代謝性アシドーシスの状態で、これは体液が酸性に傾いています。

人間の通常の弱アルカリ性に戻すためにアルカリ化剤(重炭酸のこと)が含まれています。

アシドーシスが続いた場合は以下のようなことが起こります。

  • 骨代謝異常:骨のミネラルを溶出させて酸を中和しようとする(骨軟化症)
  • Kの上昇:水素イオンが細胞内に入ることで、Kが細胞外へ排出され、体内のK濃度が高くなる
  • タンパク異化の亢進:タンパク質の分解を促進、アルブミン合成が低下

酢酸

透析液の酢酸:8~10程度(mEq/L)

酢酸はpHを調整するためにわずかに含まれています。

カーボスターでは酢酸が含まれていない無酢酸透析(アセテートフリーバイオフィルトレーション)が可能になります。

カーボスターには酢酸の代わりにクエン酸が含まれています。

酢酸濃度が高い → 末梢血管拡張による血圧低下、酢酸不耐症

昔は酢酸濃度が高かったので酢酸不耐症の患者が結構いたと聞きます。

また酢酸濃度が高すぎて透析室も酢酸臭かったと、患者さんから聞きました 笑(透析歴40年の患者さん)

【酢酸不耐症の記事はコチラ】

Glu(ブドウ糖濃度)

  • 透析液のブドウ糖:100~150(mg/dL)
  • 透析患者の血糖基準値:180~200(mg/dL)(血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012より)

透析剤には低血糖にならないようにブドウ糖が含有されています。

透析液にブドウ糖が入っていないと、1回の透析で約30gの糖が失われると言われています。

透析患者のブドウ糖に関しては調節が難しいのが現状です。

透析前が高血糖や低血糖によって透析中や透析後は数値が激しく変動します。

またインスリンや経口血糖降下薬を使用しているか、などによっても変わってきます。

なので血糖は場合によって透析前後の測定が推奨されていたり、透析後のみの測定が推奨されていたりと、患者さんによって違います。

現在はこの値で特に問題視はされていないので、いいんだと思います。

【血糖に関する記事はコチラ】

P

Pは透析液に含まれていません。

Pは血管内外の移動(プラズマリフィリングレート)が非常に緩やかなので、透析液に添加すると除去が甘くなってしまいます。

透析剤の種類

透析剤の種類

現在販売されている(2023/2月時点)透析剤は以下の種類になります。

  1. キンダリー(扶桑薬品)
  2. キドライム(扶桑薬品)
  3. Dドライ(日機装)
  4. リンパック(ニプロ)
  5. AK-ソリタ(陽進堂)
  6. カーボスター(陽進堂

【透析液関連の記事はコチラ】

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