毎週月曜更新!次回のブログ更新は9/16(月)内容:なぜ透析中に低血圧が起こる?

自己血管内シャント(AVF)を解説《吻合方法3つ・作成部位・タバチエールシャント・シャント手術など》

スポンサーリンク
バスキュラーアクセス
この記事は約5分で読めます。
スポンサーリンク

はじめに

【この記事でわかること】
・ 基礎知識が身につく
・ シャント作成部位がわかる
・ 吻合方法がわかる
・ タバチエールシャントってなに?

などなど、基礎知識は身につきますよ。

透析治療を行う上でVAの種類は様々ありますが、一番使用されているのが、自己血管内シャント(AVF)です。

VAの中で90%の患者さんがAVFです。

  • 「AVF」を透析学習塾で動画で学習することができますよ
7分の動画で解説

自己血管内シャント(AVF)ってなに?

AVFは、自己の血管の動脈と静脈を直接吻合(くっつけて)させて、シャント血管を作成します。

VAを作成する中で、第一選択されます。

通常は、聞き手と逆の手に作成するのが一般的です。

↓AVFが第一選択される理由

  • 開存成績が良好(つぶれる心配が少ないということ)
  • 人工物を使用しないので感染のリスクが少ない
  • 血管が発達するので穿刺が容易(まれに穿刺困難な例もあります)

AVFの5年開存率は60~75%程度ともいわれています。

開存率とは、シャントが使用できている期間のことを表す

グラフトの5年開存率は30~45%とも言われているので、AVFの方がシャントを長持ちさせることができます。

ちなみにこの数字は文献によって変わってくると思います。

AVFが選択されない場合もあります

↓AVFが選択されない時はどんな時?

  • 心機能が低下している場合 → 著名な溢水が無いにもかかわらず、左室駆出率(EF)30~40%未満
  • 穿刺可能な自己血管がない場合
  • 血管が深く穿刺が困難と想定される場合

シャントを作成しているということは、血流量が早くなるので、心臓に返る血流量も速くなります。

つまり、心負荷がかかるということです。

なので、心機能が低下(目安はEF30~40%以下)している場合に、シャントを作成すると、心不全をきたす場合があるので、作成を考慮します。

シャント作成部位

通常はきき手と逆の手の、前腕手首付近に作成します。

【血管作成部位】

  • 橈骨動脈 × 橈側皮静脈(一番多い)
  • 上腕動脈 × 肘正中皮皮静脈

などなどありますが、血管の状態を見て最初から肘の中枢や、上腕に作成したりもします。

※術前に血管の太さ、狭窄や石灰化の有無など総合的に判断し、シャントを作成します。

最初に手首(末梢)付近に作成する理由は…

  • 穿刺する箇所が限られてくる(最初から肘の辺で作成してしまうと)
  • シャントが閉塞(つぶれてもう使えない状態)してしまった場合、再びシャントを作成するのが困難になってしまう
  • 過剰血流やスチール症候群を避ける

などの理由があって、中枢付近の作成では血流量が速くなり、過剰血流やスチール症候群になる可能性が高くなります。

なので、最初に手首付近で作成し、閉塞するたびに中枢へと作成し直します。

先に中枢で作成し、閉塞したので、末梢に作成というのはしません。

AVFはシャントを作成し、5年後も50%以上の患者さんが使い続けていますし、1度の手術で20年もっている人もいます。

タバチエールシャントってなに?

昔はタバチエールが第一選択とされていました。

タバチエールシャントとは、親指の付け根で吻合を作成する方法です。

この部位に作成したシャントをタバチエールシャントといいます。

このタバチエールの部位は「嗅ぎたばこ入れ」とも言われ、たばこの粉末を吸うのにこの部位を使用していてそこから由来するものです。

フランス語です。

透析歴に古い患者さんだと、この部位に手術痕(吻合部)があるので見てみてください。

今選択されないのは、二次開存率が劣るからです。

二次開存率とは、VAIVT(PTA)などの救済処置を含めて開存しているもの

最近は(私も20代ですが…)新人さんや実習生などタバチエールを知らない方が結構いる印象だなぁ
教科書にまだ書いてるんかな?

とか思ったりなんかしちゃったりしてます。

吻合の方法(3種類)

シャントを作成するには、動脈と静脈を吻合(くっつける)する手術をします。

吻合方法は3種類あります(上図)

  1. 側端吻合:動脈の側面と静脈の端っこを吻合するので「側端」
  2. 側々吻合:動脈と静脈の側面を吻合するので「側々」
  3. 端々吻合:動脈と静脈の端っこを吻合するので「端々」

この中で最も多く使用されるのは側端吻合です。

ちなみに手術の容易差の順で並べると、側々・側端・端々です。

①側端吻合(第一選択)

  • 吻合の容易さ
  • 初期不成功率の低さ
  • 合併症の少なさ

これらの条件から第一選択とされます。

②側々吻合

  • 過剰血流になる傾向
  • 中枢の閉塞で静脈高血圧症や、ソアサム症候群になる可能性がある

③端々吻合

  • 末梢静脈を結紮けっさつ(結ぶ)するのであまり用いられない
  • 十分な血流量を得るのが難しい(動脈径が小さいので、吻合部径が規定される)

他の吻合系は4~6mmに対し、端々吻合では2.5mm程度となります。

ちなみに、一番最初(1970年くらい)は側々吻合でした。

シャント手術

【麻酔】
✔ 通常は局所麻酔
手術後痛いときは鎮痛剤を飲んだりして対処します。

【手術時間】
✔ 1時間~1時間半
抜糸まで2週間ほどかかります

【合併症】
手術後の合併症で一番避けたいのは「シャント狭窄」です。この場合は再手術になります。

シャント肢の腫脹もありますが、次第になくなっていきます。

それ以外には、局所麻酔薬のアレルギー反応や術後の出血、感染も気を付けなければいけません。

【手術後の穿刺】
手術から穿刺までの期間は、2週間以降が良いとされています。(個々により、施設により異なりますが)


参考文献:「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」

【関連記事】

コメント

タイトルとURLをコピーしました