はじめに
シャント合併症の一つとして静脈高血圧症があります。
シャント静脈に狭窄や閉塞が起こると、起きやすくなります。
静脈高血圧症とはなにか?詳しく解説していきます。
静脈高血圧症ってなに?

静脈高血圧症とは、シャント静脈より中枢側に狭窄・閉塞が起きると、末梢側の血液が滞り、腫脹を生じる状態のこと
基本的には狭窄・閉塞部位よりも末梢に腫脹が生じます。
腫脹が生じはめた部位に狭窄があると予想しながら、検査を進めることが大事です。
代表的なものでいえば下図のような鎖骨下静脈の狭窄です。

鎖骨下静脈の閉塞によって上腕全体の腫脹が見られます。
上図のように、末梢の血液が行き止まり状態になります。
種類

シャント肢の静脈高血圧症は以下の3種類に分かれます。
- 上腕型
- 前腕型
- 手指型(ソアサム症候群)
①上腕型➡主に鎖骨下静脈の閉塞により上腕全体に腫脹を生じます
②前腕型➡肘部の血管の閉塞により、肘から下に主張を生じます。
③手指型(ソアサム症候群)➡吻合部よりすぐ中枢の血管の閉塞により、手首から下に主張を生じます。
これを「ソアサム症候群」といいいます。
ソアサム症候群は側々吻合で発生しやすい
5つの確認ポイント
シャント肢腫脹は、以下のような5つの確認ポイントがあります。
① シャント血流がうっ滞や逆流するような病態が存在するのか:エコーによる検査や、シャント診察で見つける
② 過剰血流があるか:過剰血流がある場合は軽度の狭窄でもうっ滞や逆流が起きる場合がある。エコーでの上腕動脈測定が有用
③ 体液量が適切か:体液過剰が原因のある場合は下肢浮腫を伴っていることが多い
④ リンパ浮腫を起こすようなきっかけがあるか:リンパ節切除や放射線治療などに伴って生じることが多い
⑤ 蜂窩織炎などの感染をおこしているか:蜂窩織炎は浮腫に加えて発赤や疼痛を伴う。採血や培養の結果や抗菌薬の反応も見る。
静脈高血圧症になるとどうなる?
静脈高血圧症になると以下のような症状が現れます。
- 手背や腕の浮腫、痛み
- 静脈拡張
- うっ血
- 再循環による透析効率の低下
これらが重症化すると、手指の壊死や難治性潰瘍になってしまいます。
また、側副血行路の発達が不良な場合やシャント血流量が多い場合は、軽度狭窄でも静脈高血圧症をきたす場合があるので注意です。
診断・評価
静脈高血圧症の診断・評価には血管造影が望ましいです。
閉塞部位を血管造影し、治療を行います。
また、静脈が周囲の組織により圧迫されて閉塞しているパターンがあります。
その場合ではCT検査が有効です。
圧迫の原因となる周囲組織の根本治療が必要となります。
治療
治療は以下のような3つがあります。
- 中心静脈病変に対するPTA(1番多い)
- シャントを閉鎖し、反対側にシャントを再建する
- 外科的シャント血管修復
過剰血流による静脈高血圧症は、過剰血流制御術(バンディング)で腫脹が改善することがあります。
参考:バスキュラーアクセスのトラブルシューティング
ソアサム症候群
ソアサム症候群とは、吻合部付近のシャント静脈の閉塞により手指が腫脹することです。
- ソア(sore):痛い
- サム(thumb):親指
こういった意味のように、親指が痛むのがソアサム症候群です。
しかし現在は、側端吻合が多く用いられているので親指が痛くなることはありません。
現在多く見られるのは、背側枝中枢の高度狭窄や閉塞によって、手背から合流する静脈(背側枝)にシャント血流が逆流する現象です。
なので、第2指~第4指の腫脹や発赤、痛みを伴います。
- 昔:親指の腫脹や発赤、痛み
- 現在:第2指~第4指の腫脹や発赤、痛み
という感じです。
もっと詳しくはコチラで解説しています
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