はじめに
シャント診察は以下の3種類あります
- 視診(視て):視て異常がないか確認。狭窄部はないか、異常がないかなど
- 聴診(聴いて):聴診器でシャント音を聴く。正常音、狭窄音、拍動音の区別をする
- 触診(触って):シャントを触ってスリルはあるか。拍動になっていないか、狭窄していないか
シャント診察ではこの3種類を実施することが大事です。
今回は聴診について解説していきます。
聴診で何が分かる?
シャント音を聴いて、シャントが今どんな状態かを聴き分ける
シャント音は以下の3つに分けられます。
- 正常音
- 狭窄音
- 拍動音
に分けられ、このうち狭窄音と拍動音は異常音として分類されます。
この異常音の聴き分けが大事となってきます。
シャント音ってなに?
血管壁が振動することによって生じる振動音のこと
動脈(高い圧)から静脈(ほぼ0に近い圧)へと、血液が流れ込む際に生じる雑音のことをシャント音と言います。
吻合部で必ずシャント音が聴取できるのは、吻合部で発生した乱流による圧力変動が静脈壁を直接振動させ、可聴周波数(聞き取れる周波数)を発生させるからです。
吻合部は静脈壁が柔らかいので、流体の圧力変動が大きく乱流になります。
中枢に行くにつれて圧力変動は静脈壁に吸収され、流体は層流になり音として聴取しずらくなります。
シャント音を川で例えると
川は通常は音はしなません。しかし、
- 川幅が変わったり
- 流れが速くなったり
- 落差が生じたり
- 途中石があったり
これらがあると音が生じます。
シャント音も同じで…
- 流速が変わったり
- 血管が細くなったり
- 圧較差が生じたり
これらがあると、シャント音として音が生じます。
正常音
ザーザーやゴーゴーといった連続した低い音が聴こえます
通常では流れの速い吻合部で一番音が大きく、中枢に行くにしたがって、音が小さくなります。
異常音
異常音は以下のように分類されます。
- 狭窄音:ピーピー、キューキュー、ピューピュー、シュンシュン(高音)
- 無理やり通過する音:シャーシャー
- 拍動音(閉塞寸前の音):ザッザッ(音が途切れていてかなり狭くなっている)
狭窄があると上図のように乱流が発生し、圧較差ができて高音になります。
周波数帯域の高い音は高音になります。
例えば上図のように、窓に例えると…
窓全開では風の音はあまりしませんよね。
シャント音に例えると、層流で低い音です。
つまりシャント音は良好ということです。
しかし、すきま風ではヒューヒューといった風の音がしますよね。
これを血管に例えると、狭窄が起きている状態で、高い音が出ます。
狭窄音=狭窄?
狭窄音がしたから狭窄!ではありません。
以下のように、血管が正常(狭窄がない)でも狭窄音が聴こえることがあります。
- シャント血流が速すぎて乱流が起こっている
- 相対的狭窄(前後の血管径が太すぎて狭窄部位が狭窄しているように見える)
- 穿刺部がガタガタになっていて狭窄音として聞こえる(特殊例)
狭窄音がしたら透析中に異常がないかどうかも見てみましょう。
脱血不良や静脈圧の上昇が発生していないかを精査します。
乱流のイメージ
乱流は狭窄部を通過するときに発生します。
乱流は高音で、狭窄部を通過するときに一気に通過します。
この時に流速も速くなります。
拍動音
高度狭窄があると、吻合部から狭窄部まで静脈は伸展され、静脈壁の振動が消失(シャント音とスリルが無くなる)します。
この時に、心拍とともに聞こえる拍動音が聴取されます。
狭窄が起きている末梢側は血液の渋滞が起きていることになります。
聴き方のポイント
AVFは以下のように聴診します。
- ① → ②の順に聴く(吻合部から中枢に向かって聴く)
- 音が聞こえなくなるまで聴く
グラフトは以下のように聴診します。
- ① → ② → ③の順に聴く(A吻合部 → グラフト → V吻合部の順で聴く)
- 音が聞こえなくなるまで聴く
AVFもグラフトも聴こえなくなるまで聴きましょう。
またグラフトは以下のような2つの注意点もあるので実施していきましょう!
- V吻合部が一番狭窄しやすい
- V吻合部を超えて鎖骨下のあたりまで聴く
【1. V吻合部が一番狭窄しやすい】
V吻合部は静脈とグラフトを吻合しています。
静脈は血管径が小さいので、吻合部径も小さくなり、狭窄しやすいくなります。
なので注意して聞いてみましょう。
グラフトの狭窄部位のほとんどがV吻合部です。
【2. V吻合部を超えて鎖骨下のあたりまで聴く】
上図のように鎖骨下や腋下のあたりまで聴きましょう。
腋下付近での狭窄もありますが、見落とされてしまいがちです。
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