はじめに
VAは「AVF」「AVG」「動脈表在化」「カテ」の4種類あります。
動脈表在化は、非シャントで血管の吻合をしていないVAです。
今回は動脈表在化ってなにかを解説します。
【この記事でわかること】
- 動脈表在化ってなに?
- 適応
- 作成部位
- 注意点
動脈表在化ってなに?
動脈表在化とは、筋肉の間の深いところにある動脈を、皮下の浅いところ(皮膚のすぐ下)まで移動させ、直接穿刺しやすくする方法です。
シャント血管では静脈に穿刺していますが、動脈表在化は名前の通り、動脈に穿刺をします
現在日本では約2%が動脈表在を使用しての透析を行っています。
- 脱血:表在化動脈
- 返血:一般静脈(カテの時もある)
適応
動脈表在化は通常の内シャントが何らかの理由で作成できないときに、利用されるVAです。
動脈表在化はどういったときに作成するのか?
以下に動脈表在化の適応を適応を大きく4つにまとめました。
- 内シャントによる心負荷に耐えられないと予想される症例
- 表在静脈が荒廃し、AVF(AVG)の作成が困難な症例
- AVF(AVG)によりスチール症候群を呈している症例
- 頻回にアクセストラブルを起こす患者のバックアップ
まず①では、心機能が低下しておりシャント血管を作成すると、心不全をきたす恐れがある場合のことです。
ここでの心機能の低下というのは、左室駆出率(EF)が30~40%以下を指します。
②AVF・AVGの作成が困難であれば、必然的に動脈表在化か、カテーテルになります。
③では、すでにスチール症候群を呈している場合もしくは、シャントを作成することでスチール症候群を呈すと予想される場合もです
静脈高血圧症を呈している場合、またはシャントを作成することで、静脈高血圧症を呈すと予想される場合もです。
④ではシャントトラブルを頻回に起こす患者さんは、バックアップ(保険的な意味)として作成することもあります。
VAIVT(PTA)は閉塞する度にできるわけではなく、原則3ヵ月空けないと保険適応になりません。(一部例外あり)
そのための、保険的な意味で作成することもあります。
除水が十分されている状態で、EFが30~40%だったら、動脈表在化を作成すべきかもしれないですね。
血管の状態にもよりますが…。
シャント血管が作成できない(使えなくなった)となった場合は、動脈表在化かカテーテルのどっちかになります。
動脈表在化かカテーテルどっちを選択するのか、以下の点を精査して、判断します。
- 患者の希望とQOL➡カテーテルは入院となる場合が多い→通院可能なら表在化か
- 返血できる静脈の有無➡動脈表在化つくったものの返血静脈がなかったら意味がない→カテーテルに
- 上腕動脈の太さと石灰化の有無→穿刺困難になるかリスクを考える
作成部位
- 第一選択:上腕動脈(90%以上)
- 第二選択:大腿動脈
【上腕動脈の利点】
- 手術が容易
- 合併症が少ない
- 局所麻酔で施行可能
大腿動脈では、感染を起こしやすかったり、術後早期にリンパ瘻を起こすことが多いです。
しかし、大腿動脈は表在化する範囲が広いといった利点もあります。
大腿動脈の表在化は私は見たことないな…。
見たことある人いたら教えて!
注意点(合併症)
表在化動脈の使用は、最低でも2~3週間以上空けた方が良いです。
長い時では何か月も空けますよ。
表在化した直後は血管と皮下組織(皮下組織の部位は最初の図で確認して!)の癒着が軽度なので、抜針後(止血時)に血腫ができることが多いです。
なので、創部が完全に治癒してから穿刺するのが望ましいですね。
また、表在化は動脈瘤や狭窄を形成しやすいです(穿刺部の範囲が狭いため)
上腕動脈の表在化は持ち上げて10cm程度。
穿刺範囲はもっと狭くなる。
なので、前回の針孔から穿刺するのはNGです。
表在化動脈を使用できなくなる理由として「瘤」「狭窄」「穿刺困難」「血種」などがあります。
こういった合併症を起こさないためにも、広範囲な穿刺が求められます。
(実際穿刺範囲が限られているので、針孔は避けれるが、広範囲な穿刺は難しい)
表在化動脈に問題がなくても、静脈(返血側)の穿刺部が無くなるパターンもあるので、返血静脈も非常に大事です。
動脈表在化の合併症は「感染」「動脈瘤」「狭窄・閉塞」などです。
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