はじめに
ダイアライザは合成高分子膜とセルロース系膜に分かれます。
そしてセルロース系膜は3種類に分かれます。
本記事はセルロース系膜の特徴を紹介します(^^)
そして題名にもある通り2014年にニプロから販売されたATA膜についても解説します。
【合成高分子膜の記事はコチラ】
セルロースの素材を知っておこう(とばしてもOK)
そもそもセルロースってなに?
セルロースは植物成分ってだけ知っておけばOK!
セルロースとは、地球上でも最も多く存在する炭水化物(多糖類)です。
植物細胞の細胞壁および植物繊維の主成分で、天然の植物質の3分の1を占めています。
繊維素とも呼ばれ、面はそのほとんどがセルロースです。
セルロース系膜の特徴は以下の通りです。
- 機械的強度が強い
- 適度な透水性を維持
- 低分子量物質の除去性能に優れる
↑ダイアライザの種類によっても変わってくるので参考程度に
セルロース系膜3種類
- 再生セルロース(RC)
- セルローストリアセテート(CTA)
- ATA
①再生セルロース(RC)
再生セルロースは、昔使用されていましたが、生体適合性や、物質除去が劣るため、現在製造・使用されていません。
特徴は以下の通りです。
- 小分子物質の除去能に優れるが、低分子タンパクの除去能に劣る
- 生体適合性 → 補体活性作用が強く、白血球減少もある
昔は旭化成とメンブラーナという会社が販売していました。
②セルローストリアセテート(CTA)
CTAは再生セルロースの生体適合性を改善して作られたものです。
特徴は以下の通りです。
- 抗血栓性に優れるが、低分子タンパクの除去に劣る
- 医療現場ではトリアセって呼んでいます。
- ニプロのFBシリーズで販売
FBシリーズは現在(2022年6月)6種類のダイアライザが出ています。
緩徐な透析に向いていて、非常に使用しやすい膜です。
【ニプロFBシリーズの性能表はコチラ】
③ATA膜
2014年にニプロから販売されたFIX(ファインフラックス)シリーズはATA膜でできています。
新たな紡糸技術によって、従来のCTA膜よりも膜表面の凹凸がなくなりました。
要は膜の表面がツルッツルになったわけですね!
CTA膜は均質構造に対してATA膜は非対象構造です。
非対称構造(アシンメトリー)なので、ATA膜はアシンメトリックトリアセテートとも言います。
これまでヘモダイアフィルターは合成高分子膜だけでしたが、唯一セルロース系でできたヘモダイアフィルタです。
そしてヘモダイアフィルタ唯一のPVP・BPAフリーです。
膜の平滑化により、従来のヘモダイアフィルターよりも抗血栓性に優れていて、膜へのタンパクの吸着(ファウリング)が抑制されます。
補液量を上げ、TMPが上昇してもAlb漏出量は増加ずらいと言われています。
UFRが高いので、後希釈でも使用しやすいです。
現在(2021.5.24)、ATA膜で販売されているのは、上記で紹介したニプロの「FIXシリーズ」と、同じニプロの「ファインネフロン FA-F eco」です。
「ファインネフロン FA-F eco」は、唯一ダイアライザ(ヘモダイアフィルターではなく)で、ATA膜を使用しています。
2018年に発売されました。(下図)
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コメント
新人MEです。FIXでUFRが高いから後希釈やりやすい、のくだりがありますが、UFR って差圧当たりの除水可能量だから後希釈は前希釈に比べて濾過量低いわけで、そんなにUFRの高い膜は必要ないように感じられるんですが。(血流と濾過量のバランスが適正ならば)
これはどう考えられますか?
お疲れ様です。ブログをご覧いただいてありがとうございます!
後希釈はダイアライザーの後で希釈をするので、前希釈よりもダイアライザー内の血液濃縮やタンパク吸着が起きます。
前希釈は、補液して薄まった血液がダイアライザー内を通過するのに対し、後希釈は補液をする前にダイアライザー内で血液が濾過されるからです。
なので、UFRの高い膜(水の透過性の良い膜)が必要になります。
前希釈よりも後希釈の方が濾過量は少ないですが、後希釈の方が膜に負荷がかかります。
よかったら、on-lineHDFの記事をご覧ください。
【透析記事】on-lineHDFってなに? ~前希釈と後希釈~ めちゃめちゃわかりやすく説明します