はじめに
透析治療は透析膜や血液回路などの合成材料に血液を接触させることによって、老廃物を除去しています。
異物への接触は避けることができず、必然的に血液反応が惹起されています。
つまり、常に生体非適合性な状態にあるといえます。
今回は「透析膜と生体適合性」の関係性を学習していきましょう。
生体適合性ってなに?
生体適合性とは、生体が人工材料と接触した時に、生体反応を惹起させにくい性質のこと
透析において血液が触れるのは以下の箇所です。
- 透析膜
- 回路
- 針
このなかで最も血液と接触する面積大きいのは透析膜です。
ダイアライザは生体適合性を決定する重要な因子になります。
生体適合性が悪いってどういうこと?
以下のようなことが起こると(反応が出てしまうと)、生体適合性が悪いといえます。
- 治療中にショックを誘発する
- 残血がある
- 白血球や血小板の減少が顕著にみられる
- 発熱
- 血圧低下
- 頭痛、気分不快
これらが起こらないことが「生体適合性が良い」とされます。
生体適合性の良い膜とは?
結論、生体適合性の良い膜は患者によって違います
「PES膜」と「PMMA膜」この2つが基本的に生体適合性が良いとされます。
しかし、(例えば)PMMA膜はUFRが低いので、濃縮が強くなると残血が生じてくる場合も多いです。
なので、生体適合性は治療条件によっても悪化します。
生体適合性は患者によって異なるといえます。
生体適合性の2つの概念
膜の生体適合性は治療条件によって悪化します
せっかくの膜材質を下げないためにも、適した治療条件を設定する必要があります。
ではここで生体適合性の2つの概念を見てみましょう。
- 膜材質本来の生体適合性
- 治療条件で変化する生体適合性
この2つの概念があります。
1の「膜材質本来の生体適合性」に関しては不変です。
私たちではどうすることもできません。
しかし2の「治療条件で変化する生体適合性」に関しては、不適切な治療条件によって生体適合性が変化します。
つまり2に関しては私たちの手で生体適合性を良くすることができるということです。
逆を言えば、私たちが生体適合性を悪くしてしまう可能性もあります。
2のような設定間違いなどは人為的なもので防ぐことができます。
では不適切な治療条件とは、どういった条件かを説明していきます。
例えば、以下のような条件で透析を施行しているとします
- pre-OHDF
- QB:300mL/min
- QS:300mL/min(=18L/h)
このように過度な濾過圧や高流量では、α1-MGは下がるが、血小板表面の※CD62Pの発現量が増えてしまい、生体適合性が悪くなる場合もあります。
※ CD62P(Pセレクチン):血小板が活性型に移行していることを示す血小板活性化マーカー
このような治療条件や、あとは、小さい膜に過度な除水(補液)をかけてしまうと残血につながり、生体適合性が悪くなってしまいます。
膜材質を生かすためにも治療条件は大切です。
透析膜と血液接触による相互作用
生体適合性に影響する因子を以下に挙げます。
1. 透析膜との接触
- 補体系反応:アナフィラトキシン(C3aとC5a)産生
滑筋収縮、血管透過性亢進、肥満細胞よりのヒスタミ ン遊離、
活性酸素産生、アラキドン酸代謝促進、単核球刺激によるサイトカイン産生 - 血小板凝集
- 顆粒球活性化
- 単核球反応
サイトカインの過剰産生
2. 透析液・汚染の影響
- 酢酸
- 汚染物質(エンドトキシン,DNA fragments)
- 透析配管系細菌汚染
3. 内圧、流速による反応
生体適合性に影響する因子はこんなにも多くあります(全部覚える必要はありません)
参考:透析会誌 50(6):363~399,2017 特別な機能をもつ血液透析器の特徴と評価法
生体適合性 3つの活性化
生体適合性に劣る透析膜を使用すると、以下の3つの活性化につながります。
- 補体系
- 凝固系
- 血球成分
透析膜の生体適合性は、死亡率及び入院率の上昇にも関与すると報告されています。
では「補体系」「凝固系」「血球成分」この3つを説明していきます。
まずは補体系からです。
補体系
生体適合性の代表的な反応が、一過性の白血球減少です。
それに影響を与えるのが補体の活性化
補体第二経路が活性化し、C3aが産生され、白血球の一過性減少が起こります。
透析では補体C3aはよく出てくるので覚えておきましょう。
このC3aは細胞遊走作用と言って、細胞を呼び寄せる作用があります。
つまり、肺胞内に白血球が呼び寄せられ、補足されます。
なので特に透析開始時は、血液中からは白血球が一過性に減少します。
このあとの「凝固系」「血球成分」に関してはコチラで詳しく解説しています。
【関連記事】
コメント