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「ビタミンE固定化膜」について解説《臨床効果・フリーラジカルなど》

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ダイアライザ
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はじめに

ダイアライザにはビタミンEが固定化されている、ビタミンE固定化膜があります。

  • なぜビタミンEを固定化するのか?
  • 固定化するとどうなるのか?
  • 臨床効果など

これらを解説していきます。

またビタミンE固定化膜を理解するには「活性酸素」「フリーラジカル」のこの2つの理解が非常に大事となってきます。

  • 「ビタミンE固定化膜」を透析学習塾で動画で学習することができますよ
8分の動画で解説

ビタミンE固定化膜開発の背景

最初に用語の解説をしておきます。

  • 抗酸化酵素:活性酸素とフリーラジカルを消去してくれる酵素のこと(良いヤツ)
  • 過酸化脂質:コレステロールや中性脂肪といった脂質が、活性酸素によって酸化されたもの(悪いヤツ)

活性酸素とフリーラジカルは後で説明をします。

「なぜビタミンEを固定化したのか?」

結論から言えば、活性酸素」「フリーラジカルの消去をするためです。
(活性酸素・フリーラジカルはのちに説明します)

生体内では恒常的に活性酸素・フリーラジカルが発生しています。

一方、生体の各組織には活性酸素・フリーラジカルを消去する酵素抗酸化酵素が存在します。

この抗酸化酵素が、活性酸素やフリーラジカルの発生を消去してくれています。

しかし、全ての活性酸素とフリーラジカルが、抗酸化酵素によって消去されるわけではありません。

一部の活性酸素とフリーラジカルは抗酸化酵素による消去から逃れて、次々と酸化反応を繰り返しています。

そして、過酸化脂質を生成し、細胞膜に障害を起こしています。

透析患者では、透析中に血液がダイアライザと接触することによっても、活性酸素・フリーラジカルが発生しています。

その結果、過酸化脂質の産生が増加し、細胞膜に障害を起こしています。

つまり、体内の酸化ストレス過剰に産生される状態です。

ビタミンE・ビタミンC・βカロチン・グルタチオンなどは、活性酸素・フリーラジカルを消去し、過酸化脂質の生成を抑制します。

透析患者で、活性酸素・フリーラジカルの消去を促進するために、PS膜にビタミンEを固定化した膜(VPS-HA・VPS-VA:旭化成)が開発されました。

活性酸素ってなに?

活性酸素とは他の物質を酸化させる力が非常に強い酸素のことです

私たちは呼吸によって酸素を取り入れていますが、そのうちの約2が活性酸素になります。

活性酸素は殺菌力が強いので、体内の細菌やウイルスを撃退してくれます。

しかし、活性酸素が増えすぎると、正常な細胞や遺伝子を攻撃(酸化)してしまいます。

フリーラジカルってなに?

フリーラジカルは、化学の授業を思い出してください。

フリーラジカルとは、不対電子をもつ原子や分子のこといいます。

どういうことかというと…

原子の中心には原子核があり、原子核の周囲には電子が2個ずつ、一定の軌道で収容されています(下図)

しかし、電子が奇数しかない場合、一番外側の軌道には1個の電子しか収容されません。(下図)

このような不対電子をもつ原子や分子をフリーラジカルといいます

フリーラジカルは電子を奪って安定化する

フリーラジカルの性質を以下に示します。

フリーラジカルは不安定な状態にあるので、他から電子を1個奪うか、あるいは電子を1個与えて、安定化しようとします。

フリーラジカルは非常に反応性が強く、細胞膜や組織を構成する脂質やタンパク質を攻撃するために、様々な病気や老化の原因となります。

この電子を他から奪うことを「酸化する」といいます

フリーラジカルによる細胞膜の障害

電子を奪われ、不対電子をもった物質は、フリーラジカルになります。

これが酸化反応の開始です。

そして、フリーラジカルによる細胞膜の破壊が始まります。

フリーラジカルによる細胞膜の破壊は以下のようになります。

  • 赤血球の膜破壊 → 貧血
  • 肝細胞破壊 → 肝障害
  • 胃粘膜破壊 → 胃潰瘍

ビタミンE固定化膜の効果

ビタミンE固定化膜がもたらす良い効果は次の通りです。

  • 貧血改善(一番有力)
  • 末梢循環改善
  • 抗酸化作用
  • 血圧安定化
  • 栄養状態の改善

これらが挙げられ、長期予後の改善につながると言われています。

しかし、まだ研究が少ない、データが少ないのか、確かな情報が得られていません( ゚Д゚)

この中で一番有力で、データが確かなものであった貧血改善だけ紹介します。

ビタミンE固定化膜と貧血

ビタミンEの貧血に対する効果は以下の通りに作用します。

  • 赤血球膜の安定化
  • 赤血球寿命の延長

これらが貧血の改善になります。


ビタミンE固定化膜の長期使用で、ESA投与量が減少した報告があります。

透析患者での酸化ストレスによる貧血に対して、ビタミンEはこれら一連の酸化連鎖反応を止めます。

これが、赤血球膜の安定化赤血球寿命を延長すると考えられます。

透析患者は赤血球寿命が短縮されます。

透析患者は酸化ストレスにより、赤血球膜の脂質過酸化が亢進する

赤血球膜が不安定になる(脆弱化ぜいじゃくか

赤血球の粘土や形態異常が生じる(溶血にもつながる)

赤血球寿命短縮

といった流れです。

さらに、ビタミンE固定化膜は赤血球寿命を延長してくれます。

ビタミンEは細胞膜脂質の酸化連鎖反応を止めることによって、赤血球膜が安定します。

これが、赤血球寿命の延長に繋がります。

ちょっと難しいですが、下記のような効果が生まれます。

  • 赤血球形態異常の改善による赤血球粒度分布幅の低下
  • 溶血の改善による間接ビリルビンの減少
  • 赤血球寿命の延長による赤血球内クレアチン濃度の低下

ビタミンE固定化膜の短期的な臨床効果

  1. 補体活性の抑制
  2. IL-1βの産生減少
  3. 白血球からの顆粒球エラスターゼの放出抑制
  4. 血液凝固となる原因の接触相の活性化抑制➡抗血栓性
  5. 活性酸素の産生減少
  6. 赤血球膜を構成する脂質の過酸化を抑制
  7. 酸化LDLの産生抑制

炎症の抑制がされているようですね。

VPSシリーズの紹介

ビタミンE固定化膜は、旭化成さんだけで膜は2つあります。

  • VPS-HA
  • VPS-VA
旭化成HPより画像引用

機能区分Ⅰa型の「VPS-HA」のみが販売されていたため、β2-MGを積極的に除去する治療を望む患者さんに対して、使用できませんでした。

更なる除去性能の向上のため「VPS-VA」機能区分Ⅱa型が開発

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