はじめに
透析ではしばしば、透析治療(主に除水)によって低血圧になります。
除水をDWまでしっかりするためには、低血圧治療薬(昇圧薬)を用いることがあります。
透析でよく使われるのが、エホチール・リズミック・ドプス・メトリジンのこの4つです。
今回はこの4つの特徴について解説していきます。
透析での昇圧薬
循環血漿量の減少が明らかではないにも関わらず、透析中に除水不可能な程の低血圧が生じる場合は、昇圧薬を用いる場合があります
特に糖尿病既往の方では、自律神経機能障害が原因として最も考えやすいです。
こういった症例では、ドプスやリズミックなどの経口昇圧薬の投与が発症予防に有効な場合があります。
一方で透析中の低血圧時には補液が有効な場合が多いですが、不十分な場合にはドーパミンやエホチールなどを投与します。
しかし、昇圧薬を使わずに透析中の低血圧を予防・対処するのが最も良い、ということは言うまでもありません
昇圧作用
昇圧には2つの作用があります。
- α1受容体刺激作用
- β1受容体刺激作用
α1受容体刺激作用は、血管系に作用します。
血管平滑筋に分布するα1受容体を刺激することで血管が収縮します。
末梢血管抵抗が上昇し、血圧が上昇します。
β1受容体刺激作用は、心臓系に作用します。
心筋に分布するβ1受容体を刺激することで、心機能が亢進します(心拍数増加、心収縮力増強)
エホチール
一般名:エチレフリン
エホチールはα1とβ1に作用します。
血管系(α1)と心臓系(β1)の両方に作用を示しますが、特に心臓への作用が強いです。
心筋収縮力を増加させて昇圧作用を示します。
他の特徴は以下の通りです。
- 2分程度で効果が出る(資料なし)
- 透析除去される可能性大(7割くらい?) → タンパク結合率28%(資料なし)
- 1~10mg/hrで投与
- 希釈して使用「エホ10mg(1cc)+生食9cc」か「エホ10mg(1cc)+生食19cc」
「透析性はある」と様々なブログには記載されていましたが「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」では、透析性(-)との記載があります。
リズミック
一般名:メチル硫酸アメジニウム
リズミックはα1とβ1に作用します。
交感神経末梢のノルアドレナリンの量を増加させることで、交感神経機能を亢進させます(ノルアドレナリンと競合して交感神経終末に取り込まれることで、ノルアドレナリンの神経終末への再取り込みを抑制する)。
他の特徴は以下の通りです。
- 2時間で血中濃度最高
- 透析性あり → 透析膜通過後2分の1に
- 透析中の血圧低下予防が目的
リズミックも「透析性はある」と様々なブログには記載されていましたが「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」では、透析性(-)との記載があります。
ドプス
一般名:ドロキシドパ
ドプスはα1とβ1に作用します。
体内の酵素(芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素)により、ノルアドレナリンに変換されます。
他の特徴は以下の通りです。
- 6時間で血中濃度最高
- 透析中~透析後の血圧低下予防が目的
- 効果は24時間前後続くため、非透析時にも低血圧の方に適する
メトリジン
一般名:ミドドリン
メトリジンはα1に作用し、選択的α1受容体刺激作用です。
他の特徴は以下の通りです。
- 1.5時間で血中濃度最高
- 透析中の血圧低下予防が目的
- 効果が緩やか
- 服用して効果が出るまで1~2週間かかることがある(効果が出ないからとすぐに止めない)
透析中の血圧低下予防は、本来なら透析前に飲む方が良いですが、習慣的に透析中に飲む施設が多いかな…といった印象です。
まとめ
薬剤名 | 特徴 |
エホチール | ・2分程度で効果が出る(資料なし) ・透析除去される可能性大!?(7割くらい?) → タンパク結合率28%(資料なし)ガイドラインでは透析性(-)に ・1~10mg/hrで投与 ・希釈して使用「エホ10mg(1cc)+生食9cc」か「エホ10mg(1cc)+生食19cc」 |
リズミック | ・2時間で血中濃度最高 ・透析性あり → 透析膜通過後2分の1に。ガイドラインでは透析性(-)に ・透析中の血圧低下予防が目的 |
ドプス | ・6時間で血中濃度最高 ・透析中~透析後の血圧低下予防が目的 ・効果は24時間前後続くため、非透析時にも低血圧の方に適する |
メトリジン | ・1.5時間で血中濃度最高 ・透析中の血圧低下予防が目的 ・効果が緩やか ・服用して効果が出るまで1~2週間かかることがある(効果が出ないからとすぐに止めない) |
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