はじめに
高リン血症の治療薬として透析患者には、リン吸着薬が処方されています。
ただリンの吸着薬は7種類あり、リンを下げるだけではありません。
カルシウムを含むもの、鉄を含むものなどあり、患者さんにベストな選択をすることが大事です。
7種類全て知っておく必要はないですが、自施設にあるものだけでも特徴を知っておくといいですよ!
リン吸着薬7種類
- カルタン
- フォスブロック
- レナジェル
- ホスレノール
- キックリン
- リオナ
- ピートル
①カルタン(1999年)
- カルタン(一般名:沈降炭酸カルシウム)
- 販売元:ファイザー他
- カルシウム:含有
- 鉄:非含有
- 服薬のタイミング:食直後
- 剤型:錠(T)、細粒
- OD錠:あり
- 代謝性アシドーシス:不変
食後の服用(食後30分)では、胃酸が薄まって(胃内pH上昇)本来の薬の力が発揮できないので、食直後に服用します。
カルシウムが含まれているので、血中のカルシウムが上がることがあります。
他剤に比べて、消化器系副作用が少ない。
②フォスブロック ③レナジェル(2003年)
- フォスブロック・レナジェル(一般名:塩酸セベラマー)
- 販売元
フォスブロック:協和発酵キリン
レナジェル:中外製薬
- カルシウム:非含有
- 鉄:非含有
- 服用のタイミング:食直前
- 剤型:錠(T)
- OD錠:無
- 代謝性アシドーシス:助長
他の薬剤の吸収を低下させる可能性があるので食直前で服用します。
また、体内への吸収が低く、安全性が高い反面、便秘の出現頻度が高いので、腸閉塞に注意する必要があります。
④ホスレノール(2009年)
- ホスレノール(一般名:炭酸ランタン)
- 販売元:バイエル薬品
- カルシウム:非含有
- 鉄:非含有
- 服用のタイミング:食直後
- 剤型:チュアブル・錠・顆粒
- OD錠:あり
- 代謝性アシドーシス:不変
OD錠、顆粒の発売により服用しやすくなりました。
カルタンと比較して、リンの低下効果が高い。
⑤キックリン(2012年)
- キックリン(一般名:ビキサロマー)
- 販売元:アステラス製薬
- カルシウム:非含有
- 鉄:非含有
- 服用のタイミング:食直前
- 剤型:カプセル
- OD錠:無
- 代謝性アシドーシス:不変
他剤よりも体内での薬剤の膨潤(膨らみ)が少なく、便秘が少ない。
他の薬剤の吸収を低下させる可能性があるので食直前で服用。
⑥リオナ(2014年)
- リオナ(一般名:クエン酸第二鉄)
- 販売元:鳥居薬品
- カルシウム:非含有
- 鉄:含有
- 服用のタイミング:食直後
- 剤型:錠(T)
- OD錠:無
- 代謝性アシドーシス:是正
鉄が腸管粘膜を刺激して下痢を起こす場合があります。
黒色便になる場合があります。
鉄が含まれているので貧血改善作用があります。
リオナは保存期での高リン血症治療にも積極的に内服されます
リオナは「クエン酸第二鉄」とあるように、クエン酸と鉄が含まれています。
クエン酸はHCO3-に代謝されるので、代謝性アシドーシスの改善作用もあります。
代謝性アシドーシスが改善することによって、骨代謝や栄養にプラスに働きます。
また、鉄を補給することで高価なESAを減量することができます。
高リン血症になる時期には、すでに腎性貧血が進行しています。
保存期のCa非含有リン吸着薬はホスレノール、キックリン、リオナに限られます。
問題点は患者に負担させるには高価…。
しかしリオナは貧血の改善もあるので、経済的といった利点もあります。
⑦ピートル(2015年)
- ピートル(一般名:スクロオキシ水酸化鉄)
- 販売元:キッセイ薬品工業
- カルシウム:非含有
- 鉄:含有
- 服用のタイミング:食直前
- 剤型:錠・チュアブル
- OD錠:無
- 代謝性アシドーシス:不変
(リオナと同じです)鉄が腸管粘膜を刺激して下痢を起こす場合があります。
黒色便になる場合があります。
鉄が含まれているので貧血改善作用があります。
最後にリン吸着薬の一覧表です。
リン吸着薬の選択
- カルシウム値上昇➡カルシウム非含有を選択(カルタン以外)
- カルシウム値が低い➡カルシウム含有(カルタン)
- 鉄欠乏→鉄含有を選択(リオナ・ピートル)
- 代謝性アルカローシス→代謝性アシドーシス助長を選択(フォスブロック・レナジェル)
- 便秘になりやすい、腸閉塞の既往がある➡腸閉塞を助長するもの以外(フォスブロック・レナジェル以外)
- 代謝性アシドーシスの改善が不十分→その是正に役立つものを選択(リオナ)
といった風ですかね(大まかです)。
病院に7種類あるとこはかなり珍しいと思うので、あるリン吸着薬で、ベストな選択をすることが大事だと思います。
また、剤型の確認やOD錠があるかないかも大切なところだと思います。
嚥下機能が落ちていて錠剤を飲み込めない患者さんがいます。
そういった患者さんには、OD錠を使うといいでしょう。
OD錠は口の中に入れるとすぐ溶けて、かみ砕いたり水を必要としません。
さらに、リン吸着薬の変更をした患者さんがいれば、飲むタイミング(食直前か食直後か)が変更している場合があるので、説明すると親切かも!
リン吸着薬の進歩
リン吸着薬は従来型のカルシウム含有だけでなく、異所性石灰化予防に役立つカルシウム非含有が登場しました。
そして2014年以降鉄含有のリン吸着薬が登場し、貧血の改善になりました。
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