はじめに
副甲状腺ホルモン(PTH:パラソルモン)の数値を直接下げる効果のあるPTH治療薬は、正式には「カルシウム受容体作動薬」といいます。
3種類「レグパラ」「オルケディア」「パーサビブ」について特徴などを踏まえて解説していきます。
また、2021年に4つ目となる「ウパシタ」が販売されました。
ウパシタに関しては下記の記事を参考にしてください。
①レグパラ(シナカルセト塩酸塩)
2007年に二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)治療薬として、レグパラ(シナカルセト塩酸塩)が使用開始になりました。
- 協和キリン株式会社で販売
- 「12.5mg」「25mg」「75mg」で販売。3つとも同一サイズなので飲むときに注意!
- PTHだけでなくP、Caも低下させる
- グレープフルーツやグレープフルーツジュースと一緒に服用すると作用が強力になるので注意!
- 副作用として消化器症状があります。胃不快感、悪心、嘔吐など
【レグパラ販売の背景】
二次性副甲状腺機能亢進症の治療には、不足する活性型ビタミンD3を補充する目的で、活性型ビタミンD3製剤が使用されてきました。
しかし、活性型ビタミンD3製剤はPTH抑制効果は確実であるものの、同時に小腸からのカルシウム吸収能も上昇させるため、投与量を増やすと高カルシウム血症を引き起こす危険性がありました。
そのためPTHを抑制するための十分な量が投与できませんでした。
これに対しレグパラは副甲状腺細胞表面のカルシウム受容体に直接作用することで、血清カルシウム値を上昇させずにPTHの分泌を抑制します。
さらに血清リン値も低下させる効果があります。
②オルケディア(エボカルセト)
- 2018年販売
- レグパラに続く国内2番目のカルシウム受容体作動薬
- 協和キリン株式会社で販売
- 「1mg」「2mg」で販売
- 作用はレグパラと同じで、PとCaも同時に下げる
- レグパラよりも副作用の消化器症状が少ない
【オルケディア名前の由来】
オーケストラのようにPTH、P、Caの調和をとりながらコントロール可能にする、経口(oral)の透析(dialysis)患者への薬剤
レグパラとオルケディアの比較
オルケディアはレグパラと比べて消化器症状が少なく、※薬物相互作用が少ない特徴があります。
【薬物相互作用ってなに?】
血中に複数種類の薬物が存在することによって、薬物の作用に対して影響を与えることです。
薬物相互作用により、薬物の作用が増強したり、減弱したりします。
レグパラは「CYP3A4阻害薬」と「CYP2D6阻害薬」が併用注意ですが、オルケディアの代謝には「CYP」の寄与が少ないため、CYP関連の併用注意薬はありません。
透析患者さんは併用薬剤が多いので、薬物相互作用が少ないのはいいことですね!
③パーサビブ(エテルカルセチド塩酸塩)
- 2017年2月に販売
- 小野薬品工業株式会社で販売
- カルシウム受容体作動薬で初の静注薬
- 「2.5mg」「5mg」「10mg」で販売
- 作用はレグパラ・オルケディアと同じ
パーサビブの一番の強みは静注薬というところです。
静注なので確実に投与されています。
内服薬も同じカルシウム受容体作動薬ですが、実際に服用しているのかが怪しく、服用していないケースが多いです。
しかし、パーサビブは透析ルートから確実に投与しているので、安定した血中濃度の維持ができます。
内服薬からパーサビブに変更するときは、「ひょっとしたら内服薬を飲んでいないかもしれない」ことを考えて!
レグパラとパーサビブの併用
レグパラとパーサビブを併用することにより、CaSR※1作動薬の相加効果が認められていることから、「低カルシウム血症」が発現するリスクが増大する可能性があります。
※1 CaSR:副甲状腺カルシウム感知受容体
カルシウム受容体作動薬は2021年にウパシタという新しい薬が出ましたので、そちらの記事も参考にしてください。
作用機序
ウパシタは血中カルシウム濃度のセンサーである、副甲状腺のカルシウム受容体を直接刺激するカルシウム受容体作動薬です。
カルシウム受容体を刺激することで過剰なPTHの分泌が抑制され、血中のPTH濃度を低下させるといった作用機序です。
その結果、血中のカルシウム濃度やリン濃度が正常になり、二次性副甲状腺機能亢進症の症状緩和につながります。
二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)
最後に軽くですが、なぜ透析患者さんはカルシウム受容体作動薬(PTH治療薬)が必要なのかを説明します。
カルシウム受容体作動薬は、過剰に分泌されたPTHを下げる薬です。
なぜ透析患者はPTHが過剰に分泌されてしまうのか?
- 低Ca血症→PTHが分泌されて骨から血液中にCaを移動させる
- 高P血症→PTHが分泌されてPを尿から排出しようとさせる
透析患者には特徴的な「低カルシウム」と「高リン」があります。
PTHはこれらを正常値に戻そうとする役割があるので、PTHが過剰に分泌されてしまいます。
そして、PTHはやがて歯止めが利かなくなり、Caの数値に関係なく出続けてしまいます。
これを二次性副甲状腺機能亢進症と言います。
【二次性副甲状腺機能亢進症の記事はコチラです】
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