はじめに
透析では透析治療(主に除水)によって下肢つりが起こることがあります。
その原因の一つとして「カルニチン不足」があります。
なので透析返血時にカルニチン製剤を補充する方もまれにいます。
今回はカルニチン製剤について解説します。
カルニチン製剤

- レボカルニチン塩化物錠(錠剤)
- レボカルニチンFF(静注・錠剤)
- エルカルチンFF(静注・内用液・錠剤)
この種類が出てます。
正確なデータとかはないんですけど、感覚的に静注が良く用いられているなといった印象です。
透析返血時に注射します。
カルニチンを増やす方法は薬物療法が主体です。
ポイントは以下の通りです。
- 錠剤では300~900mg(10~20mg/kgが目安)で内服
- 効果改善までには、1ヶ月程度かかる
- 静注は体内吸収の点から、錠剤よりも優れている
カルニチンを増やす薬物療法では、効果が出始めるまでに1か月程度かかります。
なので効果が出ないからとすぐに止めないことが大切です。
また、静注は体内吸収の点から、錠剤よりも優れています。
しかし、錠剤は連日服用できるのに対し、静注は毎透析ごとなので週に3回です。
ここは患者さんと要相談にもなりますし、患者さんの服薬アドヒアランスによるって感じです。
カルニチンの効果
カルニチンは下肢つりの対策として服薬されることが多々あります。
しかし下肢つりだけではなく、以下のような効果が期待できると言われています。
- 貧血の改善
- 透析中の低血圧の軽減
- 心臓の収縮力の増加や心肥大の軽減
- 運動能力(QOL)の改善
これらありますが、この中で透析では、貧血の改善にカルニチンの補充がされているのをたまにみます。
カルニチンは酸化ストレスによって変性した、赤血球二重脂質膜を再生する働きがあります。
赤血球膜構造に直接関係することで、膜の粘弾性を強化します。
そして、細胞膜の修復に関わり、貧血を改善します。
カルニチンと下肢つり
透析によって、血中カルニチンの70~80%が除去されます。
透析患者がカルニチン欠乏症になりやすいのは、以下のような原因があります。
- 食事からのカルニチン摂取不足
- 透析によるカルニチン除去
また、カルニチンを貯蔵しておくための筋肉量が不足しても、カルニチン貯蔵量が低下します。
透析が始まって徐々に不足し、3年後にはかなり少なくなるみたいです。
そしてカルニチン欠乏症は下肢つり(こむら返り、筋攣縮)を起こしやすくなります。
なぜかというと、健康な人に比べ、十分なエネルギー産生が行われないからです。
血中、筋肉内のカルニチン濃度が低下すると、筋細胞内ではエネルギー源が脂肪酸から、糖や蛋白質へシフトします。
体内の細胞にはミトコンドリアという器官があります。
このミトコンドリアは、エネルギーを多く産生する働きがあります。
そのエネルギーの材料になるのが脂肪酸で、脂肪酸をうまく使うためにはカルニチンの働きが必要です。
カルニチンが少なくなると、筋肉が脂肪酸をうまく使えなくなり、エネルギー不足になります。
これは筋組織内の脂肪酸代謝異常および、カルニチン不足から生じるATP産生低下が起こっています。
これによって、健康な人に比べ、十分なエネルギーの産生が行われず、個々の細胞における負担が大きくなります。
すると、その負担に耐え切れなくなり、筋肉症状が出ます。
透析患者の筋組織内のカルニチン濃度は、健康人の約2分の1~3分の1です。

筋収縮のメカニズムは、筋小胞体からCaイオンが放出され、アクチンとミオシンが相互反応して収縮を起こします。(上図)
そして、筋小胞体はATPを分解しながらCaを取り込み、筋収縮が終了します。
カルニチンはATP産生に関与します。
つまり、カルニチン欠乏があると、ATP不足となりCaの取り込みができず筋収縮が続きます。(下図)

なので、カルニチンを補充することでATPを確保し、Caを筋小胞体に取り戻す(筋が弛緩する)ことができます。
そうすることで、下肢つりの改善になります。
透析の下肢つりとカルニチン補充に関してはエビデンスが乏しいとも言われています。
なので試してみて合っていたら、続けたらいいのかなぁと思います
個人的には除水の影響ではない時に下肢つりが起きている場合は、カルニチンの補充をやったらいいんじゃないかなぁと考えています。
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