はじめに
透析中では、血液を体外に取り出し、回路やダイアライザを介して体内に戻します。
この際に血液が固まる恐れがあるため、抗凝固剤(血液を固まりにくくする薬剤)を回路に注入しながら、血液を循環させます。
透析で使用される抗凝固剤は4種類あり、それぞれ作用機序や半減期など特徴があります。
抗凝固剤の種類
- 未分画ヘパリン(UFH)
- 低分子ヘパリン(LMWH)
- メシル酸ナファモスタット(NM)
- アルガトロバン(AH)
それぞれ解説していきます
①未分画ヘパリン
一般的には未分画ヘパリン(UFH:Unfractionated heparin)が用いられます。
- 適応:出血性合併症の少ない症例
- 分子量:3,000~25,000
- 半減期:1~1時間半
- モニタリング:ACT200~250秒
- 投与量:初回投与量20~50IU/kg、持続投与量10~25IU/kg/hr
- 阻害部位:トロンビン(Ⅱa)・Xa・XⅠa・XⅡa
- 作用機序:凝固因子のⅡaとXa因子の両方と結合し、アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)を活性化させることにより抗凝固作用を発揮する
投与量は上記先述しましたが、ヘパリンの説明書では1kgあたりの計算は昔は書いてたんですけども、今はもう書いていません。
なので参考程度にしてください。
持続投与量が10~25IU/kg/hrなので、50kgの人だったら500~1250IU/hrのあたりで調節してました。
しかし今の説明書は、初回投与1,000~3,000単位、持続投与500~1,500単位で調節するようにと記載されています。(下図)
体重関係なく、調節するようになったのですね。
他の注意点では、長期使用で脂質異常(高TG、低HDL血症)を起こすことがあります。
また、ヘパリン起因性血症板減少症(HIT)を起こすことが稀にあり、その際は使用禁忌です。
投与量はある程度体格に比例します。
残血などがあれば、投与量を制限まで増やしても構いません。
また止血の際に10分以上かかる方、止血困難な方は、投与量を減らすなどの対応をします。
②低分子へパリン(LMWH)
LMWH:Low Molecular Weight Heparin
- 適応:比較的軽症の出血性合併症(皮下出血、抜歯後、周術期、眼底出血など)
- 分子量:3,000~6,000
- 半減期:2~3時間
- モニタリング:全血Xa凝固時間(ベッドサイドでのモニタリングはできない)
- 投与量:初回投与量10~20IU/kg、持続投与量5~10IU/kg/hr
- 阻害部位:Xa因子
- 作用機序:Xaに対する阻害作用が強い
- 種類(商品名):パルナパリンナトリウム・ダルテパリンナトリウム・レビパリンナトリウム
【低分子ヘパリンはなぜ体内の出血を助長させないのか?】
低分子ヘパリンは「Xa因子」だけに作用するからです。
Xa因子を抑制すると、体外循環(回路)における凝血抑制に作用し、生体内での作用が軽微になります。
なので、体内で出血をしていても助長をあまりさせることなく、回路だけに抗凝固作用が働くということです。
- Xa因子を抑制すると➡体外循環(回路)における凝血抑制に作用する
- Ⅱa因子を抑制すると➡生体内における凝固時間の延長になる
未分画へパリンよりもHITが少ないのと、脂質代謝における影響が少ないです。
低分子ヘパリンの血液凝固機構は、ヘパリンの所の図を確認して下さい。
③メシル酸ナファモスタット(NM)
NM:Nafamostat Mesilate
- 適応:出血性合併症
- 分子量:539
- 半減期:5~8分
- モニタリング:ACT200~250秒(セライト使用)
- 投与量:初回投与量なし、持続投与量0.1~10mg/kg/hr(基本的には30mg/hrの投与)
- 阻害部位:トロンビン(Ⅱa)・Xa・XⅡa・血小板
・血液凝固のカスケードが一連の酵素反応によって成立していることから、凝固系各酵素の作用を抑制することで、凝固の進行を抑制する薬剤です。
・また、半減期が5~8分なので抗凝固作用が体外循環回路内にほぼとどまります。
➡半減期か短いので、Vチャンバ血栓が見られることがあるため、通常の投与ラインに加えて、静脈チャンバ内への分割投与も可能です。
・透析により約40%が除去されます
高価なので、長期投与は経済的に厳しいです
・透析開始30分程度でアレルギー反応を起こし、血圧低下することがあります
➡ナファモスタットを投与して初回~3回までは、こまめなバイタルチェックが必要です
・PAN膜(AN69膜)では、吸着されるので使用NGです。
➡AN69膜は陰性荷電が強く、ナファモスタットは陽性荷電なので吸着されます
・商品名から「フサン」や「ナオタミン」と呼ばれることがあります
④アルガトロバン(AH)
AH:Argatroban Hydrate
- 適応:HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)、ATⅢ欠乏症(先天的 or ATⅢが70%以下に低下した症例)
- 分子量:530
- 半減期:およそ30分
- モニタリング:APTT60秒よりも延長
- 投与量:初回投与量0.2mg/kg、持続投与量0.1~1.0mg/kg/hr
- 阻害部位:トロンビン(Ⅱa)
未分画ヘパリンと同じⅡa因子に作用するが、アルガトロバンは、ATⅢを介さずに抗凝固作用を発揮します。
なので、ATⅢ欠乏症に対し保険適応となっています。(選択的トロンビン製剤と言われます)
抗凝固剤まとめ
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