はじめに
透析の治療モードには最もスタンダードなHD、近年注目され件数が増えているHDFなどがあります。
他にもHFがあります。
それぞれの治療モードがどういった原理で動いているのか、特徴はなにか解説していきます。
物質除去の特性
- HD:小分子物質の除去に優れる
- HF:中~大分子物質の除去に優れる
- HDF:小~大分子物質まで除去が優れる(HDとHFの特性を併せ持つ)
HD(血液透析)
血液透析:HD:hemodialysis
原理:拡散と限外濾過
拡散とは、水溶液中の溶質は濃い方から薄い方に移動して均一になる現象のことです
HDは透析治療で最もスタンダードな治療であり、一番多いモードです。
拡散により、老廃物の除去、必要な電解質の補充をしています。
- 除去する物質:BUN、クレアチニン、K、P
- 補充する物質:重炭酸、Ca
HDは拡散がメインの原理になるため、小分子物質の除去に優れています。
その反面、濾過がメインとなる中~大分子の物質除去は劣ります。
【血液透析の原理はコチラです】
HF(血液濾過)
血液濾過:HF:hemofiltration
原理:限外濾過
限外濾過とは、透析膜の片側の溶液に圧力がかかると、溶液は膜の反対側に押し出されます。
この現象を「限外濾過」といいます。
血液側から透析液側に圧力がかかっていて、血液中の水分や塩分が押し出されて、体内にたまった水分などを除去しています。
除水は「限外濾過」という方法で成り立っています。
HFは透析膜に透析液を流していません。
限外濾過で水分や老廃物を除去した後、補充液を用いて体内に補充します。
1回の透析あたり約20Lの補充液を使用します。
利点は、中~大分子物質(サイトカイン・β2-MG・α1-MG・ミオグロビンなど)の除去が可能になるところです。
欠点は以下の通りです。
- 透析液が流れていないため小分子物質の除去が十分にされない
- 大量置換に市販の補充液を使用する場合は費用が掛かる
- 濾過がメインのため血液濃縮の問題から血液流量が規定される
そのため、慢性維持透析の患者さんには不向きなモードです。
ではどういった患者さんにHFを施行するのか?
- 透析困難症➡血圧低下を起こしにくいから
- 緑内障➡血漿浸透圧が下がりにくいから
- 透析アミロイド症➡中~大分子物質の除去に有効
HFでは緑内障に良いと言われています。
なぜかというとHFは血漿浸透圧が下がらないため、眼圧の上昇を抑えることができるからです。
緑内障で一番大事なことは眼圧を上げないことです。
眼圧と血漿浸透圧には関係性があります。
血漿浸透圧が下がると眼圧が上昇してしまいます。
HDでは透析液が流れているので拡散が起き血漿浸透圧が下がってしまい、眼圧を上昇させてしまいます。
一方、HFでは透析液が流れていないので、血漿浸透圧は下がりません。
なので眼圧の上昇を抑えることができます。
これがどの程度か、とかはわかりませんし、そもそも仰臥位という体勢が眼圧を上昇させるとも言われています。
参考:JuoEH(産業医科大学雑誌)22(1):33−43(2000)33 血液透析と眼圧
HDF(血液透析濾過)
血液透析濾過:HDF:hemodiafiltration
原理:拡散と限外濾過
HDFは、HDとHFの両方の特性を併せ持ったモードです。
透析が流れているので拡散を行いながら、置換液を用いて補充をしながら限外濾過を行います。
なので小~大分子まで一定の除去率が可能になります。
以下のような様々な利点があります。
- 血圧低下が抑えられることがある
- 合併症の予防(アミロイドーシスや痒みなど)
- 貧血の予防 など
課題は、透析液の清浄化が必要というところです。
【オンラインHDFは以下の記事で詳しく解説しています】
最近では補充液を市販のバッグではなく、機械を流れている透析液で補充するオンラインHDFが主流です。
オンラインHDFを施行するためには透析液が超純粋で、学会が定めた基準をクリアしているものでなければなりません。
【透析液清浄化の基準値はコチラにまとめています】
まとめ(表)
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