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【鉄剤】内服と静注

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はじめに

透析患者さんが内服する鉄剤に関して、「内服」「静注」どちらが良いのか?

といった意見があります。

今回は「内服」と「静注」の特徴を解説していきます。

  • 「IRE/IRPシステム」を動画で学習することができます
7分で解説

内服 vs 静注

【結論】どちらが優れているとかはありません

患者さんの状態によって内服が良かったり、静注が良かったりします。

また報告によっても違ってきます。

ではお互いの特徴をみていきましょう。

内服

内服は以下のような特徴があります。

  • 酸化ストレスの低減
  • 安価

経静脈的投与と比較して鉄の過剰状態や、酸化ストレスの誘因にはなりにくく、最も安全な投与方法と言えます。

またデメリットとなるようなこともあります。

  • 消化管からの鉄吸収低下
  • 副作用の消化器症状(嘔気、嘔吐等)

これらによって、服薬コンプライアンスが低下してしまいます。

これらの点から経静脈的投与が、貧血改善の点からは優れています。

「PO群はIV群に比べ、フェリチン100ng/mL未満かつTSAT20%未満の例は少なかった」という報告がある

しかしこれには…

  • IV鉄剤は鉄欠乏が顕在化してから投与開始されることが多い → 内服は予防投与の場合もある
  • 投与回数に13回と制限があるのに対し、PO製剤は鉄欠乏が顕在化する前から継続して投与される場合が多い

これらが関係していると思われます。

まだ検討の余地がありますね…。

静注

「貧血の改善」「ESA製剤の使用量の低減効果」に関しては、静注の方が有効であったと多くの報告がある

しかし、これらの検討での安全性の評価は短期間(長いもので3ヵ月間)しか観察されていません。

鉄代謝障害に由来する有害事象を検討するには、十分観察されたとは言えません。

また静注鉄剤はヘプシジンを招き、鉄の囲い込み(ACD)の原因になることもあります。

遊離鉄の急激な増加を招き、酸化ストレスの原因にもなります。

その結果、血管内皮障害を惹起する可能性がでてきます。

また以下のような報告もあります。

POに対してIVは「深刻な心血管イベントが2.5倍」「入院を要する感染症発症が2.12倍」

IV製剤で副作用が多かったと報告されています。

IV鉄による酸化ストレスの上昇がヘプシジンの上昇と関連して、ESA抵抗性の増大にもつながると考えられています。

まとめ

メリットデメリット
内服 ・ 鉄過剰や酸化ストレスが少ない
 ・ 鉄過剰による感染症発症は少ない
 ・ 安価
 ・ 副作用の消化器症状がある
 ・ 静注より造血効果が感じにくい
静注 ・ 貧血改善効果は内服より優れる ・ 鉄過剰による合併症が懸念される
 ・ 入院を必要とする感染症発症が2.12倍
 ・ ヘプシジンの上昇が懸念される
  • 内服:鉄過剰のリスクは少ないけど、貧血改善効果は弱い
  • 静注:貧血改善の効果はあるけど、鉄過剰のリスクはある

どっちを選ぶかはその患者さんの状態によるかなと思います。

参考:透析会誌 54(5):219~228,2021 血液透析患者における赤血球容積分布幅(RDW),平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)と腎性貧血治療との関連性

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