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【鉄】IRE/IRPシステム

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鉄に詳しくなる
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はじめに

鉄は「IRE/IRPシステム」という鉄調節機構があります。

これは少し難しいところではあるのですが、説明していきます。

  • 「IRE/IRPシステム」を動画で学習することができます
10分で解説

IRE/IRPシステム

  • IRE:鉄応答性要素(Iron-responsive element)
  • IRP:鉄調節タンパク質(Iron-regulatory protein)

鉄代謝に関わるタンパク質の制御に関しては、遺伝子転写レベルのみならず、転写後においても制御が存在することが知られています。

すなわち、遺伝子のmRNAの翻訳配列の前あるいは後ろにIRE[5’-CAG(U/A)GN-3’]と呼ばれる特定の配列が存在し、同部に鉄欠乏のセンサータンパク質であるIRP1/2が結合することで、翻訳を阻害したり、促進したりしています。

いやぁ~難しいですね…

まとめると…

  • IRE/IRPシステムによって鉄濃度は調整されているってこと
  • TfR(トランスフェリンレセプター)やフェリチンの発現は、mRNAレベルで制御されている
  • 細胞内鉄濃度によりIREとIRPの結合が変化し、mRNAの翻訳が亢進したり、反対に阻害されたりする
  • そうすることで蛋白質発現が調整され、適度な鉄濃度に保たれている

翻訳ってなに?

  • 転写:核内にあるDNA(タンパク質の設計図)がコピーされ、mRNA(伝令RNA)がつくられる過程
  • 翻訳:mRNAが読み取られ、それに対応するタンパク質が作られる過程

転写は真核細胞の場合、核内で行われて、翻訳はリボソームで行われます。

遺伝情報はDNAからmRNA、そしてタンパク質に姿を変えます。

この一連の流れをセントラルドグマといいます。

IRPってなに?

IRE/IRPシステムのなかで重要となってくるのはIRPです。

IRPがどういった働きをしているのか知る必要があります。

IRP:鉄調節タンパク質(Iron-regulatory protein)

その名の通り鉄を調節してくれるタンパク質です。

IRPは鉄に関するタンパク質の合成をコントロールしています。

鉄に関するタンパク質とは「フェリチン」「トランスフェリン」「ALAS2(ヘム合成酵素)」などです。

ALAS2とは、赤血球のヘムを合成する酵素のことです。

IRPは以下のような働きをしてくれます。

  • フェリチンの合成を抑制
  • トランスフェリンやALAS2の合成を促進

IRPの鉄コントロールは非常に巧妙にできていることが分かったと思います。

しかし忘れてはいけない重要な特徴がもう一つあります!

IRPは鉄と結合すると、力を失います(不活性化)

なので以下にIRPの役割を3つまとめます。

  1. 「フェリチン」の合成を抑制
  2. 「トランスフェリン」や「ALAS2」の合成を促進
  3. 鉄と結合すると、力を失う(不活性化)

IRPの作用

IRPの作用はこの2つを想定して考えた方が分かりやすいです。

  1. 体に炎症が無くて、鉄欠乏の時
  2. 炎症があって、細胞内の鉄が多い時

まず「1. 体に炎症が無くて鉄欠乏の時」を想定して、IRPの作用をみていきましょう。

炎症がないので、全身の鉄代謝は回っている状態です。

しかし鉄欠乏なので、そもそも細胞内の鉄は少ないですよね。

つまり細胞内に、IRPに結合する鉄がありません。

すると、IRPはmRNAに働きかけて以下のようなことが起こります。

  • フェリチンの合成を抑制する
  • トランスフェリン、ALAS2はたくさん作る

細胞内の鉄が少ないと、鉄の貯蔵(フェリチン)を減らして、トランスフェリンで鉄を全身に輸送して、ALAS2を使って骨髄で赤血球をたくさん作ります。

こういう風に造血に働き、少ない鉄の濃度を調節するように働きます。

では、「2. 炎症があって、細胞内の鉄が多い時」について考えていきましょう。

細胞内の鉄が多い時、IRPは鉄と結合するので、不活性化します。

すると、本来のIRPの働きの逆の動きをするようになります。

  • フェリチンの合成を抑制するのをやめる → フェリチンが増える
  • トランスフェリン、ALAS2はたくさん作るのをやめる → トランスフェリン、ALAS2は作られない

つまり、細胞内の鉄が多い時は、フェリチンは沢山作られ、血清鉄、Hbは下がっていきます。

「フェリチン」と「TfR」の動き

「フェリチン」と「TfR」は、細胞内鉄濃度に応じて反対の動きを示します。

TfRフェリチン
Low Fe↑↑↓↓
High Fe↓↓↑↑

細胞内鉄濃度に応じて反対の動きを示していることが分かります。

これらの鉄関連蛋白質の発現にIRE/IRPシステムが関与し、mRNAレベルで制御されています。

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