はじめに
鉄について学んでいくと「DMT1」や「TfR」「FP1」といった用語が出てきます。
この用語が少し難しかったりします。
なので今回はこの用語たちをわかりやすく説明していきます。
「DMT1」「TfR」「FP1」
- DMT1(ディームティーワン) : Divalent Metal Transporter 1
- TfR(トランスフェリンレセプター):Transferrin receptors
- FP1(フェロポーチン1):Ferroportin
- DMT1:鉄を細胞内に取り込む蛋白
- TfR:トランスフェリン(Tf)と結合した鉄を細胞内に取り込むための細胞膜構造
- FP1:DMT1によって取り込まれた鉄を血管腔に排出する役割
3価の鉄は十二指腸上皮細胞によって取り込まれます。
その鉄はDMT1というタンパクによって、細胞内に入ることができます。
細胞内に入った蛋白はフェリチンとして蓄えられますが、一部は細胞外(血管)に排出されトランスフェリン鉄として運搬されます。
そして、細胞内から細胞外(いわゆる血管腔)に排出する役割を担うのがFP1です
FP1は鉄を細胞外に汲みだす唯一のたんぱく質です。
なので鉄の汲みだし蛋白とも言われます。
では、鉄の囲い込みが起きた際はどうなるのか見てみましょう。
鉄の囲い込み
鉄の囲い込みとは、炎症等によって鉄が細胞内に溜まり、血管内に排出されない状態のことです。
この場合以下のような動きが見られます。
- 鉄の取り込み蛋白(DMT1)↑↑
- トランスフェリンレセプター(TfR)↑↑
- 鉄の汲みだし蛋白(FP1)↓↓
鉄を細胞内に取り込む「DMT1」と「TfR」は上昇します。
一方で鉄を細胞内から血液中に入れてあげるFP1は低下してしまいます。
なので炎症が起きた際は「フェリチンの増加」と「Feの低下」がみられます。
この結果、様々な細胞に鉄が囲い込まれて生体内での鉄の偏在化が起こります。
そして造血に有効な鉄利用が低下しているため、鉄の囲い込み(ACD)が生じると考えられています。
次は「鉄の囲い込み」をヘプシジンを絡めて説明していきます。
上図を説明していきます。
まずは網内系細胞です。
正常な方では、鉄は細胞内に入り、FP1によって血管に送り込まれ、造血に利用されます。
しかし、IL-6(炎症性サイトカイン)や鉄過剰によって、ヘプシジンが分泌されると、FP1の機能を阻害してしまいます。
それによって鉄は細胞内にとどまったままになり、血管に排出されません。
つまり鉄の囲い込みが起こり、鉄の利用障害をきたします。
腸細胞でも同じことが言えます。
ヘプシジンも透析患者の鉄の吸収障害や「鉄の囲い込み」に関与する重要な因子の1つとして注目されています。
ヘプシジンは「IL-6」や「IL-1β」等の炎症性サイトカインによって、主に肝細胞から誘導されます。
そして、消化管上皮細胞や網内系細胞内から、鉄を細胞外に汲みだす働きを担うFP1を受容体として結合します。
その分解を促進し、細胞内から細胞外への鉄の汲みだしを阻害すると考えられています。
参考:鉄代謝の臨床 鉄欠乏と鉄過剰:診断と治療の進歩
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