はじめに
鉄と炎症反応には関係性があり、炎症反応が起こると血清鉄は低下します。
今回はその鉄と炎症について解説します。
【鉄関連についてはコチラで解説しています】
炎症反応は鉄を低下させる
急性・慢性炎症では※網内系マクロファージや肝細胞から、末梢血への鉄の供給が途絶えるため、鉄は減少します。
これは、網内系マクロファージや肝細胞に、十分な量の鉄が貯蔵されていても起こります。
これに伴って、貧血症状が現れます。
赤血球(厳密にいうと赤芽球)への鉄の取り込み量が減少
↓
ヘモグロビン合成低下
↓
貧血
※網内系マクロファージ:生体の防御に関与している細胞のこと
透析患者では炎症反応の亢進がしばしばおこることがあります。
炎症反応が起きた時の鉄の動きは、「血清鉄の低下」と、「細胞内鉄(フェリチン)の増加」です。☜これ重要!
これにはヘプシジンが関与しています。(下図)
ヘプシジンとは、細胞内から血液中への鉄放出を抑制するペプチドホルモンのことです。
つまり、炎症が起きヘプシジン合成が亢進すると、鉄の利用を障害します。
炎症性サイトカインであるIL-6を介して、肝臓でのヘプシジン合成が亢進します。
さらに、腎臓でのクリアランスも低下していることから、血中ヘプシジン濃度が上昇します。
すると、血清鉄の低下とフェリチンの増加が起きます。
これによって、骨髄での鉄利用障害を引き起こし、貧血の原因となります。
末梢血中の鉄量の指標にはTSATを使用する
末梢血中の鉄量の指標にFeではなく、TSATを使用するのは、血清トランスフェリン濃度が栄養状態にも影響されるためです。
つまり、栄養状態が悪い人の末梢血中の鉄量の指標には、TSATを指標とする方が良いです。
鉄が末梢血中に存在するためには、結合しているトランスフェリンが必要です。
しかし、栄養状態が悪化すると、トランスフェリンの合成が低下します。
したがって、栄養状態の悪い患者では、鉄欠乏がないにもかかわらず、トランスフェリン不足のため、Feが低値を示すことがあります。
そのため、全体の鉄の飽和率を出しているTSAT使用するのが望ましいと言えます。
ただし、本当に鉄欠乏が起きていた場合、トランスフェリンの産生が亢進します。
なので、TSATは必ずしも補正Feとは限りません。
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