毎週月曜更新!次回のブログ更新は10/21(月)内容:透析患者の高血圧

透析とK(カリウム)~高K血症・突然死・心電図・検査値の見方~

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検査値
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はじめに

透析患者での重要な検査値でK(カリウム)があります。

透析患者ではKの排出が困難になるので、高K血症になってしまいます。

今回はKの見方や高K血症について説明していきます。

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基礎知識

カリウムは筋肉や神経の興奮、伝達、収縮に関係する電解質です

  • 基準値:3.5~5.5(mEq/L)CKDガイドラインより
  • 何がわかる:食事内容(野菜やフルーツなど)

個人的には透析患者のKの基準値は3.5~6.0

みんなはどれくらい?

正常な人では、摂取量とほぼ同量の排泄量を維持できます。

しかし透析患者では腎不全の影響によって、Kの排泄ができなくなります。

なので摂取量が排泄量を上回ってしまい、高K血症になってしまいます。

K値の見方

透析患者のK基準値:3.5~5.5(CKDガイドライン)

個人的には3.5~6.0(mEq/L)です。

透析患者でのK値の見方は以下のような感じです(信頼できる とあるドクターさんのを参考にしました)。

  • 3.4以下:逆に危険
  • 3.5~4.4:まぁOK(もう少し上げてもOK)
  • 4.5~5.4:ベスト!
  • 5.5~6.4:ちょっと危険、注意
  • 6.5~7.4:危険、対応必要
  • 7.5以上:即透析

ぜひ参考にしてください。

CKDガイドラインでは3.5~5.5が目標値となっていますが、中2日で5後半は許容範囲だと感じます。

また以下のような報告もあります。

血清カリウム値4.0~5.4(mEq/L)で総死亡とCVD発症リスクが低下する

慢性腎臓病の栄養管理日大医誌 78 (4): 237–241 (2019)

結構透析患者さんって6.0以上でもケロッとしてる人多いですよね。

しかしこれは要注意なので、しっかり観察しましょう。

経験したのだと、9.0でも平気にしてる人がいました。

高カリウム血症と心電図

高カリウム血症では以下のような症状があります。

  • 四肢、口唇のしびれ
  • 筋脱力感
  • 悪心、嘔吐などの胃腸症状

これらが見られた場合は、高カリウム血症を疑います。

そしてなんといっても高カリウム血症と言えば重篤な不整脈ですよね。

心臓の伝導系を阻害して、不整脈を起こします。

そして重篤な不整脈の場合はVF(心室細動)やVT(心室頻拍)を起こし、心停止に陥ります。

高カリウム血症の際の心電図は以下のようになります。

高カリウム血症の心電図
  • P波減高
  • 房室ブロック(Ⅰ~Ⅲ度)
  • QRSの延長
  • テントT波

以上のような特徴があります。

また、高K血症だけじゃなく、低カリウムにも注意が必要です。

低K血症はQT延長の原因となり、torsade de pointesトルサード・ド・ポワントから心室細動(ventricular fibrillation:VF)へと移行させる重要な要因でもあります。

トルサード・ド・ポワントとは、突然死の原因と成り得る不整脈の一種です。

心電図上では特徴的な多形性心室頻拍を示します。

Kと心臓突然死

透析患者における心臓突然死では、以下のような報告があります。

  • JSDT統計調査では約5%※1
  • 米国腎臓データシステム(USRDS) では約26%※2

と報告され、一般市民と比較して25~130倍と非常に高頻度に発症します。

カリウムは心臓突然死の危険因子となります。

透析患者における心臓突然死は、以下の2パターンが発症のピークです。※3

  • 透析開始後12時間以内
  • 中2日を空けた透析前12時間以内

つまり、週末透析開始後12時間以内60~72時間がピークです。

この2つの時間の原因は以下の通りです。

  • 透析開始後12時間以内 → 透析治療における除水に伴う交感神経系の賦活低K血症
  • 中2日を空けた透析前12時間以内 → 循環血液量の増加に伴う交感神経系の賦活高K血症

これらが深く関与しているもの考えられています。

なので1/1(週末)の朝9時に透析をしたとすると、以下の間の時間が危険ということになります。

  • 治療開始AM9:00~PM9:00
  • (中2日空くので)1/3 PM9:00~1/4 AM9:00

この間が危険ということになります。(下画像)

※1 Nakai S, Masakane I, Akiba T, Shigematsu T, Yamagata K, Watanabe Y, Iseki K, Itami N, Shinoda T, Morozumi K, Shoji T, Marubayashi S, Morita O, Kimata N, Shoji T, Suzuki K, Tsuchida K, Nakamoto H, Hamano T, Yamashita A, Wakai K, Wada A, Tsubakihara Y : Overview of regular dialysis treatment in Japan as of 31 December 2006. Ther Apher Dial, 2008 ; 12 : 428〜 456

※2 http : //www.usrds.org/adr.aspx

※3 Bleyer AJ, Hartman J, Brannon PC, Reeves-Daniel A, Satko SG, Russell G : Characteristics of sudden death in hemodialysis patients. Kidney Int, 2006 ; 69 : 2268〜 2273

高Kの予防

K値の上昇を防ぐためには、基本的には食事療法です。

カリウムの含まれる食材を摂取することによって、血中K値が高くなってしまいます。

カリウム摂取の目安は一日2000mg以下が基準です

Kが多い食材は以下の通りです。

  • 果物(バナナやメロンは特に多い)
  • 生野菜(湯でこぼしでKは低くなる)
  • 豆類(小豆やナッツなど)

また食事による過剰摂取だけでなく、降圧薬によっても高Kは起こります。

降圧薬の種類はACE阻害薬ARBです。

それぞれの一般名と商品名を以下にまとめます。

「~プリル」はACE阻害薬

「~サルタン」はARB

です。

また、高カリウム血症の予防として薬物療法も併用します。

カリウムが高い患者ではカリウム吸着薬を処方します。

今出ている種類は以下のものになります。

  • カリメート、アーガメイトゼリー
  • ケイキサレート
  • ロケルマ

カリウム吸着薬は、体内でKを吸着して便と一緒にカリウムも体外に排泄するといった薬剤です。

【カリウム吸着薬に関しては以下の記事を参考にしてください】

KとpHの関係

透析患者では透析のK除去とは無関係に、血清Kが低下します。

これはなぜかというと、pHの補正が関与しています。

アシドーシスになると、水素イオンが細胞内に入る代わりに、Kが細胞外に排泄されます。

これによってpHが0.1下がると、Kは0.6mEq/L上がるとされています。

これとは逆に透析患者はアシドーシスが改善するので、pHが上がり、Kは下がる

透析では代謝性アシドーシスが補正される(pHが上がる)ので、透析のK除去とは無関係に、Kが急速に細胞内に戻り、血清Kが低下します。

  • pH↓↓ → K↑↑
  • pH↑↑ → K↓↓

ということです。

しかしK値は透析終了後30分前後から再上昇します(リバウンド現象)

リンにもこのリバウンド現象があります。

【関連記事はコチラ】

コメント

  1. 内田 豊木 より:

    私は双子です。
    弟が透析患者で週3回透析しています。
    1/15 心臓大動脈瘤弁狭窄症で手術をしました。
    切開。 術後吐き気をもよおしていたのですが、次の朝心臓蘇生をしないといけないくらい危険な状態になりました。なんとか一命は取り留めたのですが。。 カリュウム上昇が原因。
    私の血を彼に透析する事は可能でしょうか

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