はじめに
透析患者においてカルシウムは非常に重要な値で、CKD-MBDの観点からも注目されている検査項目です。
透析患者は慢性腎不全の影響で低Ca血症になってしまいます。
そして低Ca血症になるとなぜ、骨粗鬆症を引き起こすのか、解説していきます。
Caの基礎知識
カルシウム(Ca)は人体に含まれるミネラル(無機質)の中で最も多いです。
体の中のカルシウムの99%は、骨や歯に分布しており骨の強度を維持しています。
残りの1%は血液や筋・神経に存在しており、筋肉の収縮や神経伝導に関与しています。
血清カルシウム(総Ca)は「遊離カルシウムイオン(イオン化カルシウム)」と「アルブミン結合型カルシウム」に分けられます。
補正カルシウムの式
補正Caはアルブミン値が4.0g/dl未満の時に使用される式です。
アルブミン値が低いと、アルブミンと結合しているカルシウムが減るので、総カルシウムが減ってしまいます。
つまり見かけ上、総Ca濃度が低下してしまいます。
実際知りたいのは、生理活性のあるイオン化カルシウムを知りたいので、補正式を使用して、総Caを過小評価しないようにします。
補正式を使用すると、総Caは上がります。
【透析の検査値の場合カルシウム値は補正式を用います】
アルブミン値が4.0(g/dl)以下の場合は補正式を用います。
《補正式》
補正カルシウム(mg/dl)=血清カルシウム(mg/dl)+(4-アルブミン(g/dl))
《例》
カルシウム8.5(mg/dl)、アルブミン3.5(g/dl)の場合
8.5+(4-3.5)=9.0 (答)補正カルシウム値9.0(mg/dl)
基準値
カルシウム基準値:8.4~10.0(mg/dl)(補正式を用いる)
- 高値:便秘・嘔気・嘔吐(消化器症状)や意識障害
- 低値:神経・筋が過敏になり、筋痙攣や手指のしびれ感、下肢つりなど
低Ca血症は透析中の下肢つりを引き起こします。
なぜかというと、透析中では除水による影響と透析剤の影響で、pHがアルカローシスに傾きます。
すると、筋肉の筋小胞体という部位からCaイオンが放出され、筋肉が収縮し続けて、下肢つりになります。
Caイオンが正常値にあると、これを食い止めることができます。
透析中の下肢つりに関しては下記のリンクから飛んで見てみてください
低カルシウムはなぜ骨粗鬆症を引き起こすのか?
まずは簡単に流れを説明します。
腎機能が低下すると…
↓
活性型ビタミンDが作られない
↓
血液中のカルシウム値低下
↓
副甲状腺ホルモン(PTH)
↓
骨がもろくなる(骨粗鬆症)
という流れです。
では詳しく解説していきます。
腎機能が低下すると活性型ビタミンDが作られなくなり、血液中のカルシウム値が低下します。
【なぜ、活性型ビタミンDが作られなくなると、血清カルシウムが低下するの?】
この活性型ビタミンDは、カルシウムを腸から血液に吸収する役割があります。
その活性型ビタミンDが作られなくなるので、カルシウムが血液に中に入ってきません。
なので血液中のカルシウム値が低下します。
血液中のカルシウム値が低下すると、「副甲状腺ホルモン(PTH)」が分泌されます。
このPTHは、「骨からカルシウムを血液中に放出する」働きがあります。
血液中のカルシウムが少ないよ!と指令を受けると、PTHが分泌されて、大事な骨の中にあるカルシウムを血液中に移動させてしまいます。
すると骨の中にあるカルシウムがなくなって、骨がもろくなります。
これが骨粗鬆症に繋がります。
異所性石灰化ってなに?
異所性石灰化って文字で見るとなんか難しそうな・・・。
って思うかもしれませんが、異なる所が石灰化していく→いろんな所が石灰化していくという意味です。
このいろんな所というのは、血管はもちろん関節の周辺・筋肉・皮膚・目(結膜)、肺・心臓の弁などの様々な臓器です。
血液中のリン(P)、カルシウム値が高くなると、血液中に溶けきれなくなり、上記のような様々な場所に石灰化して沈着し、硬い骨のようになります。
血管が石灰化した場合は、その場所を穿刺しようとしても固すぎて針が入りません。
このように骨や歯以外の場所(異所)にリンやカルシウムがたまることを「異所性石灰化」と言います。
血管の石灰化は、血管が詰まりやすくなり、動脈硬化になります。
すると、心筋梗塞や脳血管障害、手足の壊疽につながり、生命に影響します。
血管と心臓弁膜のカルシウム沈着は、きれいに取る方法がありません。
そのため、心不全など心臓の合併症や血管系の疾患に注意する必要があります。
【異所性石灰化はコチラの記事で詳しく解説しています】
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