はじめに
体内の鉄は排泄系が存在せず、生体内でリサイクリング(再利用)されながら存在しています。
鉄のリサイクリング系の鉄代謝ではこの4つが作用してきます。
この4つはめちゃくちゃ大事なので覚えておきましょう!
- 十二指腸上皮細胞(小腸)
- 肝細胞(肝臓)
- 骨髄赤芽球
- 網内系、マクロファージ
今回はこの1つずつを説明します。
生体内の鉄代謝(recycling)
鉄代謝は上図のように体内の臓器を巡り巡って、リサイクリングされています。
①~⑤の順にみていった方がわかりやすいので、説明していきます。
【①十二指腸上皮細胞(小腸)】
食事中の鉄が消化管で吸収されると、鉄は血清中でTfと結合して全身に運搬されます。
↓
【②骨髄赤芽球】
一部は貯蔵などに回されるが、大部分は骨髄の赤芽球でHbの構成要素として利用されます。
↓
【③網内系、マクロファージ】
赤血球は全身を循環するが、老廃赤血球は脾臓などの網内系で処理され、そこで鉄が取り出されます。
そして再び血液中でTfに結合し、運搬され再利用されます。
↓
【④半閉鎖回路の構築】
体内のほとんどの鉄は血液、骨髄、赤血球、網内系の間でrecyclingされて半閉鎖的回路を形成しています。
↓
【⑤肝細胞(肝臓)】
全身を回るTf結合鉄の量は消化管での吸収か、もしくは網内系での鉄放出の段階で調節されて変化するが、この調節を行うのがヘプシジンです。
この順にグルグル体内を循環しています。
十二指腸上皮細胞(小腸)
十二指腸上皮細胞の役割は、鉄を細胞内に取り込み血管に排出させることです。
鉄は食物中から十二指腸上皮細胞で取り込まれます。
「非ヘム鉄」と「ヘム鉄」の経路
鉄は食物中から2種類の経路により、十二指腸上皮細胞で取り込まれます。
その経路は非ヘム鉄とヘム鉄です。
- 非ヘム鉄(Fe3+):Dcytb → Fe2+ → DMT1 → 細胞内
- ヘム鉄(Fe2+):HCP1 → 細胞内
・ DMT1(ディームティーワン) : Divalent Metal Transporter 1
・ Dcytb(ディーサイトビー) : Duodenum cytochrome b
・ HCP1(エイチシーピーワン) : Heme carrier protein 1
では「非ヘム鉄」と「ヘム鉄」に分けて説明します。
非ヘム鉄
非ヘム鉄が細胞内に取り込まれるには、以下のような経路をたどります
非ヘム鉄(Fe3+):Dcytb → Fe2+ → DMT1 → 細胞内
非ヘム鉄はいわゆるイオン鉄です。
まずFe3+をFe2+に還元するためにDcytbを通ります。
その後、Fe2+を細胞内に取り込むためにDMT1を通り、細胞内へと運ばれます。
その後フェリチン(Ftn)として蓄えられるものと、血液中へと運ばれるものに分かれます。
ヘム鉄
ヘム鉄が細胞内に取り込まれるには、以下のような経路をたどります
- ヘム鉄(Fe2+):HCP1 → 細胞内
ヘム鉄はHCP1により上皮細胞内に吸収され、heme oxygeneseにより鉄が取り出され、フェリチン(Ftn)として蓄えられます。
貯蔵された鉄は必要に応じて鉄イオン(Fe2+)になった後、フェロポーチン1(FP1)により血管腔に汲みだされます。
直ぐにヘファスチンにより酸化された後(Fe3+)、Tfに結合し各種臓器に運搬されます
FP1とは、鉄を細胞外へ汲みだす唯一の機構です。
「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」
通常「ヘム鉄」の方が「非ヘム鉄」より5~6倍の吸収率があるが、鉄分不足状態では「非ヘム鉄」の吸収率が圧倒的に高い※
※ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC291114/?page=4
肝細胞
肝細胞の役割は、鉄をフェリチンとして貯蔵することです
TfR(トランスフェリンレセプター)によってトランスフェリン結合鉄が肝細胞に取り込まれ、フェリチンとして貯蔵されます。
そして、必要に応じてFP1から汲み出され、Tfに受け渡されます。
また肝臓からは鉄調節ペプチドであるヘプシジンが産生、分泌されます。
このヘプシジンは鉄の吸収を調節しています。
炎症下では細胞内から細胞外への、鉄の汲みだしを阻害すると考えられているのが、このヘプシジンです。
TfR(トランスフェリンレセプター)ってなに?
TfRは、トランスフェリン(Tf)と結合した鉄を細胞内に取り込むための細胞膜構造です。
骨髄赤芽球
骨髄赤芽球の役割は、Hb合成に働くことです
骨髄赤芽球では、血中からTfRによりトランスフェリン鉄が取り込まれ、Hbが合成されます。
老化した赤血球は網内系に貪食され、Hb鉄は再利用されます。
網内系、マクロファージ
網内系には以下のような役割があります。
- 老化赤血球を処理する
- そこから鉄を取り出して再利用する
網内系の貪食細胞は老化赤血球を貪食します。
そして、ヘムオキシゲナーゼの作用によって鉄を回収し、フェリチンとして蓄えられます。
それから必要に応じてFP1から汲み出され、Tfに受け渡され再利用されます。
網内ってなに?
網内系とは全身に散在し、貪食能と共通の細胞形態を示す間葉系細胞の総称です
外界からの異物や細菌を貪食してくれるフィルタの役割があり、単球やマクロファージといった貪食細胞が存在しています。
網内系は以下のような、体内の至る所に存在します
- リンパ節のリンパ洞、扁桃
- 脾臓の静脈洞
- 肝クッパー細胞
- 脳ミクログリア
- 肺胞マクロファージ
- 腎糸球体内のメサンギウム などなど
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