はじめに
透析の貧血の評価ではフェリチンはすごく重要となってきます。
フェリチンは細胞内鉄で、鉄の貯蔵庫として体内に貯められています。
今回は基礎知識から、鉄剤(フェジン)についても解説していきます。
基礎知識
フェリチンの基礎知識です。
- 基準値:60~100ng/dL?または30~100(後で解説)
- フェリチン=貯蔵鉄
- 肝臓と脾臓に存在する
- フェリチン=アポフェリチン+鉄
- 何がわかる:貧血の指標・鉄が足りているかどうか
- フェリチン鉄分子量:20万以上
遊離されている鉄は毒性が強いので、無毒化するために、アポフェリチンというタンパク質にくるまれています。
鉄の総量(3,000~5,000mg)は以下のような内訳になります(図1)
- ヘモグロビン鉄(70%)
- 貯蔵鉄(フェリチン)(25%)
- 組織鉄(筋肉や皮膚)(5%)
今回紹介する貯蔵鉄(フェリチン)は25%を占めています。
フェリチンとは鉄を貯蔵することのできるタンパク質です。
細胞内に鉄分を貯蔵して、血液中の鉄分量(血清鉄)を維持する働きがあります。(図2)
フェリチン=貯蔵鉄です。
出血や貧血などで、鉄が足りていない場合は、貯蔵庫になっているフェリチンから補給されます。
フェリチンの基準値
フェリチンの基準値は先述でも60~100ng/dLまたは30~100としましたが、明確な数値はありません。
しかし根拠となる報告が2つあります。
CKD患者において鉄剤投与により血清フェリチン値100ng/mL以上の貯蔵鉄量をリスクとする報告もある。常に血清フェリチン値100ng/mL以上の患者は脳・心血管系合併症、感染症のリスクが上昇するとの報告もある。
Kuragano T, Matsumura O, Matsuda A, et al. Association between hemoglobin variability, serum ferritin levels, and adverse events/mortality in maintenance hemodialysis patients. Kidney Int 2014; 86: 845‒54.
透析患者の鉄状態とESA製剤の最も良い関係はTSAT20%以上(できれば22%以上)、フェリチン60未満が最も効率よく造血をもたらすとの報告もある。
血液透析患者の鉄の至適指標は低フェリチン高TSAT
よってこれら2つから基準値は60~100ng/dLまたは30~100が妥当かなと思います。
フェリチンと炎症
炎症が起きた場合は血清鉄(Fe)の低下と細胞内鉄(フェリチン)の増加が起きます。
これらは骨髄での鉄利用障害を引き起こす貧血の原因になります。
炎症がある場合(CRPが高い)はFeの低下、フェリチンの増加が起きているときがあるから検査値見てみてください!
この炎症とフェリチンの増加にはヘプシジンが関与しています。
ヘプシジンとは、細胞内から血液中への鉄放出を抑制するペプチドホルモンです。
つまり、炎症が起きヘプシジンの合成が亢進すると、鉄の利用を障害します。(図3)
鉄剤(フェジン)の投与基準
フェリチンはフェジンの投与に関わります。
フェジンは鉄剤で貧血治療に関わってくるお薬です。
ではどういったときにフェジンを投与するのか?
【投与を推奨】
ESA投与下で目標Hb値が維持できない患者において、血清フェリチン値が100ng/mL未満かつTSATが20%未満の場合
【投与を提案】
ESA製剤も鉄剤も投与されておらず目標Hb値が維持できない患者において、血清フェリチン値が50ng/mL未満の場合
一概にフェジンの適応はこれ!というのは難しいです。
ドクターによっても考え方は異なってきます。
血清フェリチン値が300ng/mL以上となる鉄補充療法は推奨しません。
参考:2015年版 日本透析医学会 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン
週一回、13回の投与を1クールとし、血清フェリチン値が 300ng/mL以上とならないように投与する
フェジンは副作用が強いので注意です。(頭痛、悪心、発熱、嘔吐)
フェジンは白血球機能の低下や酸化ストレスの増加を引き起こすので、慎重に投与してください。
フェジンの投与アンケート(1)
フェジンの投与に関して各施設のやり方を知りたかったのでTwitterとInstagramでアンケートをとりました。
こちらのアンケートでは透析終了時の投与が圧倒的に多いという結果になりました。
透析中に投与している施設は少ない。
皆さんはフェジンの投与は透析のどのタイミングしていますでしょうか。
個人的な意見ですが、フェジンの投与は透析中の余裕のある時間でいいと思っています。
なぜかというと、フェジンの投与はゆっくり(添付文書には2分以上と記載あり)回路内に投与しなければいけないからです。
透析終了時だと時間に追われているので、投与が早くなってしまう傾向があります。
なので透析中の余裕のある時間帯に、患者さんと楽しくおしゃべりとかしながら投与が一番の理想と考えています。
じゃあここで疑問に思うのが、透析中の投与して除去されないのか?
というところなんですが、鉄の分子量は約8万程度です。
HDではほとんど抜けません。
鉄の損失量はわずかです。
フェジンの投与アンケート(2)
では皆さんフェジンの投与にどのくらいの時間をかけているのか、気になりました。
こういった結果になりました。
なんと添付文書の2分以上を実施している方は14%だけでした。
これに関しては様々な意見があります。
回路内血液と混ざるから(希釈される)急速投与でも問題ない。
急速投与で副作用出てる人見たことない。
添付文書は「静脈内注射」。
透析回路においてもそうと言えるのか?
副作用の可能性のある急速投与はダメ。
最善の医療を提供するためには2分以上かける。
と、人によって言うことは違います。
個人的な意見にはなりますが、患者に副作用が出ないことは必須です。
これは絶対に守らないといけません。
あとは自施設の環境で一番の方法を見つけるしかないですかね。
ただもし患者さんに副作用が出た場合に、急速投与していたら問題なので、添付文書の2分以上を守るに越したことはありません。
患者さんを守る、自分を守るうえでも添付文書の2分以上を遵守した方がいいとは思います。
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