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【透析】NT-proBNP《心負荷、カットオフ値》

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はじめに

NT-proBNPは心負荷の増大を表している検査値です。

透析患者においても心負荷を示します。

今回は透析患者においてのNT-proBNPはどう見るのか解説します。

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8分の動画で解説

NT-proBNPってなに?

NT-proBNP:N-terminal prohormone of brain natriuretic peptide(脳性利尿ペプチドのN末端ペプチド)

NT-proBNPは心筋の進展圧上昇により心室から分泌されます。

なので、心不全の診断や重症度の目安として測定されます。

NT-proBNPの採血の特徴は以下の通りです。

  • 血清採血なので安定性が高い
  • 専用スピッツを用意しなくていい

これらの特徴から、採血から測定までの時間が長くなりがちな在宅医療や診療所での採血にも適しています。

また専用スピッツじゃなくてもいいことから、採血時の負担が軽減します。

なので、BNPに変わる心機能マーカーとしても評価されています。

NT-proBNPはBNPよりも、心不全の予知に優れていると言われています。

また、循環器診療の領域においてNT-proBNPはBNPより、鋭敏に心機能障害を認識でき、スクリーニングに汎用されつつあります。

BNPとNT-proBNPは、生成は同じBNP遺伝子に由来します。(上図)

その後、生理的に非活性のNT-proBNPと生理活性を有するBNPに分断されます。

NT-proBNPは心負荷の増大により、前駆体であるproBNPから産生され、BNPと共に血中に放出されます。

BNPとNT-proBNPの代謝は共に腎機能の影響を受けます。

BNPよりも、腎臓のみで代謝されるNT-proBNPの方がより大きく影響されます。

NT-proBNPはBNPと違い、代謝経路が腎臓のみであることから、より腎機能低下による影響が受けやすいといわれています。

つまり糸球体濾過血の低下と共に、NT-proBNPは上昇するわけです。

なので心腎関連マーカーとしても注目されています。

【BNPは以下の記事で解説しています】

透析とNT-proBNP

透析患者の多くは、体液量増加に伴う容量負荷や高血圧により、これらを代償するために心肥大を呈しています。

循環血液量変動による血行動態の変化、代謝性アシドーシス、高K血症などにより不整脈が起こりやすいです。

さらに虚血性心疾患の発生頻度は一般人の約10倍ともいわれています。

透析患者においても健常人と同様に、NT-proBNPが高値ほど心機能が悪く心負荷を反映しています。

透析患者の死因第1位が心不全なことから、NT-proBNPは有用な検査項目と言えます。

NT-proBNPの測定値と透析患者における心血管合併症の診断指標

透析患者のNT-proBNPのカットオフ値は6,000という見方もあります※1 (上図)

また以下のように記載があります。

  • 6ヶ月でNT-proBNP値が2倍以上の上昇群はハイリスクであり、心疾患の要精査ないし加療を模索する必要がある
  • NT-proBNPの変化は全死亡、複合心血管イベント、突然死と関連する
  • NT-proBNP値が2倍以上の上昇群は、変化なし群に比べ倍のリスクがある
  • 心疾患がある方はNT-proBNPを毎月測定し、心疾患が無い方は毎季節測定してモニタリングすることが早期発見に有用である

また別の文献でも、NT-proBNPはCVD(心血管疾患)による入院予測にも有用であり、そのカットオフ値は透析前6,000 pg/mlが妥当と思われた※2

との報告があります。

別の文献では、NT-proBNPと心電図所見との関連から、NT-proBNP基準値は8,000(pg/ml)が適当とも思われる※3

との報告もあります。

透析患者のBNPおよびNT-proBNP濃度は共に一般人よりも高値です。

しかも、BNPに対するNT-proBNPの比率は高くでます。

しかし、透析患者においてもBNPとNT-proBNPの相関性は良好です。

両者ともに左室心筋重量、左室駆出率と正相関を認めるなど、左室負荷との関連性が報告されています。

心不全予後の予測としては、透析前でも後でもどちらでもいい報告があります。

透析前の測定として報告されている例が多いです。

透析患者においてNT-proBNPが異常高値をきたす原因としては、以下のようなことが挙げられます。

  • 体内のクリアランス低下
  • 非生理的な前負荷の恒常的暴露
  • 電解質や代謝異常
  • 微小血流障害
  • 左室拡張障害

などの原因が推測されています。

いずれの因子が優位であるのかは議論続いてるそうです。

※1 CKD(慢性腎臓病)患者でのNT-proBNPの有用性 -透析患者の予後改善のために-

※2 NT-proBNPは血液透析患者の心血管病による入院予測に有用である 日腎会誌 2011;53(4):633-641

※3 血液透析患者のNT-proBNP濃度測定の有用性 -心電図所見からの検討- 透析会誌43(8):633~640,2010

BNPとの比較

NT-proBNPとBNPの比較は以下にまとめました。

  • NT-proBNPの方が採血時の負担が軽減する
  • NT-proBNPの方が心不全の予知に優れている
  • NT-proBNPの方がより腎機能低下による影響が受けやすいといわれている

【関連動画】

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