はじめに
ALPは肝臓の検査値の指標として考えられることが多いですが、透析患者にとっては一概にそうではありません。
透析患者では、肝臓もそうですが、骨代謝も視野に入れる必要があります。
なので、ALPは「P」「Ca」「PTH」と、一緒に総合的に見ることが大事です。
ALPってなに?

- 肝臓や腎臓・腸粘膜・骨などで作られる酵素
- 肝臓で処理されて胆汁中に流れ出る
- 基準値:50~350IU/ml(透析患者においては400くらいまでは、大目に見て大丈夫です)
ALPは肝臓で作られ、胆汁の成分として胆管を通ります。
そして胆のうに貯蔵された後、十二指腸に排出されます。
高値:肝内胆汁うっ血・閉塞性黄疸・転移性肝がんなど、主に肝臓のマーカーだと考えられています。
しかし、ALP値は、著しい肝胆道障害の合併がない条件で、骨代謝マーカーとして機能します。
とガイドラインにも記載があります。
ALPアイソザイムってなに?
ALPが著しく高くなった場合、ALPアイソザイムを測定します。
アイソザイム(Isozyme)とは、酵素としての活性がほぼ同じでありながら、タンパク質分子としては別種である(アミノ酸配列が異なる)ような酵素をいいます。
ALPアイソザイムに以下のような1~6の型があります。
- ALP1:閉塞性黄疸・限局性肝障害
- ALP2:各種肝疾患・胆道系疾患
- ALP3:骨の病気・副甲状腺機能亢進症(二次性)
- ALP4:悪性腫瘍の一部
- ALP5:肝硬変・慢性肝炎
- ALP6:潰瘍性大腸炎
透析患者では、ALP3の「骨の病気・副甲状腺機能亢進症」に該当して高値を示すことが多いです。
GOT・GPT・γGTPなどの酵素が肝臓のマーカーに使用されていますが、これらに異常がなく、ALPが高値の場合は骨由来を考えます。
骨代謝が亢進(骨粗鬆症が進行)している場合はALPは高値になります。
透析患者は、活性型ビタミンDの欠乏による、低カルシウム血症のため骨代謝が亢進します。
また、ALPが高値の場合はPTHも高値の場合が多いです。
ALPとCKD-MBDの関係性
ALPとCKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)には深い関係性があります。
ALPとCKD-MBDに関してわかっていることを下記にまとめました。
(参考:JRDRハイライト(4)血液透析患者における血清ALP値と全死亡、心血管系疾患による死亡、大腿骨頸部骨折新規発症の関連)
- ALP値はP値・Ca値・PTH値と同様に、「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)」の管理目標として、そのモニタリングが推奨されています。
- さらにALPは、血管壁にある石灰化抑制因子であるピロリン酸を、加水分解することによって、血管石灰化を進行させます。
- ALP値高値で、全死亡や「心血管系疾患」による死亡リスクが高いことが証明された。
- ALP高値での大腿骨頸部骨折新規発症が高い透析患者は、QOLを著しく障害し、生命予後に大きく影響します。
1. の背景として、ALP値がCKD-MBD管理の※“surrogate marker”であり、骨・ミネラル代謝異常が骨折や血管石灰化のリスクを高めるからです。
※surrogate marker(サロゲートマーカー)とは、医学、薬学研究において診断・治療行為、薬効等の最終評価との関連を科学的に証明できるマーカーのことを指します。
【関連記事はコチラ】
コメント