はじめに
透析患者では、透析中の下肢つりに悩まされる方が多くいらっしゃいます。
そこでよく処方されるのが芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)です。
今回は芍薬甘草湯について理解を深め、注意点なども解説していきます。
芍薬甘草湯ってなに?
芍薬甘草湯とは芍薬と甘草から作られている漢方です。
透析患者さんには主に下肢つりが起こった時や、予防の時に内服されます。
- 効果発現時間:5分
- 効果持続時間:4~6時間
漢方の中でも発現時間がかなり速い特徴があります。
注意点は連用に注意です。
なぜかというと、偽アルドステロン症になる可能性があるからです。
偽アルドステロン症とは、副腎ホルモン「アルドステロン」が過剰に分泌されていないのに、過剰分泌された時と同じ症状を起こしてしまう病態です
偽アルドステロン症になると高血圧や浮腫み、低カリウムになってしまいます。
偽アルドステロン症は、後で詳しく解説しています。
【透析中の下肢つりはコチラで詳しく解説しています】
作用機序
芍薬に含まれるペオニフロリンはCaイオンの細胞内流入を抑制します。
甘草に含まれるグリチルリチン酸は最終的にKイオンの流出を促進する。
2つのブレンド効果により、神経筋シナプスのアセチルコリン(ACh)受容体に作用し、筋弛緩作用を発現することが解明されています。
偽アルドステロン症ってなに?
先ほどにも説明しましたが…
偽アルドステロン症とは、副腎ホルモン「アルドステロン」が過剰に分泌されていないのに、過剰分泌された時と同じ症状を起こしてしまう病態です
診断時の症状は以下のような報告があります。
- 筋力低下:60%
- 高血圧:35%
- 全身倦怠感:20%
- 浮腫:15%
そもそもアルドステロンってなにか?以下で説明しています。
- 副腎皮質から分泌されるホルモン
- ナトリウムイオンの貯留とカリウムイオンの排出を促進する作用をもつ
- 体液中の塩分の調節、血圧の調節などを行う
では次に偽アルドステロン症の機序についても学習していきましょう
偽アルドステロン症 機序
まずは通常の状態を知っておきましょう。
血液の中には少量のアルドステロンと大量のコルチゾールが存在しています。
どちらも腎臓にあるアルドステロン受容体1に結合できますが、コルチゾールは11β-HSDという酵素によってコルチゾンに分解されます。
よってアルドステロン受容体1には結合できなくなります。
しかし甘草(グリチルリチン酸)とその誘導体であるカルベノキソロンには、コルチゾールをコルチゾンに分解する酵素(11β-HSD)を阻害する作用があります。
大量の甘草(グリチルリチン酸)を摂取すると、コルチゾールからコルチゾンへの分解が阻害され、分解されない大量のコルチゾールがアルドステロン受容体1に結合してしまいます。
そのためアルドステロンの濃度は変わらないにも関わらず、アルドステロン受容体1を刺激する作用が強くなります。
そして、体内にNaや水をため込み、血圧を上昇させたり、カリウムの排泄を促してしまう、というわけです。
【注意】甘草
芍薬甘草湯に含まれている甘草を摂取しすぎると、偽アルドステロン症になってしまいます
「摂取しすぎる」ってどのくらいの量?って感じですよね。
1日3包を飲み続けている人は要注意です!
漢方の薬7割に甘草が含まれているので、名前に甘草と無くても、飲み過ぎには注意しましょう。
芍薬甘草湯は1包2.5gです。
この中に2gの甘草が含まれています。
甘草の摂取量が6gを超えると、偽アルドステロン症関連症状の頻度が11.1%と報告があります。
なので1日3回の服用では、偽アルドステロン症の可能性がある。(芍薬甘草湯1包に2.0gの甘草が含まれているから)
ちなみに甘草の摂取量が1g(つまり1包の半分)でも、100人に1人は症状が出ると報告されています
診断時の症状は以下の通りです。
- 筋力低下:60%
- 高血圧:35%
- 全身倦怠感:20%
- 浮腫:15%
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