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【新知識】透析中の下肢つりのメカニズム《カルシウムと下肢つりの関係性》

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合併症
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はじめに

「透析中の下肢つり」について、そのメカニズムが2019年の医学会雑誌に掲載されたのでまとめました。

医学会雑誌では血圧低下で循環障害になり下肢つりになるのではないとはっきり提言されました。

血液循環の悪化ではないことがわかりました。

透析中では除水量が多いときによく下肢つりがみられます。

下肢つりが起こる場合はカルシウムをみろと、私は先輩から教わり、カルシウムが低いとなりやすいというのは知っていました。

しかし、なぜカルシウムが低いと下肢つりにつながるのかが理解できませんでした。

今回その関係性が明らかになりました。

参考文献:日本透析医学会雑誌 透析会誌 52(2):83~91,2019 透析とカルニチン

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下肢つりのメカニズム

透析中の下肢つりは、ずばりアルカローシスが原因です。

アルカローシスになると、Caイオンとアルブミンの結合が高まり、イオン化Ca濃度が減少します。

するとCa濃度を一定に保つために、筋肉細胞の筋小胞体からCaイオンが放出されます。

この時に筋攣縮れんしゅくが起こり、下肢が痙攣けいれんを起こします。

ではなぜ、アルカローシスを起こすのか?次に解説します。

透析中はなぜアルカローシスになるのか?

アルカローシスになると下肢痙攣が起きるのは分かったが、透析患者の体内pHはアシドーシス状態にあるのに、透析中にアルカローシスになるのはなぜか?

原因は2つあります。

  1. 除水による濃縮性アルカローシス(体液量減少性アルカローシス)
  2. 透析液によるアシドーシスの是正

一つずつ解説していきます!

①除水による濃縮性アルカローシス(体液量減少性アルカローシス)

除水をすると細胞外液(ECF)量が減少します。

するとHCO3-が相対的に増加します。

するとすると、pHはアルカローシス」に傾きます。(上図)

どういうことかというと…細胞外液内のHCO3-が変化しなくても除水して、細胞外液量が減少することによってHCO3-の濃度は増加(相対的増加)していることになります。

これが除水(濃縮)によって生じる濃縮性アルカローシスです。

これによってアシドーシスからアルカローシスに傾きます。

②透析液によるアシドーシスの是正

透析患者はほとんどの人がアシドーシスの状態にあるので、透析液のアルカリ化剤(重曹)によってアシドーシスの是正をしています。

「除水による濃縮性アルカローシス」+「アルカリ化剤(重曹)」のダブル効果でより一層アルカローシスに傾きます。

この2つの効果で体内が「アルカローシス」に傾くことで、イオン化Ca濃度が減り、下肢つりに繋がります。

なので、「血圧が下がって血液循環の悪化で下肢つりが起こる」のではないです。

正しくは、「過度な除水で体内が濃縮して、アルカローシスになって下肢つりが起こる」です。

過度な除水をかけた時はだいたい血圧が下がるので、血圧が下がる=血液循環が悪化する=下肢つり と間違った考えが浸透したのだと思います。

血圧が下がることと、下肢つりに直接的な要因はないみたいです。

下肢つりの予防

下肢つりが起こる患者さんは除水量が多い患者さんが多いです。

また目標体重以下に除水をした時も同じように、過度の濃縮性アルカローシスを生じるため下肢つりを起こしやすくなります。

下肢つりを起こさないようにするためにも、過度な除水は禁物です。

また、下肢つりが起こる患者さんはCa値を見てください。(ここでいうCa値は補正Caのことです。)

前採血のCa値(補正Ca値)が低い(基準値:8.4~10.0)と下肢つりが起こりやすくなります。

先ほど書いたようにアルカローシスになると、Caイオンとアルブミンの結合が高まり、イオン化Ca濃度が減少するので下肢つりが起きやすくなります。

Ca値が8.4以上あると、イオン化Ca濃度が減少して、筋肉細胞の筋小胞体からCaイオンが放出されても、下肢けいれんが起きにくくなります。

なのでカルシム製剤の投与で、Ca値を上げてみることを検討してみてください。

また、その患者さんだけ個人用コンソールでCa値の高い透析液使って透析するとかしても、予防することができます。

実際にそれをして、下肢つりが起こらなくなった例を見ているので有効的だと思います。

でも注意も必要です!カルシウム製剤を投与するときはP(リン)の値も見てください。

Ca値×P値が55以上になると石灰化を助長するので注意してください。

下肢つりの対処

下肢つりが起きた場合は、一番即効性があるのはは補液です。

濃縮性アルカローシスの反対は希釈性アシドーシスです。

細胞外液量を急速に増加させることができるので、補液が一番即効性があります。

施設によって対処の方法は違うのでベストな処置はなにかっていうのは難しいですが…。

その他の対処法はコチラです。

  • 除水を0にする
  • 下肢つり部の筋肉を伸ばしてほぐす
  • ホットパックなどで温める
  • 足をさげる(足が上がっているとつりやすくなります)

【下肢つりの対処はコチラ】

【他の合併症はコチラ】

コメント

  1. トーマス より:

    はじめまして。大変貴重な情報ありがとうございます。今までの疑問が解決してスッキリしました。

    引きつりは、除水量は多いときに発生するので、脱水が原因と思っていました。ただ、除水がすくなくても発生する人がいて、確かにその方はカルシウムが低かったです。

    一つ疑問に思ったのは、濃縮性アルカローシスについてです。濃縮されると、重炭酸イオン濃度が上がるのはわかります。ただし、濃縮されると水素イオンも濃縮されるので相対的には、phは変化しないのではないでしょうか?

    • Hiroto Mori より:

      ご覧いただきありがとうございます。ブログを立ち上げて初めてのコメントなのでなんか嬉しいです!笑
      「濃縮性アルカローシス」は、医学会雑誌の文言をそのまま使用したので、憶測にはなるんですが、透析中は水素イオンと重炭酸イオンを反応させて重炭酸ができます。重炭酸は水と二酸化炭素に分かれてH+は透析で除水しています。なので、ここでの濃縮性アルカローシスは、たぶんH+のことは考えていないと思います。
      たぶんですが、、、。もしわかったら教えていただきたいです。

      • トーマス より:

        返信ありがとうございます。

        重炭酸イオンと水素イオンが共に濃縮されて、重炭酸が作られる(排出される)スピードがアップするということですかね。

        • Hiroto Mori より:

          色々調べてはみたんですけども、ちょっとわかりませんでした💦
          あいまいな回答しかできず申し訳ありません。
          今後ともブログの方をよろしくお願いしますm(__)m

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