はじめに
透析中には様々な合併症が引き起こされますが、その中に腹痛に悩まされることもあります。
私たちは患者さんの腹痛で何をしてあげられるのか。
透析中の腹痛は何が原因か、対策はあるのかまとめています。
透析中の腹痛はなぜ起こる?
一番に考えられる原因は腸管虚血です
DWがきつすぎたり、除水量が多いと腸管血液量が少なくなり、腸管にいく血液が不足します。
これを腸管虚血といいます。
これは透析の後半に起こることがほとんどです。(透析の後半に循環血液量が少なくなるからです)
また透析中にご飯を食べる人は、それが原因の可能性もあります。
ご飯を食べると食べ物を消化する方に血液が回るので、腸管の血液が不足します。
なので腸管虚血になりやすくなります。
その他には
- 便秘
- 胃潰瘍や胃腸炎
- その他消化器病変
などがあります。
これらでは透析中以外にも腹痛が生じている可能性があります。
また、その他消化器病変とは以下のような病変です。
- 胆のう(胆石症、胆のう炎)
- 膵臓(急性膵炎、慢性膵炎)
- 肝臓(慢性肝炎、肝硬変)
- 胃がん、大腸がん
胃粘膜が傷つきやすい原因
さらに透析患者では、胃粘膜が傷つきやすくなっています。
胃粘膜の損傷から腹痛をきたすことがあります。
胃粘膜が傷つきやすい原因を以下に示します。
- ストレスを受けやすい(食事制限、行動制限など)
- 胃液の分泌異常・胃粘膜バリアの低下・胃粘膜の血流低下
- 薬の多用により胃粘膜が傷ついている
これらが、胃潰瘍や胃腸炎の原因になります。
またこれら原因から逆流性食道炎になったりもします。
これらが悪化する前に、定期的な検査が必要です。
消化管出血
胃や十二指腸の、炎症や潰瘍は出血することがあります。
これが消化管出血につながります。
また、透析中に抗凝固剤を使用していることによって、消化管出血を助長させます。
多量出血
↓
高度貧血
↓
命に関わる状態になることも
透析患者の死亡原因の1.2%が消化管出血というデータもあります。
だいたい100人に1人です
参考:日本透析医学会 わが国の慢性透析療法の現況(2018年12月31日現在)
対処法
- 除水をゼロにする
- 補液をする
透析中の腹痛は腸管虚血からくるのがほとんどなので、腸管に水分を戻してやる必要があります。
なので、除水をゼロにしたり、補液をしたりします。
除水をゼロにすることで、プラズマリフィリングを促進し腸管に水分が戻ってきやすくします。
また、DWが適正となるように見直しをして、DWを上げることができそうなら上げた方がいいでしょう。
【DWの指標はコチラで詳しく解説しています】
そして除水が過度にならないように、透析間の体重増加を適正範囲にする努力が必要です。(中1日3%、中2日5%)
その他の対処は、
- 腹部を温める
- 腹部をマッサージする
腹部を冷やすと血流が悪くなるので、冷やさないようにします。
腹部をマッサージするのは、血流を促すためです。
透析中の合併症を少なくすることで、患者さんの透析へのストレスも少なくなります。
【透析患者の合併症一覧はコチラ!】
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