血液透析患者の発熱は、腎機能低下による内部環境の変化や、透析医療の合併症などにより特有の病態を呈しています。
そのため発熱の原因を特定するのが困難です。
発熱はバイタルサインの中でも疾患特異性が低く、その鑑別疾患は多岐にわたります。
透析患者における発熱の原因は「感染症」「悪性腫瘍」「膠原病」などや、ダイアライザが体に合っていないことや、抗凝固薬、薬剤の影響もあります。
発熱が透析後に限局してみられる場合は、透析操作に関連するもの(透析膜や薬剤)の可能性が考えられます。
日本では透析液に少量の酢酸を含んでいます。
低濃度の酢酸によって血圧低下や、全身倦怠感、頭痛などの「酢酸不耐症」と呼ばれる症状を引き起こすこともあります。
透析液に含まれる少量の酢酸が原因で発熱を生じたと考えられた報告は少数です。
発熱の原因
透析患者の発熱の原因は上記のように様々あります。
感染症は透析患者において重要な問題であり、2013年の日本透析医学会の調査によると、透析患者の死因の第1位が感染です。
透析患者では特有の透析膜によるアレルギーや、透析液によるアレルギーがあります。
これらは発熱の原因の約5~6%といわれています。
なぜ感染にかかりやすい?
腎不全状態では顆粒球、リンパ球の機能低下を認め、免疫が低下しており易感染状態にあります。
また、透析患者は次のような体内環境にあります
✅皮膚の萎縮
✅汗腺の萎縮
✅粘膜における気道の線毛運動の低下
✅胃酸分泌の低下
✅消化管の潰瘍形成などの物理的障壁の異常
これらの異常があるので、シャントやカテーテル留置が容易に細菌の侵入口になりやすい。
呼吸器感染症
透析患者では体液バランスの変動により胸部X線での湿潤影の発見が遅れる可能性があります。
またうっ血性心不全の治療的介入の遅れで肺炎合併のリスクが上昇します。
このことから常に呼吸器感染症の可能性を考える必要があります。
結核
透析患者の結核頻度は、非透析患者の約10倍です。
特に透析導入6ヶ月後に多いことが特徴です。
微熱やしつこい咳が続いたり、肺炎治療に反応しない場合には、結核を視野に入れます。
皮膚軟部組織感染症
【透析患者で皮膚軟部組織感染症が多い理由】
①糖尿病による末梢神経障害、動脈硬化による末梢循環不全
②穿刺に伴う皮膚バリア障害からのバスキュラーアクセス感染
①では血流不全のためグラム陽性球菌、グラム陰性桿菌、嫌気性菌
②ではMRSAやMRSEなどの耐性菌
が起因菌になることが多いです。
尿路感染症
透析患者では乏尿、無尿ゆえに尿路感染症が多く、特に無尿での膀胱炎では下腹部不快感・悪臭の尿道分泌物などが感染症状となります。
悪性腫瘍
悪性腫瘍による発熱は、腫瘍の種類や発生部位によっても異なりますが、一般的に長時間持続する微熱が多く、たまに38℃以上になることもあります。
病期の進行により発熱の頻度は高くなり、肝転移また癌性腹膜炎や胸膜炎を合併すると発熱をみることが多いです
透析アミロイドーシス
長期透析患者に合併する疾患で骨や軟骨など骨関節組織にアミロイドが沈着する病気です。
透析アミロイドーシスではアミロイド沈着局所においてβ2-MGにマクロファージが遊走します。
それはレセプターを介して活性化され、サイトカインを放出して、炎症反応が進展すると提唱されています。
長期透析患者の透析アミロイドーシスによる発熱も鑑別として考える必要があります。
【関連記事はコチラ!】
【透析と感染症はコチラ】
コメント