毎週月曜更新!次回のブログ更新は9/16(月)内容:なぜ透析中に低血圧が起こる?

酢酸不耐症ってなに?《原因・症状・症例報告》

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合併症
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はじめに

透析液には少量の酢酸が含有しています。

この酢酸が代謝しきれずに、血中の酢酸濃度が高くなることによって酢酸不耐症を生じる患者さんがまれにいます。

今回はこの酢酸不耐症はなにか?

どういった患者さんになりやすいのか?というのをご紹介します。

  • 「酢酸不耐症」をコチラでもっとわかりやすく解説してますよ。
6分で解説

酢酸不耐症ってなに?

酢酸不耐症とは、透析液に含まれている酢酸によって、血圧低下や発熱、嘔気などの症状があらわれることです

透析液には少量の酢酸が入っています。

酢酸は体内で代謝されるのでほとんどの患者には影響ありません。

しかし高齢者など、酢酸の代謝が遅い人は血中の酢酸濃度が上昇して血圧低下などを起こす場合があります

これを、酢酸不耐症といいます。

原因

  1. 酢酸そのものによる影響
  2. 肝機能の低下
  3. 高齢者や糖尿病による代謝機能の低下、筋肉の低下
  4. 炎症性サイトカインの誘導

1の酢酸そのものによる影響では、酢酸は体内に入ると血管拡張作用や心機能抑制作用があるとされています。

血圧=心拍出量(一回拍出量 × 心拍数)× 末梢血管抵抗

なので血管拡張作用によって末梢血管抵抗が下がれば、血圧が下がります。

さらに、心機能抑制作用によって心拍出量が下がれば、血圧が下がります。

2の肝機能の低下では、酢酸は肝臓で代謝されます。

なので肝機能が低下すると、酢酸が代謝できずに酢酸不耐症を引き起こしてしまいます。

3の高齢者や糖尿病による代謝機能の低下、筋肉の低下では、体内の酢酸が代謝できなくなるので酢酸不耐症を呈します。

酢酸の代謝スピードが遅いと、血圧が下がってしまいます。

また酢酸は一部筋肉でも代謝されます。

なので筋肉が低下している高齢者などは、酢酸の代謝が追い付かなくなります。

酢酸は一酸化窒素NO)を産生します。

これは血中に増加した酢酸を代謝しようと、産生が促進されます。

つまり一酸化窒素の産生は、生体反応のひとつです。

この反応が破綻すると、代謝系全体に影響が及びます。

また、糖尿病患者では一酸化窒素産生が障害されるということもあり、生体反応が効かなくなることもあります。

4の炎症性サイトカインの誘導では、酢酸は炎症性サイトカインを誘導します。

炎症物質は血管の透過性を亢進してしまいます。

すると循環血液量が減少して、血圧低下につながります。

酢酸不耐症の症状

  • 透析中の血圧低下
  • 頭痛
  • 嘔気、嘔吐などの不均衡症候群
  • 倦怠感 など

なぜ透析液に酢酸が入っている?

透析液の酢酸は以下のような理由で入っています。

  • 透析液のpHを調整するため
  • 殺菌作用により菌の繁殖を防ぐため
  • CaやMgが沈殿しないようにするため

酢酸は透析液のpHを調整する緩衝材として、氷酢酸という形で透析剤に含まれています。

また透析液を貯留する際に、細菌等が繁殖しないようにする役割もあります。

だいたい8~10mEq/L入っています。

酢酸と生体適合性

生体不適合性(炎症)と透析関連合併症

透析患者ではウレミックトキシンが蓄積していく過程で、これら蓄積物が単球好中球を刺激します。

透析液については、酢酸が単球や好中球を刺激しているのではないかと考えられています。

酢酸は単球や好中球を刺激して、フリーラジカルを増加させます。

そしてサイトカインの増加を促します。

これらの炎症によって、動脈硬化や栄養障害なども引き起こすのではないかと考えられています。

ウレミックトキシンとは尿毒症毒素のことです。

未知のものも含め、尿毒症症状を起こす物質群の総称です。

ウレミックトキシンは慢性腎臓病(CKD)の進行に伴い血中濃度が増加します。

その血中濃度増加と尿毒症症状の発症・進展が関連する分子を総称するものということです。

酢酸ではMIA症候群を助長させてしまうとも言われています。

【MIA症候群の記事はコチラです】

参考:透析液の生体適合性~精製地下水からの透析液清浄化と無酢酸透析液による効果~

酢酸不耐症の症例報告

酢酸不耐症の症例報告をご紹介させていただきます。

透析会誌47(11):697~701, 2014 酢酸不耐症によると思われる透析後の発熱を認めた2型糖尿病腎不全の1例

で報告されており、経緯等を一部抜粋して記載させていただきます。

こちらの報告は、透析後に発熱が認められ、透析液を無酢酸透析液に変更したら発熱が軽快した、という報告です

経緯を以下に示します。

  • 週3回のHDを行っていたが、徐々に透析後の倦怠感と悪寒、37℃台の発熱を認めるようになった
  • 白血球:9,090/μL、CRP:0.45mg/dl と軽度の上昇
  • 自覚症状:透析半ばから出現する全身倦怠感及び悪寒のみ
  • シャント創部や感染徴候は無し

対応を以下に示します。(時系列に沿ってます)

  • 血液透析導入後に発熱をきたしたことから透析関連機器あるいは、透析液による発熱の可能性を考えた
  • 透析膜を変更(FB110E:CTA膜 → APS13SA:PS膜)
  • 抗凝固剤を変更(ヘパリン → メシル酸ナファモスタット)
  • 透析直前に透析回路内の大量プライミング

これら対応をしたが改善しませんでした。

そこで透析液を変更しました。(AK-ソリタDL → カーボスター)

変更したところ発熱はみられなくなったそうです。

これらの経緯から、透析液中に少量含まれる酢酸が原因の、酢酸不耐症が最も考えられた。

ということです。

酢酸不耐症は糖尿病患者に多いと言われています。

今回の症例報告でも糖尿病の患者なので、やっぱりそうなんだなと思いました。

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