はじめに
透析患者を悩ます合併症として、透析アミロイドーシスがあります。
透析アミロイドーシスは、透析では代表的な合併症です。
今回は透析アミロイドーシスの基礎知識を解説します。
透析アミロイドーシスってなに?
透析アミロイドーシスとは、アミロイドという物質が全身(骨や関節)に沈着し、痛みや運動制限などの障害を起こす病気です。
(アミロイドはのちに解説)
透析アミロイドーシスは、長期透析患者さんにとって、治療が難しい合併症の一つです。
近年は、透析療法の普及と技術の進歩で、発症頻度は減少傾向にあります。
しかし長期透析患者さんでは、依然として発症が多いといわれています。
そして、アミロイドは手術しても取り除くことが困難です。
アミロイドーシスは非常に多くの分類があり、その中の一つが透析アミロイドーシスです。
アミロイドーシスは以下のような分類(種類)があります。
- ALアミロイドーシス
- AAアミロイドーシス
- 家族性アミロイドニューロパチー(FAP)
- 透析アミロイドーシス
- 老人性全身性アミロイドーシス(SSA)
- 脳アミロイドーシス などなど
上記以外にも、もっともっと多くあります。
そしてそれぞれ前駆蛋白(原因となるたんぱく質のこと)も異なります。
原因
透析アミロイドーシスはβ2-MGが血液中に溜まることが原因です。
透析患者さんは腎機能が低下しているので、β2-MGを体外に排泄することができません。
なので、血中に溜まってしまいます。
血中に溜まったβ2-MGは、やがて骨や関節に沈着します。
そして、水にも溶けず、酸にもアルカリにも溶けないアミロイドになります。
アミロイドの原因物質がβ2-MGということです。
アミロイドは、「水」にも「酸」にも「アルカリ」にも溶けないという特徴があります。
アミロイドが原因で、骨や関節の痛み、運動障害を引き起こします。
このようになった状態をアミロイドーシスと呼びます。
アミロイドーシスになる流れを以下に示します。
β2-MGが血中に溜まる
↓
骨や関節に沈着
↓
アミロイドになる
↓
骨や関節の痛み、運動障害
↓
アミロイドーシス発症
【β2-MGの詳しい記事はコチラです】
臨床症状
臨床症状は主要症状と副症状に分かれます(アミロイドーシス診療ガイドライン2010 参照)
- 主要症状
- ①多関節症
- ②手根管症候群
- ③弾撥指(ばね指)
- ④透析脊椎症
- ⑤骨嚢胞像
- 副症状
- ⑥骨折
- ⑦虚血性腸炎
- ⑧その他
主に①~③が多いです。
発症
アミロイドの蓄積は透析開始後、比較的早期から認められます。
しかし発症までには長時間(およそ10年)かかります。
透析アミロイド症の症状は透析開始から10年で患者の2〜3割、20年を超えると半数以上に現れるとされています。
つまり長期透析患者の増加とともに、透析アミロイドーシスによる合併症が問題になってきます。
透析によるアミロイドの沈着は、時間の経過と共に蓄積します。
症状が悪化することはあっても、自然に軽減することはありません。
なので痛みを我慢せずに、早めの治療をすることが大事です。
沈着部位と症状
透析歴が10年を超える長期透析患者では、手根管、脊柱近傍、肩、股関節など比較的動きが大きい部位を中心としてアミロイドが蓄積し、周囲の痛みやしびれを引き起こします。
アミロイドの沈着部位によって症状は異なってきます。
- 神経(末梢神経障害:足の先から始まるしびれ)
- 自律神経(便通異常や立ちくらみ)
- 心臓(心不全:足のむくみや動いた際の息切れ、不整脈:動悸)
- 消化管(慢性下痢や吸収不良)
- 腎臓(ネフローゼ症候群:足のむくみや尿の泡立ち)
- 手首の関節(手根管症候群:手のしびれ)
好発部位は下記の通りです。
- 手のひら
- 指
- 手の甲
- 肘
- 肩
そして沈着した部位によって病名が違ってきます。
- 手のひら:手根管症候群
- 指:ばね指
- 手の甲:手関節症
- 肘:肘部管症候群
- 肩:肩関節症
種類
透析アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスの一種です。
アミロイドが沈着する部位によって分類されます。
上記にも記載しましたが、透析アミロイドーシスは沈着する部位によって種類が違ってきます。
透析アミロイドーシスは以下の5つが多いです。
- 手根管症候群
- ばね指
- 肩関節症
- 肘部管症候群
- 手関節症
このうち手根管症候群は、透析歴20年の症例に50%に認められます。
5種類の特徴はコチラで解説しています。
【他の合併症はコチラ】
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