【学習内容🖋】
✅Kt/V(透析効率)を増やすために何をすればいいかわかる
✅「QBが多いと心負荷が生じる!?」そんな迷信を解決します
Kt/V(透析効率)を増やすために何をすればいい?

①血流量(QB)の増加
②透析時間の延長
③透析液流量(QD)の増加
④ダイアライザ膜面積の増大
①血流量(QB)の増加
QBを増加させると効率も増加します。
QBを増加させるということは、Kt/Vでいう「K」の部分が増加するということなので、透析効率も増加します。
【物質除去はQB300以上で頭打ちになります】
小分子量物質の除去は血流量が増えれば除去量も直線的に増加します。
※小分子量物質➡尿素(分子量60)・クレアチニン(113)・各種アミノ酸など
しかし、QB300以上で頭打ちになり、除去量は増えません。
ミオグロビン(分子量17,000)などの低分子量蛋白は、分子量が大きくなるにつれて、除去量はQBを増やしても頭打ちになります。
ただし、β2-MG(分子量11,800)レベルの分子量までは、拡散で除去量が増えることがわかっています。
これは、ダイアライザが進化し、今では高性能ダイアライザが主流になっているからです。
現在の市場の90%が高性能ダイアライザで占めています。
QBは多いほど長生きすることがわかっています。
下図のデータを見てわかるようにQB240以上で死亡危険度は最も低い値となりました。

高血流で長生きします。(海外ではQB300以上が当たり前です)
一方、日本はQBが少ないという現状があります(下図参照)

QB240以上が全体の10.5%しかいません。
日本の透析にQBが少ないのには理由があります。
【なぜ日本の透析はQBが少ない?】
日本は内シャントが多く、シャント血流量が少ない人種だからです。
日本のVA(バスキュラーアクセス)では自己血管内シャント(AVF)が全体の9割を占めています。
日本人は海外の人と比べてシャント血流量が少ないのでQBが少ない傾向にあります。
【迷信①】QBを多くすると血圧が下がる!?
「QBを多くすると血圧は下がるのか?」
これはおそらく、昔の除水のかけ方がそのまま伝わっているのかなと思いました。
昔はQBアップ➡除水過多になる➡血圧下がる
という考えでした
【昔の除水のかけ方】
昔はダイアライザの血液側から圧をかけることによって、除水をコントロールしていました。
(患者さんによってダイアライザ内の圧力が違うので1人1人計算していた)
そのため、QBを上げると除水量が過度になり容易にQBを上げることができませんでした。
【今の除水のかけ方】
現在は除水ポンプで制御して機械側から陰圧をかけています。
そのため、除水がQBによる影響を受けないので、QBアップが容易になりました。
というわけで、QBアップによって除水過多にはならないというのは分かりました。
しかし、例外もあります。
それは、栄養状態の悪い患者さん(低アルブミン血症)にQBを過度に回すと、血圧は下がってしまいます。
なぜかというと、血管の浸透圧が急激に下がるからです。
傾向では透析開始1時間目に下がる人が多い印象です。
栄養状態が良い、または普通程度の患者さんでQBによって血圧が下がるというのは、あまりありません。
【迷信②】QBが多いと心負荷が生じる!?
いやーこれも迷信ですね。
心負荷は生じません。
シャント肢に流れる血流は500~1000ml/min程度です
もしQBを300で回したとすると、QBを300取り出して戻しているだけで、シャント肢にはそれ以上の血液が流れているので、心負荷は生じません。
②透析時間の延長
透析時間を延長すると効率も増加します。
透析時間は Kt/V の「t」の部分にあたるので、時間が延長すると、Kt/Vもよくなるということです。
日本の透析時間の標準は4時間なので、5時間、6時間と長くすると、効率もよくなるし、除水もゆっくりできます。
体への負荷・生命予後を考えると、時間延長というのは非常にいい方法です。
長生きをしたいのなら、6時間透析が一番いいです。
しかし、ここにも問題点があります。
【長時間透析の問題点】
それは拘束時間が長くなるということです。
4時間でも同じ体制で、シャント肢は曲げることができないというのは本当にしんどいことだと思います。
私は1時間の点滴ですら辛かったです( ;∀;)
現場のスタッフならわかると思いますが、患者さんに「透析時間を増やしませんか?」という時が一番心苦しいというか、気を遣うというか、、、。
患者さんからしたら、透析時間の延長=拘束時間の延長です。
私は、効率を良くしたいときは透析時間の延長は一番最後の選択肢です。
しかし心の中では、透析時間の延長が一番の選択肢にあります。
③透析液流量(QD)の増加
ここはさらっと流します。
QDはほとんどの施設が500mi/minですかね?おそらく。
QDは600mi/minまでは、拡散効率が上がります。
600以上からは頭打ちになります。
④ダイアライザ膜面積の増大
ダイアライザ膜面積を増やすと、効率は上がります。
しかし、ほんの少しです。
ダイアライザの膜面積を大きくすると、中空糸の本数が多くなるのと、長さが長くなります。
よって、中空糸全体の膜表面積が大きくなります。
小分子量物質の抜けは理論的にはよくなりますが、ワンサイズアップしてクリアランスは1%程度よくなるだけです。
実際数値を見ても変わらない程度ですね。
下図を見てわかるように、ワンサイズアップしてもクリアランスはさほど変わりません。

一方、β2-MGなどの中分子の除去はアップします。
課題点は、栄養状態が悪い患者さんに対して膜面積を上げたりすれば、血圧や栄養データが下がってしまう原因になります。(血流量と同じ)
個人的な意見
個人的な意見としては、血流量が一番手っ取り早く変更できます。
血流量を変更する場合は、脱血状態(シャント状態)をしっかり把握してから血流アップしてください。
また、針の太さにも留意して、QBに適切な穿刺針サイズを選びましょう!
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