はじめに
透析患者では、合併症として高血圧を引き起こします。
今回は、なぜ高血圧になってしまうのか、6つの原因を解説します。
高血圧の原因6つ
- 体液量の増加
- レニン・アンジオテンシン系(RA系)の異常
- 交感神経活性の亢進
- 動脈系の石灰化
- エリスロポエチン
- 尿毒症
この中で一番多いのが体液量の増加です。
では1つずつ解説していきます。
①体液量の増加
高血圧になる原因としては、体液量の増加が一番多いです。
体液量の増加は循環血液量の増加を招き、それに伴い心拍出量が増加し、血圧が上がります。
透析患者では食べたり、飲んだりした物が排泄されることなく体に溜まることで、体重が増えます。
これが体液過剰につながり高血圧を引き起こします。
この体重の増えをいかに抑えるかが重要です。
透析間体重増加は中1日で3%、中2日で4~6%以下に管理することが目標です。
50kgの人だったら、中1日で1.5kg、中2日で3.0kgまでの体重増加が望ましいです。
体重増加を抑えることは重要ですが、やみくもに食べるのを止めるということではありません。
気を付けるのは塩分と水分だけです。
塩分を 7~8g摂ると、体重が1kg増えると思ってください。
人間の体内は、一定の浸透圧で保たれています。
塩分を摂ると、浸透圧が高くなる(濃度が濃くなる)ので、水分を飲んで薄めようとして、喉が渇きます。
これによって、塩分を7~8g摂ると、水を1L飲んでしまいます。(水分を摂って体内の濃度を調節するように脳から指令が出ます)
なので体重が1kg増えるということです。
②レニン・アンジオテンシン系(RA系)の異常
レニン・アンジオテンシン系(RA系)が亢進して、末梢血管抵抗が増大し昇圧する
透析中では除水の影響で刺激され、むしろ透析前よりも血圧が上がることがあります。
除水で体液量減少
↓
腎臓への血流量も減る
↓
RA系ホルモン分泌(体が血圧を上げて腎臓への血流量を維持しないと!と働き、ホルモンが分泌され、血圧が上がる)
といった流れです。
特徴としては腎機能がまだ残っている方はRA系の亢進が見られやすいです。
③交感神経活性の亢進
尿毒症性代謝物質
↓
腎臓の化学受容体を刺激
↓
末梢の交感神経を活性化
といった流れです。
末梢血管を収縮させ、血圧が上昇します。
透析治療中の血圧調整によって、交感神経が持続的に活性化される場合もあります。
④動脈系の石灰化
動脈壁の石灰化によって血管の弾性が失われると、収縮期血圧が上昇します
特に高齢患者、糖尿病患者に多く見られます
CKD-MBDの観点からも注目されています。
動脈系の石灰化は心血管系の合併症を起こしやすくなります。
PとCaが血中で多くなってしまうと異所性石灰化になります
PとCaが結合したものをリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)といいます。
異所性石灰化は血管だけでなく、臓器や軟部組織にも沈着してしまいます。
PとCaが高値にならないように(特にP)調節することが大事です。
⑤エリスロポエチン
エリスロポエチン製剤投与による貧血改善に伴って、高血圧がひどくなる場合があります。
ではなぜ貧血が改善して高血圧になるのか?
結論から言うと、貧血時の心拍出量のまま維持されてしまい、血圧が上昇してしまいます。
では紐解いていきましょう。
高度の貧血が起こると、末梢血管が拡張して心拍出量も増大します。
こういう代償反応が働き、酸素を送ろうとします。
そして貧血が改善すると、末梢血管の拡張が無くなりますが、これに見合った分の心拍出量が減少しません。
つまり貧血時の心拍出量のまま維持されてしまい、血圧が上昇してしまうということです。
血液が拍出され続けてしまう💦という状態です。
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⑥尿毒症
尿毒素が体内に溜まりすぎて、血圧が上昇することがあります
尿毒素も浸透圧物質なので血管内の浸透圧が高くなり、血圧が上昇します。
血漿浸透圧の式は以下の通りです。
血漿浸透圧(mOs)=2Na(mEq/L)+血糖値(mg/dL)/18+血中尿素窒素(mg/dL)/2.8
つまりBUNが高いと、血漿浸透圧は高くなって血圧は上がってしまいます。
透析患者のBUNは以下のような原因で高値になります。
- 消化管出血 → BUN↑↑ + Ht,Hb↓↓ + K↑↑
- 脱水 → BUN↑↑ + Ht,Hb↑↑
- CRPの上昇 → BUN↑↑ + CRP↑↑
こういった検査値の特徴もあります。
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高血圧の疾患
高血圧によって引き起こされる疾患は以下のようなものがあります。
- 動脈硬化
- 左室肥大症・心筋梗塞
- 脳梗塞
- 眼底出血
これらのリスクが上昇します。
高血圧の症状
- 頭痛・イライラ
- 吐き気・肩こり
- 夜ぐっすり眠れない
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