透析患者は様々な合併症を併発します。
この記事では糖尿病透析患者に特徴的な合併症を紹介していきます。
【透析患者の合併症についてはコチラの記事で紹介しています】
糖尿病透析患者の合併症一覧
① 高血圧
② 低血圧
③ 虚血性心疾患
④ 脳血管障害
⑤ 骨代謝異常
⑥ 網膜症
⑦ 神経障害
⑧ 閉塞性動脈硬化症(ASO)
⑨ 不整脈
①高血圧と②低血圧はまとめて他の記事で紹介しています。
①高血圧
透析患者は糖尿病関係なく高血圧の合併頻度が非常に高く、80~90%と言われています。
その中でも糖尿病透析患者の高血圧の臨床的な特徴は5つあります。
【糖尿病透析患者の高血圧 臨床的特徴】
①血圧日内変動が消失する(血圧が1日のリズムの中で変動しない)
②体位変換で起立性低血圧が生じる
③朝方にかけて反跳性(降圧薬の効果が切れたときに血圧が上がること)あるいは、持続性血圧上昇がみられる
④低たんぱく血症や自律神経障害により、透析中の血圧管理が不安定
⑤動脈硬化、冠動脈疾患などの血管合併症を併発し、高血圧を引き起こす
また高血圧の原因も5つ考えられます。
【糖尿病透析患者の高血圧 原因】
①容量依存型高血圧
②レニン・アンギオテンシン系の関与
③高インスリン血症の関与
④動脈硬化の影響
⑤自律神経障害の関与
糖尿病透析患者の高血圧・低血圧は別記事で詳しく解説しています!
②低血圧
糖尿病透析患者の低血圧は、透析とは直接的な関係はない「起立性低血圧」と透析中に起こる「透析低血圧」の二つが問題になります。
【起立性低血圧】
起立性低血圧は、糖尿病患者の自律神経障害が原因です。
寝ている状態から座ったり、座った状態から立ったりしたときに突然血圧低下が起こります。
対策としては
・降圧薬の投与を過剰にしない
・急激な体位変換をしない(ゆっくり時間をかけて立てる)
・ドライウェイトを少し高めに設定する
などです。
【透析低血圧】
透析低血圧は除水に伴い、血圧が徐々に(時にガツンと急激に低下する)低下するものです。
糖尿病じゃない方にも起こりえますが、糖尿病の方はプラズマリフィリングへの障害があります(血管外から血管内へ水分移動する現象)。
対策としては
・透析間の体重増加を少なくする
・透析中のアルブミン製剤の投与(プラズマリフィリングの促進をするため)
・透析開始前に血圧低下を抑制するリズミック、ドプスなどの内服
などです。
【糖尿病透析患者の低血圧はコチラの記事です】
③虚血性心疾患
透析患者の死因第一位が「心不全」であるように、心血管系の合併症は良くありません。
透析患者には虚血性心疾患が多くみられます。
糖尿病透析患者は特に虚血性心疾患の頻度が高いく、生命予後を決定する重要な因子の一つです。
透析開始時にすでに虚血になっている症例が多くあります。
薬物治療を行い効果のない場合は、冠動脈血行再建術(PTCA,CABG)が必要になる場合があります。
透析の除水による血圧低下は冠血流を低下させ、心筋虚血を誘因します。
そのため透析間の体重増加に注意します。
また、心筋虚血を引き起こす原因の
・腎性貧血
・Ca・P代謝(二次性副甲状腺機能亢進症)
・高脂血症
などを是正して、冠動脈への危険因子を軽減することが重要です。
④脳血管障害
糖尿病透析患者では動脈硬化が多くみられます。
高齢者では多発性脳梗塞(細い血管が詰まるので自覚症状がなく気付かない)の頻度も高く、意欲低下や身体活動低下が見られます。
透析患者ではESA製剤による高血圧、ヘパリン使用による脳出血誘発などのリスクもあり、一般患者より重篤になりやすい状態です。
⑤骨代謝異常
透析患者の骨代謝異常には「高回転型」と「低回転型」の2種類あります。
①高回転型:骨代謝が亢進する➡二次性副甲状腺機能亢進症
②低回転型:骨代謝が低下する➡骨軟化症や無形成骨
いずれの場合も骨は脆弱になり、骨折や骨痛などが高頻度に見られます。
糖尿病透析患者では、比較的「無形成骨」が多いことが特徴です。
ビタミンDやリン吸着薬、カルシウム受容体作動薬などの適宜投与を行います。
【骨代謝はコチラの記事で詳しく解説しています】
⑥網膜症
糖尿病性網膜症は成人の失明原因第1位です。
初期の糖尿病性網膜症は、血糖コントロールである程度は信仰抑制が可能です。
しかし進行すると、難治性となり治療が難しくなります。
透析導入後も眼科医による定期診察が必要です。
⑦神経障害
神経障害は糖尿病の3大合併症の1つです。
神経障害はこれらの病態を引き起こします。
・起立性低血圧
・胃無力症(消化管運動の低下が主因となり胃の排出遅延が生じる。そのため、食物の吸収とインスリン注射の効果発現のタイミングがずれ、血糖コントロールが不安定となる)
・無自覚性低血糖
・感染
湯たんぽやストーブによる足先の低温熱傷から、気付かずに(神経障害があるから感覚がない)感染を起こしているという患者も多く見ます。
⑧閉塞性動脈硬化症(ASO)
糖尿病透析患者ではASOは高頻度に見られます。
その原因では「動脈硬化」や除水に伴う「血管内脱水」などが関与します。
歩行時の下肢の痛みやだるさがみられ、ときに上下肢の手指に壊疽や潰瘍形成、爪部からの感染もきたしやすくなります。
重症例では下肢切断に至る場合も少なくありません。
足の観察を十分に行い、フットケアも行うことが重要です。
ASOの治療にはプロスタグランジン製剤や経皮的血管拡張術(PTA)などがあります。
⑨不整脈
糖尿病透析患者では突然死は珍しくなく、その原因として重度不整脈があります。
重度不整脈を引き起こす原因として以下の理由が考えられます。
・虚血性心疾患や左室肥大
・心外膜炎
・高カリウム血症の危険性
・心負荷(内シャントの影響)
これらの様々な理由が不整脈の誘因となります。
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