はじめに
透析患者においてβ2-MGは体の中に溜まってしまいます。
β2-MGは長期にわたり体に蓄積すると、透析アミロイドーシスを引き起こす原因になります。
今回はこのβ2-MGがなんなのか解説します。
β2-MGってなに?
β2-MG(ベータツーミクログロブリン または ベータツーマイクログロブリン)とは、簡単に言うとタンパク質です。
腎臓の糸球体を容易に通過します。
腎糸球体障害がある場合(透析患者)は、β2-MGが濾過されにくいので、血清中に増加します。
β2-MGの基礎知識は以下の通りです。
- 分子量:11,800
- 低分子量蛋白(透析領域では中分子)
- 目標値:透析前30mg/dl未満(可能なら25未満)
β2-MGは血液中のどこにあるの?(必見)
β2-MGは、ズバリ「HLA抗原の一部」です。
特にリンパ球に豊富に存在しています。
血液中にある!でも間違いではありません。
β2-MGはこのHLA抗原にくっついているため、炎症などが起こりHLAが動員されると、HLAも一緒に動員されます。
なので炎症が起こると、β2-MGも上昇します。
HLA抗原、リンパ球にあるというのを知っておけば、この後説明する「β2-MGと炎症の関係性」がもっとわかりやすくなります。
HLAってなに?
HLA(Human Leukocyte Antigen:ヒト白血球抗原)とは、赤血球を除くほぼすべての細胞と体液に分布し、重要な免疫機構として機能しています。
- 移植の際(造血幹細胞移植や臓器移植)にHLAを見る
➡自分のHLAタイプに合わないものはすべて異物と認識して攻撃を始めてしまう - 現在は病気とHLAに関係があることがわかっている
➡HLAを知ることによって、どの病気にどの程度かかりやすいかがわかる
次にHLAの働きを説明します。
HLAの働きは「免疫機構」として機能しています。
ヒトは体内に免疫力を持っています。
HLAの働きで基本となるのは、細菌やウイルスに感染したときに、感染細胞を攻撃することです。
それを識別するために赤血球以外のすべての細胞には、HLA-1抗原を細胞外に出します。
その上に、ペプチド(タンパク質)か、感染した場合にはその感染ウイルスないし、細菌のタンパク質をペプチドにして、抗原に乗っけています。
なぜこういうことをするかというと、免疫系の細胞に知らせるためです。
免疫系の細胞に、自分を攻撃していいか、自分は感染していないから攻撃してはいけないのかを、知らせてくれる仕組みがあります。
透析液が汚いとβ2-MGが上がる
昔は、今よりβ2-MGが上がりやすかったといいます。
それはなぜかというと、透析液が今より汚かったからです。
透析液が汚い → 免疫系が活性・刺激 → β2-MGが増加
という流れです。
先ほども説明した通り、β2-MGは免疫系の機能を持つHLA抗原の一部です。
つまり、HLAが活性化すると、β2-MGも活性し増加します。
昔は透析液の基準が今より甘かったですし、ゆるかった。
白血球の寿命は非常に短いので、壊れて作るを繰り返します。
膜抗原蛋白も壊れて、透析患者はβ2-MGを排泄できないので血液中に溜まります。
透析液の清浄化によってβ2-MGが抑えられるのも当然のことですね。
除去も大事ですが、産生を抑制するのも非常に大事です!
炎症があるとβ2-MGが上がる
抜けども抜けども高値のβ2-MG…。
その背景はやはり炎症にあります。
先ほどにも説明した通り、炎症起きる → 免疫機構はたらく → β2-MG増加
一番多いのは肝炎患者です。
慢性炎症の原因疾患を有する患者のβ2-MGが、高値をとるのは、しょうがないです(*_*;
あきらめムードって感じですね( ゚Д゚)
透析治療で炎症を抑えることが私たちの役目でもあります。
もちろん、透析条件を変えたり、リクセルを使用したりと、そういった工夫も大切です。
β2-MGを下げる方法
- 効率を上げる
- リクセルの使用
- 炎症を鎮める
1.の効率を上げるでは、具体的にいうと以下のことをします。
- 血流量(QB)を上げる
- 透析膜面積の増大
- 透析時間の延長
これらをすることによって老廃物の除去を促進することができます。
2.のリクセルの使用では、リクセルという吸着カラムを用いて、β2-MGを除去します。
リクセルはβ2-MGの吸着機能があります。
【リクセルはコチラの記事で詳しく解説しています】
3.の炎症を鎮めるでは、いくらβ2-MGを除去したからといって、炎症があると数値は上がってしまいます。
除去量よりも産生量が多くなっているということです。
なので炎症の根本解決が重要です。
これは一番難しく、慢性炎症ではどうしようもない時も多々あります。
しかし一番重要なのは、炎症の根本解決ということは知っておきましょう。
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