はじめに
透析患者においてPの管理は非常に大事となってきます。
高リン血症になると、異所性石灰化を招いて臓器障害が出たります。
今回はリンの基礎知識や、高リン血症になるとどうなるかを解説していきます。
P(リン)ってなに?
透析患者の基準値:3.5~6.0mg/dL(3.5~5.0だともっといい)
リンは生命維持に欠かせないミネラルの一種です。
血液中のリンの濃度は、腎臓の調節機能によって一定に保たれています。
しかし、腎機能が低下するとリンが尿中に排泄されず、血液中に蓄積されます。
リンが基準値より高くなる高リン血症の状態は、透析患者では避けることができません。
また、リンの異常値は腎疾患以外はまず考えられません。
リンの体での役割は以下の通りです。
- 重要なミネラルの一種
- 体内のミネラルの中でCaに次いで2番目に多い
- 骨や歯を硬くするもとになっている
- 細胞内にも存在し、DNAや細胞膜の成分となる
- 細胞が働く時のエネルギーとなる
高リン血症になるとどうなる?

高リン血症になると起こることは、主に以下の2つです。
- 骨粗鬆症 → 骨がもろくなり骨折しやすくなる
- 異所性石灰化 → 体の組織や臓器にCaが沈着して、臓器障害が起こったりする
高リン血症になると、副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌されます。
PTHは、リンを尿中に排泄しようとする役割があるので、高くなったリンを下げようとしてくれます。
PTHは分泌過剰になると、骨からCaを溶け出して血液中に移動する作用もあります。
なので、骨からCaが溶け出し、骨が脆くなってしまい、骨粗鬆症につながってしまいます
骨粗鬆症になると、骨折のリスクも高くなってしまいます。
そして骨折は、ADLの低下や認知症を招いたりと、予後を悪くするので注意が必要です。
また、高リン血症になるとリンとカルシウムが結合しリン酸カルシウムになります。
これをハイドロキシアパタイトと言います。
技士の国試にも出てきましたよね…。
異所性石灰化は様々な臓器や組織に石灰化が沈着し、動脈硬化や関節の痛みを招きます。
石灰化は、リンとカルシウム値の掛け算によって進行します。
P値 × Ca値=55以上で血管石灰化が進行します。
リンが低くてもカルシウムが高ければ石灰化は進行します。
臨床の現場に立っていると、シャント血管で石灰化を起こしていると、まずその部位は穿刺ができません。
穿刺候補範囲外ですし、物理的に固すぎて針が刺さりません。
自覚症状がなくても、リンの管理をすることが大切です。
リンは低い方が(3.5~5.0mg/dL)確実に生命予後が良いです。
リンを基準値内に保つことで、心血管系の病気になりにくくなり、長生きすることができます。
ただ、リンの摂取を過度に控えると栄養状態の低下をきたすので注意が必要です。
高リン血症の原因と対策
高リン血症の原因は複数あります。
- リンの過剰摂取
- リン吸着薬不足
- リン吸着薬の服用時間のズレ、または飲み忘れ
- 透析不足
ザックリですが解説していきます。
1.リンの過剰摂取
リン値のコントロールは基本的に食事です。
リンには「有機リン」と「無機リン」の2種類があります。
有機リンを多く含む食品は以下のようなものがあります。
- 肉
- 魚
- 卵
- 乳製品
- 豆類
これらの食品を多くとるほど、リンの摂取量も増えます。
しかし、有機リンに関しては、リンは上がりますが、タンパク質も豊富に摂取することができます。
なので、タンパク質がほとんど含まれていない無機リンを摂取するより、有機リンを摂取する方がいいです。
また有機リンは、動物性と植物性の2種類に分かれます。
【動物性有機リン】
動物性食品は肉や魚、卵、乳製品などの食品です。
体に40~60%吸収されます。
【植物性有機リン】
植物性食品は大豆などの豆類に多く含まれます。
体に20~40%吸収されます
続いて「無機リン」です
透析において無機リンの摂取をいかに抑えるかが重要です!
無機リンを多く含む食品は以下の通りです。
- 食肉加工品(ウインナー・ハム)
- 練り物(干し物・ちくわ・かまぼこ)
- プロセスチーズ
- インスタント麺
- 缶詰 など
ほとんどの加工食品に含まれています
体へは100%近く吸収されます。
有機リンは腸管から体に吸収されるのが20~60%であるのに対し、無機リンはほぼ100%なので、無機リンの方がリン値が上昇しやすくなります。
有機リンは、肉や魚なので、リンの他にもたくさんの栄養素が含まれています。
なので、摂取に関してはそこまで気を付ける必要はないのかな、とは思います。
もちろん食べすぎはダメですが、リンが上がるよりもタンパク質が摂取できるというメリットがあります
しかし、無機リンに関しては加工食品や練り物で、いわゆる嗜好品と言われるものです。
これらは、栄養素もあまり含まれてない他、塩分の含有量も多いので、一番気を付けた方が良いですね。
高リン血症の予防は、いかに無機リンの摂取を抑えるかがカギです
【詳しくはコチラの記事で解説しています】
2.リン吸着薬不足
リンの薬物療法としてリン吸着薬があります。
これはリンを下げてくれる薬です。
リン値が高い場合は食事療法と併用して薬物療法を行います。
リン吸着薬の用量を増やしたり減らしたりして調整を行います
リン吸着薬は7種類あり、それぞれ特徴があります。
リン吸着薬7種類は以下の通りです。
- カルタン(沈降炭酸Ca)
- フォスブロック(塩酸セベラマー)
- レナジェル(塩酸セベラマー)
- ホスレノール(炭酸ランタン)
- キックリン(ビキサロマー)
- リオナ(クエン酸第二鉄)
- ピートル(スクロオキシ水酸化鉄)
それぞれ特徴が異なるので、患者さんに合った薬剤を選択します。
上記の7種類は、リンを下げるといった目的は同じです。
しかし、以下のような細かい特徴があります。
- Caは含有しているか
- 鉄は含有しているか
- 服薬のタイミング:食直前か直後か
- 剤型:錠、カプセル・チュアブル錠・粉薬・OD錠 など
など、これらの特徴が違ってきます。
【リン吸着薬の詳しい記事はコチラ】
3.リン吸着薬の服用時間のズレ、または飲み忘れ
リン吸着薬は服用時間が種類により異なるので、患者さんにしっかり説明してあげることが大事です。
服用のタイミングは以下の通りです。
- 食直前
- フォスブロック
- レナジェル
- キックリン
- ピートル
- 食直後
- カルタン
- ホスレノール
- リオナ
もし、リン吸着薬の種類が変わったら、食直前か後か確認して、患者さんに伝えてあげてください
また、高齢者なので飲み忘れることもあります。
そういったときは飲み忘れないように、以下のような工夫も大切です。
- 内服したらチェックを付ける
- 食事の際に薬を用意しておく
- 家族に声をかけてもらう
ご家族さんの協力も大切です。
4.透析不足
適正なQBが得られてなかったり、透析時間が短かったりして透析不足になると、リンが除去しきれません。
リンの除去を促進するためには、効率UPが必要です。
効率UPの方法は以下の通りです。
- QBの増加
- 膜面積の増大
- 透析時間の延長
リンは透析(拡散)によって除去されます。
透析液にリンは含まれていませんが、透析後の値はそんなに低くはなりません。
なぜかというと、リンのリフィリングレート(血管内外への移動)がかなり緩やかだからです。
また、リンは透析終了して、 30 分後から血中濃度が上昇し始めます。
これをリバウンド現象と言います。
【詳しくはこの記事をご覧ください!】
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