はじめに
透析患者さんにとって合併症はつきものです。
この合併症をどれだけ少なくできるかが、QOLに関わってきます
今回は透析の合併症の基礎となるMIA症候群について解説していきます。
MIA症候群ってなに?
MIA症候群とは以下の頭文字をとって名付けられています。
- Malnutrition:栄養障害
- Inflammation:慢性炎症
- Atherosclerosis:動脈硬化
MIA(ミア)症候群とは、『栄養障害』『慢性炎症』『動脈硬化』の頭文字をとったものです。
慢性炎症状態では栄養状態を悪化させ、動脈硬化を助長するという、考え方、概念みたいなものです。
MIA症候群の根源にあるのは慢性炎症です。
炎症を抑えることが、MIA症候群によって引き起こされる様々な病態を予防することに繋がります。
透析液の清浄化
MIA症候群の根源である慢性炎症を予防するためには「透析液の清浄化」が非常に重要です。
透析治療では、透析液を必要とし、体の中を巡回します。
その透析液が汚染されていれば、慢性炎症に繋がります。
OHDFやIHDFを実施している施設では、透析液が最もきれいな純度でなければならない超純粋透析液(ウルトラピュア)を必要とします。
個人的な意見を言えば、現在は内部ろ過型ダイアライザがほとんどなので、どのコンソールも超純粋透析液が必須だと考えています。
透析液を清浄化し、炎症を鎮めることができると、下記のようなメリットがあります。
- 栄養状態の改善:アルブミンの合成が促進される
- 貧血の改善:低Hbの改善
- 合併症の予防:β2-MGの産生低下
- 血糖の適正:インスリン分泌が正常に
- 動脈硬化の抑制
透析液の清浄化は「日本透析医学会:透析液水質基準」または「日本臨床工学技士会:透析液清浄化ガイドライン」に基準値が記載されています。
日本透析医学会の透析液水質基準は下記にリンクを貼っておきます。
透析液が汚いとどうなる?
透析液が基準値以下に抑えられずに、汚い状態で透析をすると、ダイアライザを介して、ET(エンドトキシン)や生菌が体内に入ります。
すると、対抗するマクロファージがサイトカインを放出して炎症を起こします。(まず発熱が起こります)
炎症が慢性化すると、食欲を低下させ低栄養になったり、動脈硬化や心血管系の合併症を引き起こします。
つまり、MIA症候群を予防するためには、透析液の清浄化は必須です。
炎症と栄養障害
慢性炎症は栄養障害を引き起こします。
なぜかというと、アルブミンの合成が抑制されるからです。
炎症が起こる
↓
肝臓でのアルブミン合成抑制
↓
それと同時にトランスサイレチン(プレアルブミン)合成抑制
↓
急性相タンパク(CRP)の合成に傾く
↓
アルブミン低値になる
といった流れです。
炎症が起こると肝臓でCRPが合成されます。
すると、同じ肝臓で合成されるアルブミンやプレアルブミンの合成が低下します。
なので栄養障害になるということです。
炎症と動脈硬化
炎症は動脈硬化を加速させ、過剰な内臓脂肪は慢性炎症の引き金になります。
内臓脂肪が多いと脂肪細胞がパンパンに膨れ上がります。
そして、異常な脂肪細胞から、炎症性物質が多く放出されます。
これが慢性炎症の引き金になります。
脂肪細胞から炎症物質が放出されると、まず血管に炎症を起こします。
更に炎症物質に反応して、白血球の働きが活性化します(図1)
血管壁に入り込んでマクロファージに変化します。(図2)
そして、コレステロールを取り込み膨らんでいきます。
こうして盛り上がってできるコブをプラークといいます。
プラークは次第に大きくなり、動脈硬化が進行します(図3)
プラークが大きいほど、覆っている膜は脆弱化します。
膜が破れると傷口を塞ぐために血栓ができ、血管を詰まらせてしまいます。(図4)
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