毎週月曜更新!次回のブログ更新は10/21(月)内容:透析患者の高血圧

透析とPEM(タンパク・エネルギー栄養障害)透析患者の40%が発症

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栄養関連、サルコペニア・フレイル
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はじめに

透析患者の栄養状態は生命予後に大きく関連します。

PEMは「必要な食事摂取ができずに栄養障害が起きている状態」です。

透析患者は、透析特有の疲れや病態から食事摂取量が減少します。

今回はこのPEMについて学習していきましょう。

  • 「PEM」を透析学習塾で動画で学習することができますよ
pdfも端末に保存できる

PEMってなに?

タンパク・エネルギー栄養障害(PEM:protein-energy malnutrition)

PEMとは必要な食事摂取ができずに栄養障害が起きている状態のことを言います。

透析患者はタンパク・エネルギー栄養障害PEM)が約40%ほど頻発しています。

患者の生命予後の向上にはPEMの発症を抑制し、しっかり栄養を摂取することが大事です。

PEMを早期に発見し、栄養状態の改善を行うことが大切です。

PEMとPEW

透析患者の栄養状態を表す似たような言葉で、PEWもあります。

PEMとPEWがごっちゃにならないように以下に説明しておきます。

  • PEM(タンパク・エネルギー栄養障害)→ 必要な食事摂取ができずに栄養障害が起きている状態
  • PEW(タンパク・エネルギー消費状態)→ 食事摂取ができているのに栄養障害が起きている状態

PEMの原因

PEMになってしまう原因は非常に多くあります。

代表的なものを以下に示します。

  • 尿毒素の蓄積による食欲低下
  • 効率不足
  • 慢性微炎症状態
  • 多量の薬の服用による消化管障害

尿毒素の蓄積は栄養不良になることが分かっています。

尿毒素が溜まるとレプチン(食欲抑制物質)が増え、食欲を抑制してしまいます。

効率不足が生じると、尿毒素が蓄積してしまい、食欲不振へとつながるので、食欲不振に陥った場合は効率を上げる対策をするのが良いでしょう。

慢性微炎症状態では、透析膜や透析液による影響で慢性的に微炎症状態にあります。

炎症はAlbの合成を抑制してしまうので、低栄養になってしまいます。

また、多量の薬による消化器症状では味覚の変化、食欲低下、悪心などが生じるため栄養不良へとつながります。

これら以外にも、内分泌異常や代謝性アシドーシスも栄養不良を引き起こすことが分かっています。

また、透析患者ではMIA症候群という概念があります。

MIA症候群ってなに?
MIA症候群とは「低栄養(Malnutrition)」「炎症(Inflammation)」「動脈硬化(Atherosclerosis)」の頭文字を取っています。

これらは3つは相互作用を示しているという透析患者における考え方(概念みたいなもの)です。

MIA症候群はコチラにまとめています。

このMIA症候群によっても低栄養が引き起こされる、相互作用が働いています。

PEMになるとどうなる?

  • 生命予後が悪い(死亡率が高い)
  • 病気になりやすく、回復が悪い
  • 合併症が起こりやすい
  • 褥瘡ができやすい
  • QOLやADLが悪い

PEMになると生命予後が悪くなることは報告されています。

また、感染が起こりやすかったり、術後の回復が悪かったりします。

寝たきりになったり、車いすになったり、そこから認知症を発症したりとQOLの低下がみられます。

PEMの予防

PEMを予防するためにはしっかり栄養管理をする必要があります。

また、PEMの状態から抜け出すことも十分可能ですので、PEMにならないように、またPEMから抜け出せるように以下のことに気を付ける必要があります。

PEMの予防を下記に示します。

  1. 透析中の過度なアミノ酸喪失を防ぐ
  2. 生体適合性の良い透析膜を使用する
  3. 体液管理をする(正確なDWの決定)
  4. 透析不足の解消

1つずつ解説していきます。

1.透析中の過度なアミノ酸喪失を防ぐ

まず透析中のアミノ酸喪失を防ぐことが重要です。

これには以下のような対策があります。

  • 体格の割に大きすぎる透析膜を使用していないか
  • アルブミンの抜けやすい透析膜を使用していないか(Ⅱb型)
  • HDFで過度な補液量を設定していないか

体の小さい患者に対して、過度に大きなサイズの透析膜、またはアルブミンの抜けやすい膜を使用していないか検討してみましょう。

透析で抜けた分のアミノ酸(タンパク質)を食事でちゃんと補充できているかを評価します。

2.生体適合性の良い透析膜を使用する

次に生体適合性の良い膜を使用しましょう。

患者によって生体適合性の良い膜は異なります。

PS膜が良かったり、CTA膜が体に合ってたりと…

(一般的にはPES膜、PMMA膜が生体適合性が良いといわれれています)

生体適合性が悪くサイトカインが放出されれば、サイトカインは蛋白異化を促進するので、低栄養に陥ってしまいます。

3.体液管理をする(正確なDWの決定)

DWが甘すぎても、きつすぎても、栄養状態に悪影響を及ぼします。

4.透析不足の解消

最後に、透析不足を解消しましょう。

透析効率(Kt/V)が悪く、尿毒素が溜まりすぎると、レプチン(食欲抑制物質)によって食欲を抑制してしまいます。

なので効率をしっかり維持してあげることが、患者の食欲維持になり、栄養状態の改善につながります。

また透析効率の維持は生命予後を伸ばしますし、良いことだらけです。

まとめ

高齢者では尿毒症や消化器症状、慢性的な炎症などにより食欲不振があり、PEMになりやすいと考えられます。

栄養指導や透析療法の分野からのアプローチでPEMの改善ができます。

しかし超高齢者や慢性炎症(潜在的なもの)、うっ血性心不全などが合併していると、PEMの改善は限界があります。

PEMを改善することがより良い透析ライフ、QOL向上につながることは間違いありません。

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