はじめに
透析と副甲状腺ホルモン(PTH)には密接な関係があり、多くの透析患者さんが「二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)」に悩まされます。
PTHってなにか、二次性副甲状腺機能亢進症はなにかを解説していきます。
副甲状腺ホルモン(PTH)ってなに?

PTHはのどぼとけの位置にあり、甲状腺の裏側にあります。
上下左右の4つの腺が存在します。
PTHはカルシウムとリンを調節する働きがあり、血清リンが高くなった場合や、低カルシウム血症が続いた場合に分泌されます。
- 高リンの場合→PTHが分泌されて尿細管におけるリンの再吸収を低下させ、尿中へリンの排泄を増加させる反応が起きる
- 低カルシウムの場合→PTHの分泌が盛んになり、骨を溶かしてカルシウムを血液中に移動させ、血中のカルシウムを保とうとします。
つまり、高リン血症の場合は尿に排泄させて、数値を下げるように働きます。
低カルシウム血症の場合は、骨から血液中にCaを移動させて、数値を上げるように働きます。
カルシウムとリンが高い状態が続くと(Ca×P=55以上)、「異所性石灰化」が起こり、関節の周囲や血管、肺などにリン酸カルシウムが沈着し、組織が石灰化します。
二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)ってなに?

二次性副甲状腺機能亢進症とは、「PTHの過剰分泌により、必要以上に血液中のカルシウム濃度が上昇した状態」のことです。
透析患者さんでは「低カルシウム血症」と「高リン血症」の状態が長期にわたって持続します。
低下した「血液中のカルシウム濃度を上昇させるため」に、また、上昇した「血液中のリン濃度を低下させるため」に、副甲状腺が刺激されPTHの分泌量が増加します。
低カルシウム血症の状態が長期間続くと、副甲状腺が刺激され続け腫大します。
やがてホルモンの分泌に歯止めがきかなくなり、血液中のカルシウム濃度に関係なく、PTHが分泌され、「高カルシウム血症」の状態になります。
(PTHがバカになってずっと出続けてしまう)
そして高リン血症・高カルシウム血症の状態が続くと異所性石灰化を引き起こします。
【異所性石灰化についてはコチラの記事を参考にしてください】
二次性副甲状腺機能亢進症の症状
二次性副甲状腺機能亢進症では、過剰に分泌されたPTHが骨に作用し、次のような病態になることがあります。
- 骨折しやすい
- 体がかゆい
- イライラしやすい
- 心筋梗塞

二次性副甲状腺機能亢進症が起こると、線維性骨炎やリモデリングの亢進を引き起こしてしまう。
【線維性骨炎】
骨密度が低下し、骨がスカスカの線維状になってしまう「線維性骨炎」を発症します。
線維性骨炎では、「骨や関節が痛む」「骨がもろく骨折しやすい」などの症状があらわれます。
【新陳代謝(リモデリング)の亢進】
骨も髪や肌と同じように新陳代謝(リモデリング)を繰り返しています。
古くなった骨を壊す「破骨細胞」と、新しい骨を作る「骨芽細胞」のバランスの取れた働きによって、骨量が安定し、骨の強度が保たれています。
しかしPTHが過剰に分泌されると、骨のリモデリングが活発になりすぎて、骨が作られるスピードよりも壊されるスピードの方が速くなってしまいます。
これによって、骨粗鬆症が進み、骨折等のリスクが高くなってしまいます。
intact-PTHとwhole-PTH
- intact-PTH:60~240pg/ml(透析患者の基準値)
- whole-PTH:35~150pg/ml(透析患者の基準値)
intactの数値÷1.7でwholeを求めることができます。
PTHは今までintact-PTHの測定が用いられてきましたが、これはPTHの全長※1(1~84)を検出すると考えられ、主流になっていました。
しかし、1998年に本来のPTH(1~84)以外に他の6種類のフラグメントも同時に測定してしまっていることが明らかになり、厳密なPTHでないことが発表されました。
そこで、1999年に本当に完全なPTH(1~84)を測定する方法が確立され「whole-PTH」と呼ばれるようになりました。
透析患者ではwhole-PTHはintact-PTHより約7割程度低くなります。
※1 アミノ酸が1~84あり、1個110~120Da(ダルトン)、84個で分子量9500Da
ほとんどの施設は「intact-PTH」ではないかな?と思います。
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