はじめに
透析膜は「合成高分子膜」と「セルロース系膜」の2種類に分かれて、PS膜は合成高分子膜に分類されます。
PS膜は、3社10種類以上の膜が販売されています。
会社によって特色が異なってきます。
今回は旭化成社のPS膜について説明していきます。
PS膜の特徴
- 数が最も多い
- PVP,BPA含有(PVPアレルギーの懸念)
- 基本的にシャープな分画特性
PS膜(非対称膜)=シャープな膜です。
ちなみにこのシャープな膜はPS膜以外にも「PES」「PEPA」「ATA」これらはシャープな膜と言われます。
ではシャープな膜とはどういう意味なのか?
シャープな膜とは、Albに相当する分子量6万Da領域での透過を抑制しつつ、分子量1万Da強のβ2-MG領域の透過で高い透過性を有する
こういった膜をシャープな膜と言います。
ちなみにシャープな膜と反対にあるのがブロードな膜です。
均質膜のPMMA膜が該当します。
ではブロードな膜とはどういう意味なのか?
ブロードな膜とは、β2-MG領域の透過性は低いが、分子量5万Da以上の物質の透過性はPS膜よりも高くなっている
こういった膜をブロードな膜と言います。
PS膜の種類
PS膜だけで、3社10種類以上の膜があります。
今回は旭化成(旭化成メディカル株式会社)の膜を説明していきます。
旭化成社の透析膜
旭化成社のダイアライザは以下の4種類です。
- APS-EA(Ⅱa型)
- APS-SA(Ⅰa型)
- APS-MA(Ⅰa型)
- APS-UA(Ⅰa型)
またビタミンEを固定化しているダイアライザは以下の2種類です。
- VPS-HA(Ⅰa型)
- VPS-VA(Ⅱa型)
ヘモダイアフィルタは以下の2種類です。
- ABH-PA
- ABH-LA
APSの厚い内面緻密層
図1のように薄い緻密層(従来PS膜)では、内面緻密層の平均孔径を大きくするとβ2の透過性が向上し、同時にAlbの透過性も増大してβ2とAlbの選択分離性が低下していました。
しかし、図2のように厚い緻密層(APS膜)では、緻密層の厚みが増すと、分画分離層の平均孔径を大きくしても、Albの透過性が抑制されて、β2との選択分離性が向上します。
APSは緻密層が厚いことが特徴です。
生体適合性
APSはPVPが※水和することにより、より厚い散漫層を形成している
これによって良好な生体適合性を発現しています。
Wetタイプなので使用する前からPVPが水和状態となり、残血が少なく、溶出物が少ない特徴があります。
※ 水和とは、水溶液の中で溶質の分子やイオンが水分子と結合したり、相互作用したりする現象のこと
参考:松尾賢三, 松山玲子, 井上聖人:ポリビニルピロリドン(PVP)によるポリスルフォン膜の親水性とPVP溶出特性についての検討. 腎と透析59別冊ハイパフォーマンスメンブレン ′05:70-76,2005
APSの性能
APS-MAに関しては分かりませんでした。
ぜひ参考にしてみてください。
ヘモダイアフィルタ「ABH」
ABHの使い分けは以下の通りです。
- ABH-PA:低分子蛋白の除去が目的
- ABH-LA:アルブミン漏出の抑制が目的
ABHの除去性能イメージはコチラで解説しています。
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