はじめに
透析膜には対称構造と非対称構造という設計があります。
これは機械的強度や透水性能を決める重要な因子になってきます。
また対称とか非対称は中空糸膜の紡糸技術のことを表しています。
つまり、膜の断面構造のことです。
そもそもこの対称とか非対称とかはどういったものなのか、解説します。
対称構造
対称構造を持った膜は均質膜とも呼ばれます。
対称膜構造や均質膜構造と同じ意味です。
均質構造膜は、膜厚断面の内表面から外表面にかけて均一な孔径を有する構造です。(図1)
均質膜は膜表面に緻密層がなく、血液内表面や外表面も同様の構造を呈しています。
膜の分離性能は膜全体の構造によって決まります。
均質膜構造により、※機械的強度が強くなり、膜厚を薄くできます。
※ 機械的強度とは、ダイアライザには常に強い力が加わっています。
静脈圧(血液側の圧力)と透析液圧(透析液側の圧力)があり、ある程度の強度がないと膜が破損してしまいます。
そうすることで拡散性能を高めていると言われています
対称構造の膜は以下の通りです。
- CTA膜
- PMMA膜
- EVAL膜
非対称膜
非対称膜はグラジエント構造とも呼ばれます。
グラジエント構造とは内表面から外表面に向かって孔径が大きくなる構造のことを言います。(図1)
非対称構造の方が溶質の透過性と透水性が良いと言われています。
- 溶質透過性:溶質の通りやすさのこと。膜を介して物質が行き来するため高い透過性が要求される
- 透水性:水の通りやすさのこと。除水やHDFでは大量置換をするため、水が通りやすくないといけない
- 溶質透過性と透水性の適度なバランス:上記2つが優れすぎていてもダメです。適度なバランスを保たないとアルブミンなどの体に必要な物質も除去されてしまうかもしれない
非対称膜では、内部の多孔性やグラジエント構造を持つ支持層と表面付近に存在する緻密(活性)層の二重構造から成っています。(図2や図3)
支持層膜が機械的強度を与えて、緻密層が透水性や溶質透過性などの物質移動を規定します。
つまり…
- 支持層 → 中空糸の強度を保つ役割
- 緻密層 → 溶質の除去特性を決定する役割
非対称膜構造は溶質の透過抵抗が小さいので、高い溶質除去能と透水性を有しています。
また非対称膜は内表面が「密」で外表面が「疎」な非対称構造です。
最内表面の緻層層(~5μm)の構造によって、物質をふるい分ける分離性能が決定されます。
分離機能層が薄いため、シャープな物質分離と高い除水性能が得られます。
非対称構造の膜は以下の通りです。
- PS膜
- PES膜
- PEPA膜
- ATA膜
まとめ
↓↓対称膜構造についてのまとめ↓↓
- 均質膜とも呼ばれる
- 膜厚断面の内表面から外表面にかけて均一な孔径を有する構造
- 均質膜は膜表面に緻密層がない
- CTA・PMMA・EVAL膜
↓↓非対称膜構造についてのまとめ↓↓
- グラジエント構造とも呼ばれる
- 内表面から外表面に向かって孔径が大きくなる構造
- 対称膜よりも透過性と透水性が良い
- 支持層と表面付近に存在する緻密(活性)層の二重構造から成る
- PS・PES・PEPA・ATA膜
対称膜と非多少膜の構造の違いを以下に示します。
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