はじめに
シャント瘤はVAにしばしばみられる合併症です。
シャント瘤は、最悪の場合は瘤破裂を起こすので注意が必要です。
今回はシャント瘤について原因や分類など解説していきます。
日本透析医会ガイドライン 「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」で、シャント瘤について掲載しています。
瘤の定義

瘤の定義は、血管が局部的に円筒状または紡錘状、あるいは囊状に拡張した状態と定義されています。
上図が形状です。
治療対象の瘤4つ
瘤はすべて治療対象となるわけではなく、治療対象ではない瘤は経過観察をします。
切迫破裂の危険がある瘤(破裂しかかっている危ない瘤のこと)は、手術適応となります。
ちなみに、60歳以上のシャント瘤は大きくなりにくいのが特徴です。
以下のような瘤は治療対象となります。
- 急速に(短期間で)増大する瘤(4cm以上)
- 皮膚に光沢を有する瘤(テカテカしている)
- 感染を伴う瘤
- 皮膚の発赤やびらんを有している瘤
これらの特徴がある時は、総合的に評価し、瘤の摘出術が必要になります。
また、生活に不自由が出たり支障をきたす場合も手術の適応となります。
例えば、衣服と擦れたり、女性の場合は美容的に気になり半袖が着れないとかです。
瘤の種類と原因

瘤の分類は上図の通りです。
瘤の分類は外膜、中膜、内膜の3層で瘤を形成している真性瘤と、内膜と外膜が欠損していて内膜だけになっている仮性瘤とに分かれます。
- 真性瘤:3層全体で瘤を形成
- 仮性瘤:内膜と外膜が欠損していて、外膜だけになっている瘤
仮性瘤は外膜だけなので非常に危険です。
透析では穿刺に関連する瘤が最も多いです。
瘤の発生原因では、真性瘤と仮性瘤とで発生原因が異なります。

真性瘤の原因は、上図のようなジェット流による圧の上昇です。
これは穿刺とは関係ありません。
ジェット流による内圧上昇が起き、吻合部付近や、狭窄の後、または狭窄の手前に瘤を形成します。
仮性瘤の発生原因は以下の3つです。
- 同一部位の反復穿刺(血管壁が薄くなる)
- 穿刺ミス
- 透析後の止血不良
穿刺ミスや止血不良では、穿刺部からシャント周囲に血腫ができて、やがてそこが瘤化します。
そこに仮性瘤が形成します。
瘤を形成した部位に穿刺を続けると、さらに瘤が大きくなるので、他に穿刺する場所がある時はそっちに穿刺した方が良いです。
急速に生じた瘤は、穿刺に伴う仮性瘤が原因です。
シャント瘤の分類

人工血管の穿刺による仮性瘤(人工血管はすべてが仮性瘤)は、血管壁がないため、破裂する危険性が高いです。
動脈表在化に生じた瘤は、AVFの瘤と同様に急速に増大したり、感染傾向がある、皮膚に光沢を生じるものでは、手術が必要です。
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