はじめに
この記事でわかること
- グラフトの適応が分かる
- 移植部位がわかる
- 材質の各特徴がわかる
透析治療を行う上でのシャント作成で、第2選択とされるのが人工血管内シャント(AVG:Arterio Venous Graft)です。
グラフト血管ってなに?
人工血管内シャント(AVG)のことをグラフト血管とも呼びます。
腕に人工血管を埋め込み、動脈と静脈を吻合する方法です。
日本のVA(バスキュラーアクセス)の中で、約7%使用されています。
血液の流れは、動脈→人工血管→静脈の順です。
現場では「グラフト」や「グラフト血管」と言ったりします。
グラフトの適応
VAの第一選択はAVFですが、AVFが作成不可能な時は、グラフトが次の選択肢となります。
心機能上シャントの心負荷に耐え末梢循環不全もないが、AVFを作製することができない症例に作製します。
合わせて血管の状態も見ます。
以下のような場合は、心機能に問題が無くてもグラフト作成が見送られることもあります。
- 表在する静脈が細かったり、閉塞している時
- 血管が荒廃している時
- AVFを作成しても穿刺が困難と予想される場合
吻合血管
グラフトの吻合血管は非常に多くあります。
- 上腕動脈 × 上腕橈側皮静脈
- 上腕動脈 × 上腕尺側皮静脈
- 上腕動脈 × 伴走静脈 などなど
グラフト移植部位
グラフトの移植部位は一番多いのは前腕です。
上腕で作成したりもします。
まれに大腿部に作成することもあります。
またループ型やストレート型もあります。
グラフトの移植部位で大切なことは以下の2つです。
- 前腕に作成すること
- ループ型で作成すること
なぜかというと、肘より下に作成するのは、肘をまたぐと曲げた時にグラフトが屈曲して負荷を与えるのでよくないからです。
またループ型で作成するのは、ストレート型よりも穿刺部位が広範囲になるのと、吻合する血管の選択範囲も広がるといった理由があります。
つまりグラフトの理想は、前腕部のループ型です。
グラフトの材質
グラフトの素材は3種類あります。
- e-PTFE(expanded-polytetrafluoroethylene)
- PU(poly-urethane)
- PEP(polyolefine-elastmer-polyester)➡もう消失したので、覚えるのは名前だけでいいかな、、、。
PU(ポリウレタン)はソラテック、PEPはグラシルって呼ばれたりしますよね。
↓グラフトの素材シェア率
- e-PTFE:70%くらい
- PU:30%くらい
大体このくらいで、PTFEが今一番多く使われています。
では各材質の特徴をみていきましょう。
ちなみに、「PEPは硬くて手術がやりにくい」や「感染時の抜去がボロボロで取りにくい」といった意見がありました。
①e-PTFE
e-PTFEは、テフロン熱を加えて伸展加工し、作成されたグラフトで、現在最も多く使用されています。
最大の特徴は、「人工血管が周囲の組織と癒着する」ことです。
軽度の人工血管感染の場合、感染が局所に抑えられます。
なので、部分的な修復手術と抗菌薬投与で治療できることがあります。
PTFEの良い点と悪い点をまとめました。
↓良い点
- しなやかで屈曲しにくい
- 「抗菌性」「長期開存性」において優れる
- PUと比べ開存率は良好
↓悪い点
- 血清腫(血管壁から血清が漏れ出てくる)が術後約5%出現
→現在はコーティング化されているので、血清腫のリスクも減少しています - 早期穿刺ができない(術後2~3週間必要)
→人工血管が周囲の組織としっかり癒着するまでに2~3週間かかるからです
e-PTFEは、組織との癒着をし始めてから止血機構を有します(元々止血機構がない)
なので、術後すぐに穿刺はできても、止血が困難になります。(止血した孔が自然にふさがらない)
よって術後2~3週間空けなければいけません。
現在は早期穿刺できるe-PTFEが発売されています!
ゴアの「アキュシールVAグラフト」や「フレキシンVAグラフト」などです。
ゴアのアキュシールは内膜剥離が多いと聞いたことがありますが、それでもやはり優秀な人工血管だと言えます。
②PU(ポリウレタン)
PUは3層構造で、中層に止血機構があります。
止血機構あり、ということは早期穿刺が可能ということです。
PTFEと比較すると、固いので屈曲しやすいといったデメリットがあります。
また、エコーでの早期の描写が難しいことが多いです。
PUは三層構造でできており、外膜が多孔質構造の為空気が含まれているので、描写が難しくなっています。
これは、早期癒着を目的としているので、こういった構造になっています。
穿刺を繰り返し、癒着が進むとエコー描写が容易となってきます。
材質のまとめを最後に載せておきますね。
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