11/26,12/10「シャントステップアップセミナー」開催!

【透析液】なぜETと生菌 両者の測定が必要?

スポンサーリンク
水処理装置・透析液
この記事は約5分で読めます。
スポンサーリンク

はじめに

透析液を作成するにあたって、ET(エンドトキシン)と生菌数を基準値以下にすることが必須です。

私たち技士は年間スケジュールを作成して、これら2つの測定値を管理しています。

今回はなぜETと生菌の2つの測定が必要なのか説明していきます。

参考:日本透析医会雑誌 Vol. 26 No. 1 2011 36-37

なぜETと生菌 両者の測定が必要?

結論は、ET濃度と生菌数との間には相関性がなく、ET 濃度が検出感度以下でも生菌が存在する可能性があるからです

透析液汚染の基準としてETと生菌数を測定することが一般的です。

そして両者には異なった役割が与えられています。

しかし医療経済上および手続きの煩雑さ、測定精度などにより、以前は ETのみの測定で評価することが日本では一般的でした。

ETか生菌測定か?日本において生菌検出は積極的に行われていませんでした。

その理由としては以下のようなことが挙げられます。

  • 生菌検出には培養のために時間が必要
  • コンタミネーションによる誤差が大きい(採液時や測定時の汚染のこと)

これらの理由から、ET濃度は臨床現場では安定して測定できるとの考えがありました。

なのでET濃度測定で生菌を代用できるということでした。

しかもダイアライザを通過して汚染源となるのはETです。

生菌それ自体は破壊されなければ問題にならないとされていました。

しかしET濃度と生菌数との間には相関性がないことが分かりました。

これはつまり、「ETが少ないからといって、生菌も少ないわけではない」ということです。

ET濃度が検出感度以下でも生菌が存在する可能性があります。

また生菌が存在するところに消毒剤や熱湯を流して死滅させると、急速にET濃度が上昇する危険があります。

さらにEvansらの実験※1では、菌種によりET産生量や刺激性が異なっていると報告されています。

このような観点により、現在では両者の測定が必須と考えられています。

両検査の特徴を以下に示します。

エンドトキシン(ET)
生菌
  • 透析膜を通過して生体に直接影響を与える
  • ETは短時間で検出できる
  • 測定試料が0.05 mLであり、汚染の一部しか検出できない
  • ETの発生源(汚染原)である
  • 測定試料はいくらでも増量できる
  • 結果は数日かかる
  • バイオフィルム検出が可能

ETは短時間で測定でき、汚染を直ちに検出することができます。

しかし測定試料は0.05 mLであり、常に流動している透析液の一部しか検査していないことになります。

つまりETは警報としての役割を担っています。

一方、生菌検出には数日間かかります。

しかし、試料は採取量を増加させれば理論上いくらでも増やすことができます(メンブレンフィルタ法の場合)。

またバイオフィルムの確認も可能です。

バイオフィルムってなに?

バイオフィルムとは、微生物が共同体として存在する構造体のことです。つまり細菌が高密度に集合し、構成されます。物体には必ず表面があり、表面があれば必ず微生物が付着します。付着した微生物は単独で存在するのではなく、他の微生物と共同体を形成するようになります。この微生物共同体がバイオフィルムと呼ばれ、水と接する物体表面で形成されます。

ネバネバして白い気持ち悪いヤツ

このように、生菌測定によって汚染程度を確実に評価できます。

そのため両者を測定することが求められますが、それぞれの役割を認識することが重要です。

各施設の汚染度を考慮に入れて、個々の測定頻度を決定する必要があります。

※1 Evans RC, Holmes CJ : In vitro study of the transfer of cytokine-inducing substances across selected high-flux hemodialysis membranes. Blood Purif, 9; 92-101, 1991

ET(エンドトキシン)の基礎知識

エンドトキシン(ET)とは、グラム陰性菌(細菌)の死骸から出る毒素のことす。

透析液の清浄化において一番重要視されます。

もし基準値以上のETが血管内に入ると、以下のようなことが起こります。

  • ショック
  • 発熱
  • 血圧低下
  • 血液凝固

透析液を生成する過程では、ETが混入しています。

グラム陰性菌は、まったく栄養養のない蒸留水でも繁殖できる細菌のため、川の水や水道水には当然存在しています。

水道水が塩素消毒により細菌を死滅させていても、ETはグラム陰性菌の死骸なので水道水中に残っています。

私たちは普段水道水を飲んでおり、その中にETは含まれます。

それなのに体に問題がないのは、腸管がETを血液の中に吸収させないからです。

しかし、透析治療の場合はダイアライザーを通過して血液中に入ります。

すると、上記でも示したようにショック・発熱・血圧低下・血液凝固などの急性反応が出ます。

コンソールにET補足フィルター(ETRF)を装着しているので大量のETが流れ込むリスクはほぼありません。

しかし、低濃度のETが持続的に流入した場合生体反応が起こります。

よって、ETは基準値内で限りなく低く抑えることが重要です。

生菌の基礎知識

生菌は一般細菌・従属栄養細菌※1の総称です。

【※1 従属栄養細菌ってなに?】
自然の水環境は栄養源が非常に乏しいので、水中を生息場所としている細菌類は、その環境に適応して微量の有機物を利用できる能力があります(=体内に取り入れる的な意味合いです)。

有機物を低濃度に含む培地を用いて低温(25℃)で長時間(5日間以上)培養したときに、培地上に集落を形成する菌全てを従属栄養細菌と言います。

ETは低値であっても、生菌が多数存在していることがわかりました。

ET測定キットで生菌を全て測定するのが不十分で、ET値のみでは十分な清浄度を担保することができません。

なのでETと生菌の同時検査が必要です。

透析用水には一般細菌に比べて従属栄養細菌が多く存在するため、透析液管理において検査が非常に重要となります。

【関連記事はコチラ】

コメント

タイトルとURLをコピーしました