はじめに
透析液はA剤とB剤とRO水を混ぜ合わせて作成しています。
このRO水を作るためには水処理装置という、様々なフィルターから構成される装置を通らなければなりません。
今回はこの水処理装置の構成部品や特徴を解説していきます。
水処理装置の構成

基本は上図のような構成です。(施設によっては変わってくる)
以下のような流れになります。
原水(水道水)→プレフィルタ(一次)→軟水化装置→活性炭濾過フィルタ→プレフィルタ(二次)→逆浸透(RO)装置→RO水タンク→UFフィルタ
施設によっては二次プレフィルタが無かったり、RUシステムを導入していたりします。
では各構成部品について説明していきます。
プレフィルタ(一次・二次)

プレフィルタの役割は、原水中の鉄さびや砂などの粗いゴミを除去することです。
またRO膜を傷つけないように保護するといった目的もあります。
膜のサイズは1次フィルタは50μm。
2次フィルタは5~10μmです。
要は大きいものを1次でとって、残りの細かいものを2次でとるっていう感じです。
- 交換頻度:だいたい3~4ヶ月に1度
- 一次フィルタ:軟水化装置の前
- 二次フィルタ・RO装置の前
交換頻度はその施設の供給水量にもよりますね(どのフィルタもそう)
施設によっては二次フィルタが無いところもあります。
軟水化装置

軟水化装置は原水中の※硬度成分をNa+と交換することによって除去しています。
これによってRO膜の劣化防止になります。
硬度成分が多いと沈殿ができてしまいます。
※ 硬度成分:主に二価以上の陽イオン(Ca2+,Mg2+,Al3+)などです

原理は交換による除去です。
イオン交換樹脂のNa+と原水中の陽イオンが入れ替わる(交換される)ことで除去されています。(上図)
吸着除去されているわけではありません。
水処理装置には塩タンクが欠かせません。
塩タンクとは、Na樹脂を再生させるためにあります。
Naが樹脂から消費されると、イオン交換能力が減衰します。
なので定期的にNaClの補充をします。
並塩(塩のこと)を補充することで、樹脂がまた再生されます。
並塩の補充は週に3回の施設や、毎日の施設があります。
軟水化の樹脂の再生もタイマー設定があり、施設によって再生が入る曜日も違ってきます。
多くの施設では月・水・金に再生タイマーを設定している所が多いのではないでしょうか。
メーカーさん曰く、再生は週に1回でも大丈夫みたいですが。
硬度成分を除去できなくなると、RO膜の劣化の原因になります。
軟水化装置はぶっちゃけ無くてもRO水は作れます。
しかしそれだとRO膜の劣化が早くなり交換頻度が早くなります。
またRO膜はかなり高額(1本100万円)なので、軟水化装置は絶対に付けるべきですよね。
きちんと軟水になっているかどうかを、硬度指示薬を用いて検査します。

- 軟水の場合:青色(判定OK)
- 硬水の場合:赤桃色(判定NG)
この硬度指示薬の検査頻度も施設によって異なってきます。
基本は毎日検査が望ましいです。
活性炭濾過装置

主に塩素を除去し、RO膜の劣化を防止するための装置です。
- 原理:吸着(濾過と書いているが濾過ではない)
- 除去物質:残留塩素・クロラミン・有機物
- 交換頻度:だいたい4ヶ月に1回

塩素を除去するため、活性炭濾過装置以降のラインで細菌繁殖に注意です。(上図)
塩素は強い消毒作用があります。
私たちが普段飲む水道水は、塩素の消毒作用があるから飲めています。
商品名によっては活性炭フィルターを「ジュラコールフィルター」とかっても呼びますね。
逆浸透(RO)装置

RO装置は電解質や有機物、ET、バクテリアなどをほぼ完全に除去します。
逆浸透法(RO法:Reverse Osmosis)という原理を用いて物質を除去しています。(下図)
逆浸透法は、最も小さな不純物質を除去することができる膜分離法です。
透析用水の精製には必要不可欠です。
このRO装置が水処理装置では一番重要となる所なので、しっかり覚えてください。

RO法とは溶液と溶媒が半透膜で隔てられている時、溶液側にその浸透圧以上の圧力を加えると、溶液中の溶媒が溶媒側に移動する現象を利用して、物質を分離する方法(上図)
で、逆浸透(RO)というのは浸透の逆なので、濃度の濃い水溶液に圧力をかけてRO膜を介して濾過するという原理です。(下図)
交換頻度は各メーカー推奨は2~3年に1回です。
しかしRO膜が1本100万円と高額なことから、大体の施設が4年に1回の印象です。
回収率
RO装置では回収率が非常に大事です。
回収率とは、「原水の供給量に対して、RO膜を透過した量」のことです。
50~75%が基準で、大体の施設は65%前後?くらいではないでしょうか。
残りの水は排水(濃縮水って呼びます)されます。
回収率(%)=(透過水量/原水供給量)×100
なぜ回収率が50~75%かというと、膜の透過性が低下するからです。
回収率を高く設定しすぎると、1次側の溶存成分が膜表面で濃縮し、細菌やシリカなどの物質が析出されます。
これにより膜の透過性が低下してしまいます。
なので回収率は50~75%となっています。
RU膜
RU膜とは、RUシステムに搭載されている膜です。
RO膜もRU膜も膜の種類は一緒ですが、用途が違うため呼び方が違うだけです。
RU膜は「排水された原水をもう一度再利用するために設置された膜」です。
つまり、RO膜から排水された原水(濃縮水)をRU膜に通し、再利用することで大幅な水道代の削減になるので、設置されています。
約30%くらい節水できます。
紫外線殺菌灯
RO膜を通過した原水はROタンクへと運ばれます。
ROタンクの中には「紫外線殺菌灯」があります。
紫外線殺菌灯は菌の繁殖を防止するために設置します。
7000~8000時間で殺菌効果が低下するので、定期的に交換します。(結構すぐきます)
原理は、菌の核酸(DNA)が260nm(ナノメートル)付近の紫外線を最も吸収する特徴を利用して殺菌する方法です。
紫外線の中で最も殺菌作用の強い253.7nmの波長を人工的に作っています。
エアーフィルター
エアーフィルターは、ROタンク内の気体を除菌するためのフィルターです。
液面が変動する、クリーンな密閉容器に出入りする気体に、優れた性能を発揮します。
凝縮水による差圧の増大や菌の通過が起きません。
交換頻度は1年に1回です。
UFフィルタ
RO膜ではET(エンドトキシン)を100%阻止できないので、RO装置の後ろにUFフィルタ(エンドトキシン補足フィルタ)を設置します。
RO処理の水の清浄度がUPします。
これらの工程を経て供給装置(セントラル)へ送られます。
各フィルタ金額一覧
メーカーによって違いますが大体はこんな感じです。
- プレフィルタ:4,000円(1本)
- 活性炭フィルタ:30,000円(1セット)
- RO膜:100万円(1本)
- 紫外線殺菌灯:35,000円
- エアーフィルター:35,000円
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