はじめに
無酢酸透析剤のカーボスターには様々な効果があると言われています。
酢酸には血管拡張作用があったり、炎症性サイトカインを誘導したりします。
カーボスターはこれらが無いので、血圧の安定化や炎症を最低限にしたりします。
また、重炭酸濃度が35mEq/Lと他の透析剤よりも高いことから、代謝性アシドーシスの改善にも関与すると言われています。
参考:腎内科クリニック世田谷HP参考
https://www.jinnaika.com/dialysis/blood-purification-therapy
カーボスターってなに?
カーボスターとは酢酸が入っていない無酢酸透析剤です。
- 酢酸の代わりにクエン酸が2mEq/L含有
- 2007年に販売
- 酢酸不耐症の患者に効果がある
- 酢酸を用いないことで生体適合性を向上
いまでは酢酸不耐症ではない患者にも適応されることが多くあります。
酢酸不耐症の症状は以下の通りです。
- 血圧低下
- 頭痛、嘔気
- 発熱、倦怠感
これらの症状を改善します。
カーボスターに期待される6つの効果
- 透析中や透析後の血圧低下の改善(透析時循環動態の安定化)
- CRP値の低下(炎症反応の改善)
- 透析後倦怠感の改善や消失
- 食欲の亢進に伴う栄養状態の改善(ドライウェイト増加)
- 代謝性アシドーシスの改善
- 貧血の改善(ESA製剤使用量の減少)
これらの効果があったと報告されているので、説明します。
1.透析中や透析後の血圧低下の改善(透析時循環動態の安定化)
酢酸そのものの影響として体内に入ると、血管拡張作用や心機能抑制作用があります。
血圧=心拍出量 × 末梢血管抵抗
となるので、つまり…
- 血管拡張 → 末梢血管抵抗下がる → 血圧下がる
- 心機能抑制 → 心拍出量下がる → 血圧下がる
カーボスターは酢酸が入っていないので、これらの症状を抑えて循環動態が安定します。
2.CRP値の低下(炎症反応の改善)
酢酸は炎症性サイトカインを誘導します。
炎症物質は血管の透過性を亢進してしまいます。
すると循環血液量が減少して、血圧低下につながります。
カーボスターは酢酸が入っていないのでCRPの低下につながります。
3.透析後倦怠感の改善や消失
アシドーシス改善効果により、透析後倦怠感の改善が報告されています。
カーボスターは重炭酸濃度が35mEq/Lと高値です。
なので代謝性アシドーシスの改善に特に優れています。
透析患者は基本的に代謝性アシドーシスです。
4.食欲の亢進に伴う栄養状態の改善(ドライウェイト増加)
アシドーシス改善効果により、食欲が亢進し、最終的にはドライウェイトの増加につながります。
酢酸には蛋白異化亢進作用があると言われています。
カーボスターは無酢酸なので異化亢進を抑制する働きがる。
これも栄養状態の改善につながります。
透析患者はBMI24~26が最も長生きと報告されています。
(制限内ではあるが)食事量を増やし、体重を増やしていくことが理想です。
ただこれに関しては、脂肪を増やすのではなく、なるべく筋肉を増やした方が良いです。
栄養状態改善 → 血圧低下予防 → 倦怠感消失 → 運動 → 栄養状態改善
というように好循環が生まれます。
血圧低下予防によって、透析後の離床時間も早くなります。
運動によって筋肉量も増え%CGRも高値になってきます。
5.代謝性アシドーシスの改善
アシドーシス改善によって食欲増進、疲労感の軽減につながります。
※K/DOQIガイドラインでは透析前HCO3-濃度は22mEq/L以上にすべきと記載があります
ただこれは中1日の水曜か木曜データなので注意が必要です。
※K/DOQI(National Kidnay Foundation-Kidney Disease Outcomes Quality Initiative:米国腎疾患治療のガイドライン)
定期的にHCO3-を測定することが望ましいです。
アシドーシスの改善が不十分なら以下のように対処します。
- 透析量の確保(QB増加や透析時間の延長など)
- P吸着薬の見直し(塩酸セベラマーはアシドーシスを助長する)
6.貧血の改善(ESA製剤使用量の減少)
酢酸は炎症性サイトカインを誘導することで貧血につながります。(上図)
炎症が起こると、肝臓でヘプシジンが合成されます。
このヘプシジンが鉄の利用を障害して、貧血になります。
カーボスターは酢酸が入っていないことで貧血の改善につながります。
その他の効果
- BNP,hANP値の低下
- 骨代謝の改善
- %CGRの上昇
- 痒みの減少
これらの効果があると言われています。
ただもちろんですが、個人差はかなりあります。
また「カーボスターにしたけどいまいち効果が得られなかった」というような声もあります。
ぜひ参考までに…
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