はじめに
無酢酸透析剤のカーボスターには様々な効果があると言われています。
その反面注意点もあります。
それにはクエン酸が関与しています。
また、重炭酸濃度が35mEq/Lと他の透析剤よりも高いことから、オーバーアルカローシスになるのではないかという懸念点もあります。
今回はカーボスターを導入、使用する際に注意点を3つ説明します。
参考:腎内科クリニック世田谷HP参考
https://www.jinnaika.com/dialysis/blood-purification-therapy
カーボスターってなに?
カーボスターとは酢酸が入っていない無酢酸透析剤です。
- 酢酸の代わりにクエン酸が2mEq/L含有
- 2007年に販売
- 酢酸不耐症の患者に効果がある
- 酢酸を用いないことで生体適合性を向上
いまでは酢酸不耐症ではない患者にも適応されることが多くあります。
酢酸不耐症の症状は以下の通りです。
- 血圧低下
- 頭痛、嘔気
- 発熱、倦怠感
これらの症状を改善します。
カーボスターの注意点3つ
- Caの調整に注意
- 抗凝固作用
- オーバーアルカローシス
この3つについて1つずつ解説していきます。
1.Caの調整に注意

カーボスターのCa値はクエン酸の影響によって、実際の表示値よりも小さくなると言われています。
カーボスターのCa値は3.0mEq/Lです。(上図)
しかし、実際は2.8あたりのようです。
(この値に関しては、自施設で実測値を調べてみてください)
なので他の透析剤からカーボスターに切り替えた場合は、Ca値の変動に注意です。
例を挙げると…
Ca値2.5の透析剤を使用していた
↓
カーボスターに変更
↓
Ca値は高くなる
Ca値3.0の透析剤を使用していた
↓
カーボスターに変更
↓
Ca値は低くなる
なので透析剤を変更した場合はCa値の評価を忘れないことが重要です。
Ca値が高いまま、低いまま続いてしまうと下記のようになります。
- Caが高い → 異所性石灰化の亢進
- Caが低い → 二次性副甲状腺機能亢進症、下肢つり
となってしまいますので、注意が必要です。

なぜCa値は実際の表示よりも低くなってしまうの?
これはクエンによるキレート作用によってCa値が低くなります。

キレート作用というのは、めっちゃ簡単に言うと、クエン酸がCaを包み込むことです。(上図)
これによって、Ca値は低下します。
難しく言うと下記のようになります。
複数の配位座を持つ配位子(多座配位子)による金属イオンへの結合(配位)をいう。
このようにしてできている錯体をキレート錯体と呼ぶ。
キレート錯体は配位子が複数の配位座を持っているために、配位している物質から分離しにくい。
これをキレート効果という。(Wikipedia引用)
いや1文目からもう意味わからん…
気を取り直します。
キレート作用はマグネシウム(Mg)にも作用します。
透析患者はMgが蓄積してしまいます。
なので便秘の際に酸化Mgの処方は避けられていました。
酸化Mg:固い便を柔らかくする下剤
クエン酸のキレート作用によってMgも若干低くなります。
なので便秘薬である酸化Mgの服用も可能に(少量ではあるが)なります。
ただ便秘の改善は運動が有効なので、根本解決を目指しましょう。
2.抗凝固作用
クエン酸には抗凝固作用があると言われています。
なので、カーボスターの使用で止血不良になる場合も報告されています。
その場合は抗凝固剤を減量して調整します。
でもこれは裏を返せば、抗凝固剤の減量ができるということ。
また、クエン酸の抗凝固作用によって膜透過性を保持することができるんじゃないか?とも考えられています。
3.オーバーアルカローシス

カーボスターは重炭酸濃度(HCO3-)が35mEq/Lと高い透析剤です。
重炭酸を補正することで代謝性アシドーシスの改善になります。
しかし、アシドーシスが改善しすぎることで、オーバーアルカローシスになる可能性があると言われています。
アルカローシスが続くと、※1透析中の下肢つりや、※2異所性石灰化を助長してしまいます。
カーボスターに関しては長時間透析には向いていない、重炭酸濃度が高すぎてアルカローシスになるとの声もあります。
しかし以下のような報告もありますので是非参考にしてください。
長時間透析や高効率透析を行ってもオーバーアルカローシスにはならなかった(重炭酸濃度の測定)」という報告もあります
※1 クエン酸含有無酢酸透析液を用いたO-HDF,I-HDF,長時間透析
高い透析前のpH(>7.40)が全死亡および心血管死亡と関連があり、重炭酸濃度は関連がない
※2 JRDRハイライト(2)長期血液透析患者における透析前後のpHおよび重炭酸濃度と全死亡および心血管死亡
なので患者さんの状態をこまめにチェックすることが大事です。
※1 透析中の下肢つり
アルカローシスになるとCaイオンとAlbの結合が高まり、イオン化Ca濃度が減少
↓
筋小胞体からCaイオンが放出される
↓
筋攣縮が起きる(下肢つり)
【透析中の下肢つりはコチラの参考にしてください】
※2 異所性石灰化
アルカローシスになるとアルブミンはH +を放出して、その代わりにイオン化Caと結合する
↓
低Ca血症
↓
PTH分泌
↓
異所性石灰化
【異所性石灰化はコチラの参考にしてください】
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