はじめに
透析では配管洗浄が必要となります。
この「配管」というの、はRO水が生成されてセントラルへ運ばれるまでの配管、A溶解・B溶解や、そこからコンソールに運ばれ、コンソール内の配管まですべてのことを指します。
透析治療においてこの配管洗浄は非常に重要なところです。
ではなぜ配管の洗浄が必須なのか解説していきます。
透析配管洗浄はシリーズで解説しています。
#1から順にみていくことで、もっと理解が深まりますよ!
配管洗浄はなぜ必要
透析液を清浄化させ、安全な治療を施行するためです。
菌や有機物で汚染された透析液が体内に入ると、生体反応が起こります。
生体反応は急性反応と慢性反応分かれます。
これらが引き起こされるため、透析液の洗浄は必須です。
透析液清浄化の効果
透析液が一番キレイな超純粋透析液の使用では以下のような効果が得られます。
- CRPの低下(慢性炎症の改善) → 透析液が汚いと炎症を惹起する
- β2-MGの低下(合併症予防) → 炎症が起こるとβ2-MGの値が高くなる
- 手根管症候群発生の予防 → β2-MGの産生を抑制
- 貧血の改善 → 炎症を抑制してHbを改善
- 低たんぱく血症や栄養状態の改善 → 炎症が起こるとアルブミンの合成が低下する
- かゆみやイライラの軽減 → 炎症は痒みを惹起する
- 肌が白くなる → メラニン色素生成の抑制
とにかく、きれいな透析液を使用すると、炎症を最低限まで抑えることができます。
そして炎症からくる副作用を抑制することができます。
MIA症候群と透析液の関係
MIA症候群とは慢性炎症状態では栄養状態を悪化させ、動脈硬化を助長するといった考え方、概念
MIA症候群は透析液清浄化は密接な関係があります。
透析液が汚染されていると慢性炎症を惹起するのでMIA症候群を引き起こしてしまいます。
MIA症候群を引き起こさないためにも、きれいな透析液で治療することが大事です。
MIA症候群とは、「栄養障害」「慢性炎症」「動脈硬化」の英語の頭文字をとってMIAと名付けられています。
- 栄養障害:Malnutrition
- 慢性炎症:Inflammation
- 動脈硬化:Atheroslerosis
【MIA症候群はコチラの記事】
超純粋透析液とは?
超純粋透析液とは、簡単に言うとめちゃめちゃきれいな透析液です。
2016年版 透析液水質基準のガイドラインで定められた、一番キレイな透析液の名称を超純粋透析液と言います。
セントラルや、オンライン用コンソールでは、この超純粋透析液の使用が必須です。
そして超純粋透析液を使用するには、ET:0.001EU/ml未満、生菌:0.1CFU/ml未満の基準値を守らないといけません。
ET(EU/ml未満) | 生菌(CFU/ml未満) | |
透析用水 | 0.050未満 | 100未満 |
標準透析液 | 0.050未満 | 100未満 |
超純粋透析液 | 0.001未満 | 0.1未満 |
【透析液水質基準はコチラの記事】
ET(エンドトキシン)
ETはグラム陰性菌(細菌)の死骸から出る毒素のことで、透析液清浄化において一番重要視されます。
ET血管内に入ると冒頭でも解説したように、発熱などの生体反応が出ます。
グラム陰性菌は全く栄養素のない蒸留水でも繁殖できる細菌です。
なので、水道水や川の水にも当然存在しています。
ちなみに水道水を飲んだ時もETは混入しています。
飲んで、胃に入るのはOKですが、血管内に入ると生体反応が起こってしまいます。
水道水を塩素消毒 → 細菌は死滅 → しかしETは残る(グラム陰性菌の死骸だから)
といった感じです。
【ETと生菌の記事はコチラ】
生菌
生菌とは一般細菌・従属栄養細菌の総称。
▶ 従属栄養細菌ってなに?
従属栄養細菌とは、有機物を低濃度に含む培地を用いて低温(25℃)で長時間(5日間以上)培養した時に、培地上に集落を形成する菌全てを従属栄養細菌という
自然の水環境は栄養源が非常に乏しい。
しかしこういった菌には、微量の有機物を利用できる能力があります。
なぜ生菌測定が必要?
ETは低値でも、生菌が多数存在していることが明らかになりました。
ET測定キットで生菌全てを測定するのは不十分です。
ET値のみでは十分な清浄度を担保することはできません。
なのでETと生菌の同時検査が必要です。
透析用水には一般細菌に比べて、従属栄養細菌が多く存在するため、透析液管理において重要となります
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