はじめに
透析の配管は、菌や有機物などのさまざまな汚れが発生します。
汚れの除去が不完全で、患者の体内に入ると、重篤な症状が出る可能性もあります。
そうならないように配管洗浄が必要です。
今回は、配管洗浄の中で今一番増えている洗浄剤「過酢酸系洗浄剤」について解説します。
透析配管洗浄はシリーズで解説しています。
#1から順にみていくことで、もっと理解が深まりますよ!
各洗浄剤の発揮特性

まずはじめに、過酢酸系洗浄剤がなにか?を知る前に、透析の配管洗浄でめちゃめちゃ大事な各洗浄剤の発揮特性を知っておく必要があります。(上図を覚えて!)
透析で除去しなければいけない汚れに対して発揮する力3種類と、その汚れを落とす洗浄剤3つを覚えてください
ココがめちゃくちゃ重要なところです!
↓透析の汚れに対して発揮する力3種類
- 除菌力 → 菌を殺す
- 洗浄力 → 有機物の除去
- 炭カル溶解力 → 炭酸Caの除去
↓洗浄剤3つ
- 塩素系(次亜系)洗浄剤 → 除菌力と洗浄力
- 過酢酸系洗浄剤 → 除菌力と炭カル溶解力
- 炭酸Caスケール洗浄剤 → 炭カル溶解力
炭酸Caスケール洗浄剤と上図の炭カル溶解剤は同じ意味です。
過酢酸系洗浄剤ってなに?
過酢酸系洗浄剤は除菌力と炭カル除去力があります。
洗浄力は一応ありますが弱めです。
なので洗浄力の強い次亜系洗浄剤と併用します。
過酢酸系洗浄剤は20~30種類ほどあります。
各社から販売されていますが、その主成分は同じで、今一番増えている洗浄剤です。
過酢酸系洗浄剤の成分は以下の3つから構成されています
- 過酸化水素
- 過酢酸
- 酢酸
濃度やバランスを変更することで、高希釈型や高洗浄力型にすることができます。
また、この3つの成分に付加価値を付けることで、各社特徴付けを行っています。
成分3つの役割もきちんとあります。
- 過酸化水素:有機物の洗浄
- 過酢酸:除菌効果
- 酢酸:炭酸Ca溶解効果
なので、「除菌力」「洗浄力」「炭カル溶解力」全てあるということですね。
メリットとデメリット
↓メリット
- 一般細菌からB型肝炎ウイルスまで幅広い対象に対して高い除菌力を持つ
- 有機物共存下でも除菌力が低下しない
- 炭酸Ca溶解能力を有する
- 洗浄力を有する(バイオフィルム剥離)
- 錆を落とす効果を有する
↓デメリット
- 有機物溶解効果がない(洗浄力はあるけど弱い)
- 強い刺激臭
- 高分子部材(ゴム部材)への影響が大きい
- 過酸化水素のリバウンド減少(水洗性が悪い)
弱い洗浄力を補うために、次亜系の洗浄剤と組み合わせて使用します。
過酢酸の1剤化は可能?
過酢酸は「除菌力」「洗浄力」「炭カル溶解力」全ての要件を満たしています。

じゃあ過酢酸の1剤だけで、洗浄できるんちゃうの!?
結論から言うと、過酢酸の1剤化は無理です。
なぜかというと、過酢酸は有機物除去の洗浄力が弱いからです。
なので、洗浄力の強い次亜系(塩素系)洗浄剤との併用が欠かせません。
消毒分類

過酢酸系洗浄剤は高水準消毒になります。
次亜塩素酸ナトリウムの抗菌スペクトルは高水準消毒に匹敵しますが、有機物の存在下で効果が低下しやすいので中水準消毒に分類されています。
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