水洗性ってなに?
透析配管には主に以下の3種類の洗浄剤が用いられます。
- 塩素系(次亜系)洗浄剤
- 過酢酸系洗浄剤
- 炭酸Caスケール洗浄剤
これら洗浄剤は、人の体内に入ることを想定していません。
水で洗いが流さないと透析は行えませんし、水洗不足で薬剤が体内に入ると重篤な健康被害が出てきます。
今回は何分の水洗で洗い流せられるかなど、各洗浄剤の水洗性について解説していきます。
透析配管洗浄はシリーズで解説しています。
#1から順にみていくことで、もっと理解が深まりますよ!
塩素系(次亜系)洗浄剤
- 水洗時間の目安:60分
- チェック方法:水洗水中の総残留塩素:0.1mg/L未満
これらを目安にしてください。
ただ、ベッド数や配管の長さなどで、水洗時間は施設によって異なります。
なので、60分よりも長くなる可能性があります。
もし水洗不足で体内に入ってしまうと、溶血を起こします。
過酢酸系洗浄剤
過酢酸の構成成分である過酸化水素(H2O2)で残留確認をします。
水洗時間の目安は、薬剤の不検出確認後、さらに10分の水洗を加えた水洗時間です。
もし過酸化水素が体内に入ってしまうと(血中濃度:10~20ppm)以下のようなことが起こる可能性があります。
- メトヘモグロビン値が通常の約6倍に
- ヘマトクリット値の低下
- 輸血回数の増加
チェック方法は、過酸化水素残留試薬を用い、検出感度未満(0.05mg/L未満まで検出できるものが良い)に管理することを推奨します。
ただ、過酸化水素にはリバウンド現象が生じます。
過酸化水素のリバウンド現象と対策
リバウンド現象とは、水洗終了後、検出感度以下を確認してから、一定時間経過後、過酸化水素水が再検出されることです
なぜこのようなことが起こるかというと、過酸化水素は分子が小さいので、シリコンチューブ内に入りこんでしまいます。
過酸化水素は分子が小さいからです。
すると、シリコンチューブから再度RO水に溶け込み、再検出されます。
イメージは下図のような感じです。

このリバウンド現象の対策では3つ方法があります。
- 水洗時間を伸ばす
- 2段階水洗の実施
- 水洗水の加温
①は水洗時間を伸ばすことによって過酸化水素を水洗します。
②は2段階で水洗を実施します。どういうことかというと…
水洗30分 → RO水滞留60分 → 水洗30分
という風に水洗と水洗の間に、RO水を滞留する時間を作ります。
そうすることで、RO水滞留の間にチューブ内部の過酸化水素を染み出させます。
③は水洗水の加温です。
RO水を45℃に加温することで、チューブ内部に入り込んだ過酸化水素が速やかに水中に拡散します。
これら3つを状況に合わせて施行します。
炭酸Caスケール洗浄剤
炭酸Caスケール洗浄剤は、つまり酸系の洗浄剤のことです。
- 水洗時間の目安:30~60分、水洗水のpHがRO水のpHに達するまで水洗する
- チェック方法:水洗水のpHを測定し、RO水と近似であることを確認
洗浄は基本、酸洗 → 水洗 → 次亜 という風に酸洗が流れてから次亜になります。
なので、酸洗と次亜の間に流れる水洗が十分に行われていないと、酸と次亜が混ざってしまいます。
酸と次亜が混ざると、塩素ガスが発生する可能性があります。
すると、患者やスタッフに健康被害がでたり、装置部材の寿命が著しく短くなったりします。
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