毎週月曜更新!次回のブログ更新は9/16(月)内容:なぜ透析中に低血圧が起こる?

#5 透析配管の各洗浄剤まとめ

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配管洗浄
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はじめに

透析配管の洗浄剤は目的や効果に応じて様々な種類があります。

この記事では透析配管に使用される各洗浄剤の特徴をザックリ解説します。

透析配管洗浄はシリーズで解説しています。

#1から順にみていくことで、もっと理解が深まりますよ!

各洗浄剤一覧

各洗浄剤メーカーから販売されている製品名別にすると、100製品を超えます。

【次亜系洗浄剤】
・ 次亜塩素酸ナトリウム
・塩素系除菌洗浄剤(次亜に各種添加剤を加えた製品)
・次亜添加型洗浄剤(次亜の欠点を補うための添加剤)

【過酢酸系洗浄剤】
・過酢酸系除菌洗浄剤(高希釈タイプや付加価値タイプなど)

【熱湯消毒用洗浄剤】
・クエン酸
・ 熱湯消毒用洗浄剤(クエン酸代替品)

【炭酸Caスケール洗浄剤】
・ 酢酸(30%、70%、99%など)
・炭酸Caスケール溶解剤(酢酸代替品)

【除錆剤】
・セントラルから流すタイプ
・部品を浸漬するタイプ
・部品を清拭するタイプ

【カプラ洗浄用】
・ 主に酸系の洗浄剤(炭酸Ca溶解+除菌効果)

【余液ライン用】
・余液ラインの付着物を除去するための専用洗浄剤

この中で重要なのは赤で書いてある3つです。

  1. 次亜系洗浄剤
  2. 過酢酸系洗浄剤
  3. 炭酸Caスケール洗浄剤

この3つが非常に大事です。

今回はすべて紹介しますが、この3つの特徴さえ覚えていればOKです。

各洗浄剤の発揮特性

まずは各洗浄剤がどういった汚れに優れているのかを覚える必要があります。

上図めちゃめちゃ重要なので絶対覚えてください!

透析で除去しなければいけない汚れは除菌」「洗浄(有機物汚れ)」「炭酸Caです。

この汚れを、どの洗浄剤が担っているかが重要です。
これを洗浄剤の発揮特性と言います。

上でも説明したように洗浄剤は主に3つです。
3つの洗浄剤がどの汚れに優れているかというと…

  • 塩素系(次亜系)洗浄剤 → 除菌・洗浄
  • 過酢酸系洗浄剤:除菌・炭カル除去・(洗浄は一応あるけど弱い)
  • 炭酸Caスケール洗浄剤 → 炭酸Ca

なので、次亜には炭カル溶解力がないので、過酢酸か炭酸Caスケール洗浄剤と併用します。

洗浄剤の発揮特性はめちゃくちゃ重要なので知っておきましょう。

次亜系洗浄剤

次亜系洗浄剤は別名「塩素系洗浄剤」とも呼ばれます。

次亜系洗浄剤は以下のように3つに分かれます。

  • 次亜塩素酸ナトリウム
  • 塩素系除菌洗浄剤(次亜に各種添加剤を加えた製品)
  • 次亜添加型洗浄剤(次亜の欠点を補うための添加剤)

では一つずつ簡単にですが説明していきます。

次亜系洗浄剤は除菌と洗浄力はありますが、炭カル除去の効果が無いので、酢酸か、過酢酸と併用します。

【次亜系洗浄剤の詳しい解説はコチラです】

次亜塩素酸ナトリウム

次亜塩素酸ナトリウムは名前の通り次亜塩素酸ナトリウムそのものです。

日常では、プールの消毒や水道水の消毒、衣類の漂白に用いられています。

そして透析では、除菌洗浄に用いられています。

↓メリット

  • 一般細菌からB型肝炎ウイルスまで幅広い対象に対して高い除菌力を持つ
  • 有機物を分解除去する洗浄力を持つ
  • 水道水や食品の消毒に使用されるなど安全性が高い
  • 安価

↓デメリット

  • 金属部材への影響が大きい(錆の発生)
  • 有機物共存化で、除菌効果が低下してしまう
  • 安定性が悪い
  • 炭酸Caスケールの溶解ができず、酸洗浄が必要

錆が発生するので、長時間の接触を避けたり、錆とり機能付きの副剤との組み合わせが欠かせません。

塩素系除菌洗浄剤

次亜塩素酸ナトリウムに各種添加剤を加えたものです。

その添加剤は以下の3つです。

  • pH調整剤
  • キレート剤
  • 腐食防止剤

この3つを加えることで、次亜塩素酸ナトリウムの欠点を補い、付加価値をもたらしています。

塩素系除菌洗浄剤によって、総合的な洗浄効率の向上が可能になりました。

また、日本で一番使われている洗浄剤の種類です。

↓メリット

  • 一般細菌からB型肝炎ウイルスまで幅広い対象に対して高い除菌力を持つ
  • 強力な洗浄力を持ち、バイオフィルムを分解、除去する(次亜よりも強力)
  • 次亜塩素酸Naと比べて、金属腐食性が低い
  • 炭酸Ca生成抑制効果(溶解はできないが)

↓デメリット

  • 酸洗浄が必要
  • 長期的には金属部材への影響の懸念がある

次亜よりも強くて、次亜よりも優しいのが塩素系除菌洗浄剤です。

次亜添加型洗浄剤

現場で次亜と混ぜることによって塩素系除菌洗浄剤を作成します。

手間がかかる分、塩素系除菌洗浄剤と比べて安価といった特徴があります。

薬剤の特徴は上の塩素系除菌洗浄剤と同じです。

過酢酸系洗浄剤

過酢酸系洗浄剤は除菌力炭カル除去力があり、洗浄力は一応ありますが弱めです。
なので洗浄力の強い次亜系洗浄剤と併用します。

過酢酸系洗浄剤は20~30種類ほどあります。

各社から販売されていますが、その主成分は同じで、今一番増えている洗浄剤です。

過酢酸系洗浄剤の成分は以下の3つから構成されています

  • 過酸化水素
  • 過酢酸
  • 酢酸

濃度やバランスを変更することで、高希釈型や高洗浄力型にすることができます。

また、この3つの成分に付加価値を付けることで、各社特徴付けを行っています。

↓メリット

  • 一般細菌からB型肝炎ウイルスまで幅広い対象に対して高い除菌力を持つ
  • 有機物共存下でも除菌力が低下しない
  • 炭酸Ca溶解能力を有する
  • 洗浄力を有する(バイオフィルム剥離)
  • 錆を落とす効果を有する

↓デメリット

  • 有機物溶解効果がない(洗浄力はあるけど弱い)
  • 強い刺激臭
  • 高分子部材(ゴム部材)への影響が大きい
  • 過酸化水素のリバウンド減少(水洗性が悪い)

弱い洗浄力を補うために、次亜系の洗浄剤と組み合わせて使用します。

【過酢酸の詳しい記事はコチラ】

熱湯消毒用洗浄剤

熱湯消毒用洗浄剤は以下の2つに分かれます。

  • クエン酸
  • クエン酸代替品

酸性の洗浄剤なので、有機物洗浄力はアルカリ(次亜系)の洗浄剤には劣ります。

なので、次亜と併用して使用します。

熱湯消毒用洗浄剤は世界一使用されている透析装置洗浄剤です。

クエン酸

↓メリット

  • 熱水と組み合わせることで、有機物、炭酸Ca除去効果を発揮する
  • 低部材腐食性
  • 人体に対し高い安全性

↓デメリット

  • 高濃度で使用しなければいけない(コストが高くなる)
  • 有機物洗浄力が弱い
  • 補充の手間

クエン酸代替品

↓メリット

  • クエン酸に勝る有機物洗浄力、除菌力を発揮
  • クエン酸より低濃度で使用できる
  • クエン酸より低部材腐食性
  • クエン酸に比べ、環境負荷が少ない

↓デメリット

  • 酸性の洗浄剤なので、有機物洗浄力はアルカリ(次亜系)の洗浄剤には劣る

炭酸Caスケール洗浄剤

炭酸Caスケール洗浄剤は、炭酸Caを溶解、除去する洗浄剤です。

以下の2つに分かれます。

  • 酢酸(30%、70%、99%など)
  • 炭酸Caスケール溶解剤(酢酸代替品)

炭カル除去力はあるものの、除菌力と洗浄力が無いので、次亜系洗浄剤と併用します。

酢酸(30%、70%、99%など)

酢酸はザックリいうと、炭カルが落ちて臭いという特徴があります。

↓メリット

  • 優れた炭酸カルシウム溶解力がある

↓デメリット

  • 刺激臭がある
  • 高分子部材(ゴム部材)への影響が大きい
  • 高環境負荷(甲殻類生物に悪影響)
  • 有機物を凝固させる

炭酸Caスケール溶解剤(酢酸代替品)

酢酸代替品は、酢酸の欠点を補ったものです。

高希釈でも使用することができるので、コスト面が良好で経済的です。

↓メリット

  • 刺激臭なしで優れた炭酸カルシウム溶解力を発揮
  • 酢酸と比べて高分子部材への影響が少ない
  • 酢酸と比べて環境負荷が低い
  • 酢酸と比べて高希釈で使用できるので安価

↓デメリット

  • 酢酸臭(刺激臭)がしない
考える人
考える人

酢酸では刺激臭があることがデメリットなのに、酢酸代替品では刺激臭がないことがデメリットになってる…
刺激臭がしないことは、メリットなんじゃないのか?

酢酸を使い続けていた施設では臭いが無くなることで、入れ間違いが起きないか不安みたいです。

そのため酢酸代替品に踏み切れないのですね。

つまり、刺激臭は一長一短。メリットにもデメリットにもなるということですね。

【酢酸はコチラの記事で解説しています】

除錆剤

除錆剤じょせいざいは名前の通り、さびを取り除くものです。

除錆剤は以下の2つの種類に分かれます。

  • セントラルから流すタイプ
  • 部材を取り外して、浸漬や清拭をするタイプ

セントラルから流すタイプでは、セントラルで薄めたものを全てのコンソールに一斉に流す方法です。

これによって、一気に除錆が可能になります。

しかし、数時間の封入時間や水洗時間が必要となるので、大掛かりな作業になります。

なので、日曜日の透析が稼働していない日の作業になります。

部材を取り外して、浸漬や清拭をするタイプでは、ポンプなどの金属部材を取り外して浸漬や清拭を行い、除錆したい部分にだけ使用します。

除錆剤には、ステンレス専用タイプや無臭タイプなど様々な製品が販売されています。

施設の状況にあった製品選択をすることです。

半年に1回や、OH時に使用します。

カプラ洗浄用洗浄剤

これはカプラを洗浄する洗浄剤です。

主に酸系の洗浄剤で、除菌効果 + 炭酸Ca溶解の効果を持ちます

カプラの内側は通常の洗浄できるが、外側は未洗浄の状態が多いです。

人が触る外側の部分の除菌と、透析液が付着して炭カルが固着する部分の除去をします。

なので、除菌と炭カルの溶解をするということですね。

装置から取り外したカプラを、洗浄剤に漬け込みます。

余液ライン洗浄剤

プライミング液などの余液(排液)を排水するラインを洗浄する洗浄剤です。

これによって、菌の繁殖を抑えたり、炭カルの付着を防ぎます。

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